人民元札を数える銀行員(2018年5月11日撮影)。(c)CNS/張雲〔AFPBB News〕
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年7月2日付)
中国の通貨・人民元の対ドル相場が6月、月間ベースで史上最大の下げに見舞われ、次第にエスカレートしていく米中貿易戦争で、中国政府が通貨切り下げを武器として使う用意があるとの懸念を引き起こしている。
2005年から2014年半ばまで、中国は人民元相場を安値誘導するために組織的に為替市場に介入し、中国は自国輸出業者のために不当な競争優位性を獲得しようとしているとの批判を招いた。
その後、中国が資本逃避を防ぐために人民元を下支えする政策に転換していたにもかかわらず、ドナルド・トランプ大統領が2016年の選挙戦でこうした批判を蒸し返した。
だが、人民元は6月に対ドルで3.3%下落。中国が1994年に外国為替市場を立ち上げて以来、1カ月間としては最大の下げとなった。
アナリストらは、人民元の値動きは今のところ、通貨戦争の行為というよりは市場原理のように見えると話している。それでも、元安が続けば、貿易をめぐる緊張がさらに高まる恐れがあると警告している。
「米中両国の貿易・経済摩擦の拡大という流れにおいては、為替相場の動きは通常よりも大きな象徴的意義を持つようになる」
米コーネル大学の経済学部教授で、かつて国際通貨基金(IMF)の中国部門を率いたエスワー・プラサド氏はこう話す。
「対ドルの人民元安は、いわばロールシャッハテストの役目を果たす。市場が決める為替レートに移行するサインとして見ることもできるし、貿易戦争の武器庫にそろえたもう一つの兵器について米政府にメッセージを送る中国政府の試みとして見ることもできるからだ」