人口減が止まらない。それらについて、先の記事で人口減少社会の行く末をの記事を書いた。
今回は、さらにその先を見据えてみる。
日本は没落する。しかし……
この先、日本は間違いなく没落する。今の日本を見ていると、長く持つ気がしない。
地中海沿岸を支配したローマ帝国は滅び、7つの海を支配した大英帝国もすっかり落ちぶれた。
女性を差別し、年齢で差別し、多様性を認めず、不寛容が蔓延し、外国人を排斥し、長時間労働は減らず、長いものには巻かれ、出る杭をたたきのめし……、いつまで経っても旧態依然としたやり口を変えようとしない。こんな国が発展する方がおかしい。現に、様々な指標が日本が没落していることを示している。
22世紀の地図はどうなっている?
「没落する」と聞けば、多くの人は悲観的になるだろう。しかし、逆の見方をすれば、新しい国が生まれるチャンスでもある。
6500万年前に地球に衝突した小惑星は、地球環境の激変させ、恐竜を絶滅に追いやった。しかし、地球そのものがなくなったわけではない。絶滅した恐竜に変わり、新しい種が地球上に繁栄し始めた。
同様、日本が没落しても、日本列島がなくなってしまうわけではない。
人が住むのに適した土地がある。ところが、そこには誰も住んでいない。あるのは、崩れかけた廃屋と耕作放棄された土地だけ。(先の記事で示した人口減少社会・日本の行く末) そうなれば、当然入植してくる人がいる。それは、日本人かもしれないし、日本人ではないかもしれない。ただ共通しているのは、「俺たちでここに新しい国を作っていこうぜ」と考える強い信念と行動力を持った人たちだ。
地方移住の罠
「地方創生」の旗印に、多くの自治体が移住者を募集している。ところが、元々の住民と移住者との間でトラブルが起こる場合が少なくない。村八分のような扱いを受けた*1とか、軋轢からうつ病になったというケースもあるという。元々の住民が求めているのは、「(悪しき慣習であっても)その習わしに従ってくれ、さらに自分たちにとって都合がいい人」だからだ*2。他方、移住者が求めているのは、「新しい土地で(自分たちが主体になって)新しいことを始めること」である。そもそも若者たちが地方から出ていくのは、因習に嫌気がさしてのことが多いのだから、よそから移住してきたところで、新旧住民の間で様々なもめ事が生じるのも無理はない。ただ、無人地帯や限界集落であれば、そもそも人がいないのだから、トラブルに発展する可能性は低くなる。このまま人口減が続き、多くの地方から人の姿が消えたとき、古い価値観にとらわれないリベラルでイノベーティブなハングリー精神あふれる若者たちが入ってくるだろう。
そして、彼ら(新日本人)は、新しい国・新しい日本を作っていく原動力となる。
上の図に示すように、日本人の中でも、古い価値観にとらわれた旧日本人は淘汰され、新しい価値観を持った新日本人が中心となって、新しい国を作っていく。
とは言っても、日本の領土である以上、日本の法律(=霞ヶ関・永田町の論理)が適用される。そうすると、それが足かせとなって自由な街作りができない。そうなってくると、地域住民の民意を武器に、より広範な自治権を求め、中央政府からの権限委譲を勝ち取る方向に向かう。場合によっては、「じゃあ独立だ! 住民投票だ!」ということになるかもしれない。新しい国々が1つにまとまって連邦国家を作り上げていく可能性だってある。まさに「生まれる国」だ。
同調圧力という呪いから解放された新日本人は、持ち前の勤勉性を武器に、日本を再び偉大な国にする。その新日本人が作り上げた国が、「東アジアのシリコンバレー」のようになっていくことも十分に考えられる。(逆に、極東の貧民国として落ちぶれたり、全体主義が蔓延し北朝鮮のような独裁国家になっていたりするかもしれないが……良い方向に進むことを信じたい)
日本語も変わっていく
私たちの母語である日本語も変わっていくだろう。縦社会の象徴ともいえる敬語は使われなくなり、限定詞(英語のa,the,myなど)ができたり、主語の省略がされなくなったりするかもしれない。(日本語に限定詞がなく、主語が省略されがちなのは、日本のハイコンテクスト文化が関係している) 古文の授業では、「昔の日本は上下関係が厳しかったため、『敬語』と呼ばれるものがあったんだよ」と教えられる日が来るかもしれない。
諸行無常──世の中に不変のものはなし
こんなことを言えば、「何を寝ぼけたこと言ってやがる!?」「神州日本は永遠に不滅だ!!」「日本を乗っ取ろうとしてる反日左翼売国奴が」という声が聞こえてくる。
しかし、歴史の教科書を思い出してほしい。
現在の都道府県という枠組みができてから150年しか経っていない。また、100年前の日本地図では、今の日本地図に加えて、千島列島、南樺太、朝鮮半島、台湾が日本の統治領として赤く塗られていた。海外に目を向けると、アメリカのカリフォルニアやテキサスは古くはメキシコ領であった。近年では、英国のスコットランドやスペインのカタルーニャでは独立の是非を問う住民投票が行われたし、米国のカリフォルニアではトランプ氏が就任後、独立運動が盛り上がったという話は記憶に新しい。
100年後の日本地図が、今と同じということはまんざらあり得ないことではない。
もちろん私たちはその時代には生きていない。しかし、「ポスト人口減少社会と22世紀の日本地図」を想像するのも悪くはない。
ここまで書いていると、私たちは果てしない歴史のストリームの中で生きているのだなぁと、改めて実感する。その中のせいぜい100年の人生、どれだけ小さくても歴史に痕を刻みたいと思う。
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