早朝の日本が8強の夢を見た…一時2点リード、延長戦目前の後半ロスタイム被弾で敗退
◆W杯ロシア大会▽決勝トーナメント1回戦 ベルギー3―2日本(2日・ロストフナドヌー)
歴史的1勝は、ならなかった。FIFAランキング61位の日本は、決勝トーナメント(T)1回戦で同3位のベルギーと対戦。後半3分にMF原口元気(27)=ハノーバー=が右足で先制ゴール。決勝Tで日本人初得点をマークすると、同7分にはMF乾貴士(30)=ベティス=が豪快なミドルで2点目。だが、その後2失点を喫すると、延長突入かと思われた後半ロスタイムにも失点し、2―3の逆転負け。初の8強入りを、目前で逃した。
西野朗監督(63)は口を開いたまま、しばらく動けなかった。目の前には歓喜に沸くベルギー・イレブン。乾が、酒井宏が、人目もはばからずに泣いた。試合終了間際に失点し逆転負け。目前にあったはずのW杯8強の夢は、最後の数分で泡と消えた。指揮官は「W杯の怖いところでしょうか。追いつめましたけど、やっぱり何が足りないんでしょうね。本気のベルギーがそこにありました」とうなだれた。
豪快に散った。だが、FIFAランク3位の優勝候補を、最後まで苦しめた。0―0の後半3分、MF柴崎が、センターサークル内からスルーパス。一気に駆け上がったMF原口が右足を振り抜く。狙い澄ましたシュートがゴール左隅に突き刺さった。ここまで守備に奔走し無得点だった原口が、W杯決勝Tでの日本人初ゴールを決めた。
4分後にはMF乾が右足で豪快ミドルを突き刺した。しかし、壁はやはり高かった。猛攻に耐えきれず同24分に失点すると、5分後にも失点し同点に。延長戦が目前に迫った後半ロスタイムには、カウンターから失点した。
指揮官は批判を恐れず、信念を貫いた。1次リーグ第3戦のポーランド戦(0●1)では1、2戦から先発を6人変更。終了間際、時間稼ぎのボール回しには批判が起きたが、主力を温存。全ては“3度目の正直”でW杯8強入りを果たすためだった。
過去2回の決勝T1回戦は、ともに敗退。2002年日韓大会は当時のトルシエ監督が16強で満足し、前線の組み合わせを変更するなど采配が迷走。10年南アフリカ大会はメンバーが固定されており、選手が疲弊し力尽きた。西野監督は「両大会とも全てを出し尽くした感があり、チームに余力があったかどうか」と分析していた。
第3戦の決断は、先人たちの経験を踏まえたからこそ。「3回目になって精神的な余裕もある。ベルギーはこれから(本当の)W杯が始まるぞと思っている。我々も精神的な面で同じレベルに立ちたい」。心身共にフレッシュな状態で挑んだが、一歩及ばなかった。
ハリルホジッチ前監督の解任を受け、短い準備期間の中、常に冷静で、選手とのコミュニケーションを大切にして16強までチームを導いた。「最高の化学反応を起こしたい」と語った4月12日の就任会見から81日、西野監督のロシアW杯での挑戦は幕を閉じた。