毎回恒例ですがニュースが出ると場外が燃え上がりますね。
JASRACが151事業者、166店舗に対して民事調停を申し立てたそうです。
いずれの事業者も、その営業においてJASRACが管理する音楽著作物をBGMとして利用しており、利用許諾契約を締結するよう繰り返し催告してきましたが、手続きに応じないため、民事調停の申し立てを行いました。
JASRACでは、ウェブサイトや各種メディアを通じて、広くBGMの著作権手続きの必要性を周知してまいりました。今後も利用者の方々へのご案内を継続していくほか、業界団体やBGM音源提供事業者との協力関係を構築していくなど、BGMの適法利用促進のための取り組みを推進してまいります。
プレスリリースにあるように手続きをするよう催告を行ったが応じて貰えなかったという事のようですね。
こういう問題は基本的に手続きをしない側が完全に不利です。
こうなる前にきちんとした対応をすべきなのですが、どうしても理解が進まないのが現状のようですね。
もしかしたら店舗の経営をしている方や、この件を調べたい方がいるかもしれないので分かりやすく書いてみたいと思います。
分配が適正ではない!!と憤る方はこちらを先に、
無差別になんでも取り立てている!!と憤る方はこちらを先にご覧ください。
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音楽はなんのために使われるのか?
音楽は様々なシーンに使用されます。
例えば広告宣伝にBGMはつきものです。
TVのCMなどにはタイアップ曲があり、製品のイメージやテーマを引き立たせるために使用されます。
あの音楽が流れるとあの製品を思い出す、なんてことは沢山あると思いますがそれこそがまさに音楽を使用するメリットです。
特定のシーンや製品を想起させるだけでなく、空間の演出にも音楽は使用されます。
ドラッグストアや家電量販店のテーマ曲もその一つです。
ビックカメラ、ヨドバシカメラのテーマ曲を歌える方は多いはずです。
空間でふわっと流れているだけのようであっても、その製品や場所のイメージを想起させることができる音楽は立派な販促の武器になるのです。
飲食店や美容室で使用する音楽とは?
飲食店などは流行の音楽が、美容室などはリラックスできる音楽などが流れる事が多いです。
インストアレンジバージョンの楽曲であったり、和風アレンジであったり色々な形で使用されています。
経営側の印象ではテレビでもCMでも音楽はいつでも流れている物という印象があるため、お店では音楽を流すものというイメージがあるのかもしれません。
ですが実際は別にお店で音楽を流す必要は全くありません。
本棚に雑誌を詰め込んで待ち時間に読んでもらうだけという店舗もありますし、テレビやラジオを流しているだけのお店もあります。
それでもわざわざCDなどを持ち込んで音楽を流す理由があるのならその理由を聞かせて頂きたいのですが、例えば次のような理由ではないのでしょうか?
- 来客に快適な空間を提供するため
- 雰囲気に合わせたBGMとして
- 店員のモチベーションを上げるため
いかがでしょうか?
これ以外の止むを得ない理由があるのならむしろ積極的にそれを訴えるべきだと思います。(正当と認められるかは別として)
しかしこれに該当するのであればそれはもう立派な商用利用に他ならないのです。
そして店舗でこういった利用を行うのであれば正規の手続きを取ってくださいというのは著作者にとっては正常な事であり、正式な手続きを取らずに催告を無視した結果調停になったのであればほぼ勝ちの目はないのです。
ならどうすべきなのか?
という問いがあるならそれはあまりにも怠慢というものです。
店舗にせよなんにせよ、運営コストの意識に欠けていますし、他者の請求を蹴るというのは自分が出した請求を蹴られる事を想定しない慢心であると考えます。
楽曲使用料が支払えないような状態では人件費の向上など望むべくもないと思います。
調べればいくらでも方法はあるのですが次善策についても紹介しておきたいと思います。
店舗で音楽を使うにはどうしたらいいのか?
