バスケ留学生「事件」と外国人受け入れの深い闇

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2018年7月3日(火)

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「事件」は高校生のバスケットボール大会で起きた(イメージ、写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 個人的には「大きな問題」と考えているのに、なぜか、大手メディアも、怒るのが仕事のごとく何でもかんでも騒ぎ立てる人たちもスルー。それが余計に「やっぱこりゃ大問題だわ!」と私の危機感を高めている。

 なるほど。だから一向に「不幸な結末」がなくならないのだな、きっと。

 というわけで、今回は既に自分のメルマガや出演しているラジオなどで取り上げた問題なのだが、こちらでも書きます。
 テーマは「外国人と日本人」。政府が6月上旬に閣議決定した「外国人労働者受け入れ拡大」について考えてみようと思う。

 6月24日付朝刊各紙の三面記事に「高校バスケ留学生、自主退学」という小さな囲み記事が出た。

 内容は、全九州高校体育大会のバスケットボール男子の準決勝での「事件」について、延岡学園が6月23日に行なった記者会見に関するものだった。

 「事件」が起きたのは、6月17日。延岡学園vs.福岡大大濠の試合で、延岡学園1年の留学生(15)が、審判のファウルホイッスルを不服とし、審判の顔面を殴打。しかも「グー」。平手ではなくこぶしで顔面を殴り、審判員は出血しその場に後頭部から倒れてしまったのある。

 その映像はネットで一斉に拡散していたので、ご覧になった人もいるかもしれない。

 前代未聞の事件で試合は「続行不能」と判断され、その場で終了。
 留学生は監督に抱きつき「ごめんなさい。ごめんなさい」と号泣し、見ているのが切ないくらい2m4cmの大きな体を屈め、監督の前にひざまづき、小さな子供のようにワンワン泣いた。

 実はこの留学生は、今年2月にアフリカのコンゴ民主共和国から来日した青年で、バスケットボールはほぼ未経験だった。手が長くジャンプ力もスピードもあり、その「身体能力の高さ」を評価され、スポーツ留学した。

 ところが延岡学園には彼の母国語であるフランス語を話せる人はひとりもおらず、春ごろからホームシック気味に。「家に帰りたい」と学校側に訴えていたところで、今回の「事件」が起きてしまったのだ。

 同校は6月23日の会見で、この留学生を6月末までに帰国させると発表。そこで明かされたのが、日本社会の負の側面だったのである。

 試合直後からSNS上では留学生への猛烈なバッシングが始まり、中にはヘイト紛いのものや、暴力行使を示唆するものまで横行。翌日から、学校には電話やメールが深夜まで相次いだ。
 はがきなども多数寄せられ、インターネット上では留学生の顔写真が拡散。県警に相談するほどの事態だったという。

 佐藤則夫校長は「不測の事態もあり得るので、本人をできるだけ早く帰国させたい」とコメント。「事件はコミュニケーション不足」が最大の原因とし、今後は留学生の母国語が話せる非常勤教職員を雇うことなどを検討中だと話したという。

 ……。一体なぜ、いつもこうなのだろう。

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「バスケ留学生「事件」と外国人受け入れの深い闇」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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