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【スポーツ】

羽生、国民栄誉賞表彰式で史上初の記念品辞退

2018年7月3日 紙面から

国民栄誉賞の表彰式を終え、笑顔を見せる羽生

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 平昌五輪でフィギュアスケート男子としては66年ぶりの連覇を飾った羽生結弦(23)=ANA=が2日、東京都内の首相官邸で国民栄誉賞の表彰式に出席。安倍晋三首相から表彰状と盾が贈呈された。ただ、恒例となっている記念品の贈呈はなく、事前に辞退していた。

 自分だけの国民栄誉賞じゃない。スケート界の偉大な先輩や支えてくれた人たち、いわばオールジャパンで受賞できた。それが羽生の考え。記念品を辞退した理由を聞かれると、凜(りん)とした表情で言い切った。

 「自分の中で皆さまとともに取れた賞という気持ちがすごくあったので、僕個人の気持ちとかそういうのはあまり出したくないなと。そういった意味で記念品は辞退させていただきました」

 以前から国民栄誉賞の記念品は注目の的だった。かつて高橋尚子さんに高級腕時計が贈られ、吉田沙保里さんには真珠のネックレス、最近では伊調馨さんに西陣織の帯が贈られた。値段にすればおそらく100万円以上だ。1977年に制定された同賞の規定で「表彰に当たっては、記念品または金一封を添えることができる」とされ、内閣府担当者によると、過去すべての受賞者(故人は遺族)が記念品を手にしてきたという。それが史上初めて辞退したというのだ。もちろん、金一封も辞退していた。

 表彰式にも羽生らしいいでたちで臨んだ。キリッとした紋付き袴(はかま)姿だったが、この袴は江戸時代から仙台藩でつくられる伝統の絹織物「仙台平(せんだいひら)」の人間国宝、甲田綏郎(こうだ・よしお)さんから贈られたという逸品。故郷への思いも強い五輪王者は「自分は袴に詳しくないけど、身につけていて本当に快適」と笑顔。安倍首相からも「似合いますね」と声をかけられていた。

 「このような素晴らしい賞をいただけるということは、普通ではいけないんだなと自分の中でけじめをつけている。私生活を含めて、後ろ指をさされないような生き方をしていきたい。これからも全力で、自分の名に、この国民栄誉賞の名に恥じないようなスケートをしていくことが、まずは大事かなと思う」

 伊藤みどりさんや浅田真央さんら、先輩たちの礎があって今の自分がある。個人としては史上最年少での受賞、冬季競技でも初受賞。歴史を塗り替える23歳は、日本と、スケート界を背負って、再びリンクへ向かう。(兼田康次)

 

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