1.買い切りの音源を購入する
店舗BGM用の音楽を集めたCDが販売されています。
AudioStockなどの販売音源を購入することも可能です。
通常これらのCDや販売音源の著作権は制作者に帰属し、JASRAC等に信託されていない買い切りの音楽として利用が可能です。
メリットとしてはその音源を使っている限りにおいては著作権や使用料の心配をする必要がない事。
デメリットとしてはBGM用途なのでボーカル曲が少ない、楽曲CDの場合はそのCDに入っている分のみ、メジャーなアーティストの曲が含まれることはないという事です。
当然市販の音源ですから購入した人が使用することを想定しているので違法にコピーして使用していることが発覚すれば音源の制作(販売)会社から訴えられる事もあります。
2.音楽配信アプリを使用する
Simple BGMなどの商用利用可能な音楽配信アプリを使用してBGMを流します。
こういったアプリはインディーズミュージシャンや個人作家の楽曲などが使用されていて、JASRACに信託されていない楽曲が流れます。
メリットとしては著作権の心配をする必要がなくそれなりの曲数が利用可能な事、コストも決して高くない事。
デメリットとしては通信環境によって再生できないなどの影響を受ける可能性があること、こちらもメジャーアーティストの曲が含まれない点です。
こういった配信サービスは色々ありますが、Simple BGMのように店舗BGMとして利用可と明言していないサービスを利用することは出来ません。
Apple Music、Google Play Music、Spotify等の音楽配信プラットフォームは多数ありますが、ここに挙げた3つは商用利用不可で個人使用のみと明言されています。(他も恐らく規約に明記があると思います)
これらを店舗などで流せば当然使用料徴収の対象(もしくは訴訟)となります。
3.USENを使う
店舗向け放送であるUSENを素直に使うのが最も現実的な解です。
USENでは契約にJASRACの使用料も含まれているため、なんの心配もなく使用することが可能です。
メリットとしてはJASRAC管理曲等メジャーアーティストの曲が含まれる、傾向別のセレクトチャンネルが多彩でお任せが出来る事。
デメリットとしては他の方法よりランニングコストが高い事です。
高いと言っても月額1万に満たない少額であり、出し渋るような運営はそもそも成り立たないのではないかと思います。
漫然と利用するのでなくアクティブに考えるべき
お店で音楽を流す方法は沢山ありますし、むしろ流さないという選択もあります。
それなのになぜ使用料の催告をされる方法を取っているのかと言えば単純に「その音楽を使いたいから」に他ならないのです。
BGMはただ漠然と流れているだけでは効果がないのにコストを掛けたくない・・・と考えるようであれば、それは効果的な活用も環境の改善の意識もないという事ですので素直に音を止めればよいのではないかと私は思います。
折角BGMを流すのであれば季節に合わせた選曲であったり、お店の印象を変えるような利用法を考えて行くべきではないでしょうか?
その昔日本ブレイク工業という解体業者(現在は倒産)がありました。
当時契約社員であった萬Z氏が作曲した社歌が大きな話題となりタモリ倶楽部で取り上げられ、社歌と共に解体業者の名前が日本全国に知れ渡るという出来事がありました。
こういった訴求が可能なのが音楽なのですからただ漫然と音が鳴っていればよいという考えから、コストをかけて活用するものと考え方を変えていくべきではないかと思います。
最初に例として挙げたビックカメラやヨドバシカメラの様に店舗のイメージを歌う曲を作って貰うであったり、折角音楽を流すのであればそれに合わせてレイアウトや内容を見直すという方法もあります。
ジングルやサウンドロゴと言った訴求方法もあるように、店舗や製品を彩るデザインは多様化しています。
そういったものを上手に組み合わせてYoutubeのようなサービスに店舗の紹介動画を公開する事も今なら容易です。
漠然と使う音楽から、効果的に使う音楽へ。
使用料を払って音楽を使うのなら、支払いを渋るのではなくその使い方まで考えて行く事が正しいコスト意識ではないかと思います。
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