中国人民銀行が口先介入、人民元は貿易戦争の武器にしないと主張

更新日時
  • 易総裁と潘副総裁、「元の安定維持する」と相次ぎ表明
  • 人民銀行のシグナル無視すれば、当局は強力な措置も-コメルツ銀

中国人民銀行(中央銀行)の幹部が3日、人民元の安定を維持し、米国との通商問題で人民元を武器として活用することはないと相次いで表明した。これらの発言を受け、元は最近の下げの一部を取り戻した。

中国人民銀行の易綱総裁

Photographer: Qilai Shen/Bloomberg

  人民銀行の易綱総裁は為替への姿勢について、「人民元相場を合理的かつ均衡の取れた水準で基本的に安定を維持する」と発言。同副総裁で国家外為管理局(SAFE)局長を兼任する潘功勝氏もこの日、人民元を合理的なレンジで安定させることに自信を持っていると述べた。6月半ばに元の下落が始まって以来、中国の金融当局者が為替について見解を明らかにしたのはこれが初めて。

  さらに3日遅く、人民銀行金融研究所の孫国峰所長がブルームバーグニュースの質問に対して書面で回答し、最近の元安は中国が意図的に元を切り下げようとした結果ではないと主張した。

  「最近の元相場は幾分の弱さを示している。これは国外の不確実性が高まる中で市場の期待が変化したことが全ての原因で、人民銀の意図的なガイダンスのせいではない」と論じ、「中国は多国間協調主義とグローバリゼーション、自由貿易、規則に基づく国際的なガイドラインを支持しており、貿易問題に対処する手段として元相場を利用することはない」と言明した。

  易綱総裁は人民銀のウェブサイトに掲載された中国紙、中国証券報の質問への回答で、「最近の外国為替市場は一定のボラティリティーを見せており、人民銀はこれを注視している」と語った。その上で、この変動は「主にドル上昇や国外の不確実性などの要因が引き起こしており、景気循環が増幅している部分もあった」と続けた。

  これらの発言についてコメルツ銀行のエコノミスト、周浩氏(在シンガポール)は「最近の元安は急すぎると人民銀行が口先の警告と介入を行っている」と指摘。「トレーダーが最近の元安で生じた利益を確定させることから、短期的に元は上昇するかもしれない。だが市場が人民銀を無視し、急速な元安が続くようであれば、人民銀はより強力なシグナルを送るため大規模な介入を実施する可能性がある」と述べた。

  市場で強力な行動は見られていないが、3日午前には小規模な介入と思われる一定の動きがあった。匿名を希望したトレーダー4人によると、人民元が1ドル=6.7元を割り込んだ後に一部の中国大手銀行がドルを売り、上海時間3日午後4時52分時点では6.6500ドルに持ち直した。

原題:China Verbally Props Up the Yuan as Trade and Growth Fears Spike(抜粋)

(3-4段落目に人民銀行がブルームバーグに回答したコメントを挿入します.)
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