(英エコノミスト誌 2018年6月30日号)
数百万人に上るシリア難民を安全に帰還させることができなければ、今後数十年にわたって中東地域の不安定要因になりかねない。
極悪非道の独裁者が勝利を収めた。バシャル・アサド大統領は空爆、有毒ガスの散布、兵糧攻めといった手法で敵を主要都市から追い出した。
アサドは退陣すべきだと述べながらそれを実現させる策を講じなかった米国のバラク・オバマ前大統領と英国のデビッド・キャメロン前首相を笑いものにした。
ドナルド・トランプ現大統領がアサド氏の基地に向けて発射したミサイルも一蹴している。
50万人が命を落とした。600万人もの人々が住み処を追われてシリア国内の他の地域に移り、それと同程度の数の人々がシリア国外に逃げ出した。
難民のほとんどは、スンニ派のアラブ人だ。内戦前にはシリアの人口2300万人の大部分を占めていた人々だ。
アサド氏がシリアの北部や南西部で、スンニ派の反政府勢力がほぼ支配する地域の奪還に動いていることから、国外に押し出される人はまだ出てくるかもしれない。
その一方、アサド氏の国は、宗派がますます限られた国になりつつある。