27話 大鬼族
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洞窟の魔物達も、俺の姿を見るなりそそくさと逃げ出すようになった。
漂う風格のなせる技であろう。
俺は気を良くし、洞窟から出た。
のだが・・・、
「グ、っ誰だ! 追っ手か?」
「若! 我々が足止めします! 姫を連れてお逃げ下され!!!」
「何という邪悪な魔物! 皆の者、見た目に惑わされるな!!!」
などと、大げさな事を叫びながら、洞窟の入口前に散開する者達がいた。
身長2m以上ある、
こいつらって、森の覇者である
その
俺も慌てて、その場から飛び退く。
後ろに意識を向けて見るが、何も発見出来ない。熱源反応も無し。
この
せっかく新たな力を得たというのに、上には上がいるという事か。
「く、邪悪な魔物? それはどんなヤツだ? スマンが、俺には見えない・・・。今、どの辺りだ?」
俺は、警戒しながら
俺の問いかけに、
それどころか、ジリジリと、俺から距離を取る始末。
何だ? 俺を生贄にでもするつもりか?
そう考えた時、
「何を言っている? 邪悪な魔物とは、お前の事だ、スライム! 見た目には騙されんぞ!!!」
な、何だと?
この愛らしいスライムの俺様に向かって、邪悪な魔物? 言うに事欠いて、何て事を!
「おい。おい! ちょっと待て。俺が、邪悪な魔物だと?」
「しらばっくれるつもりか? スライムらしからぬ、その
む? そう言えば、洞窟の魔物をビビらすのが面白くて、出したままだった。
俺は、
「そんなの、出してないっすよ! 気のせいでは?」
「「「・・・・・・・・・」」」
誤魔化そうとしたが、無理だった。
それから暫く、誤解であると力説し、なんとか
やれやれ。
そもそも、こいつ等、何でこんな所に?
そう思って尋ねると、逃げて来たと言う。
良く見れば、怪我をした者が多く、大怪我をした者もいる。
普通の魔物なら、死んでいる。
上位種族の
俺は回復薬を取り出し、怪我人を治療する。
流石は生命力の強い、
怪我が治ったとはいえ、疲労困憊の様子。彼等を村で休ませる事にした。
何よりも、
単体でも、Bランク相当の魔物達なのだ。熟練の戦士ともなると、"B+"や"A-"の者までいるという話なのに。
森の覇者。この森の最上位の存在だと聞いたのだが・・・。
ともかく、村へと案内しよう。
俺はランガを召喚し、彼等を運ばせる事にした。
呼ばれて、ランガが俺の影から出現する。ようやく、俺もランガ召喚が出来るようになったのだ。
ゴブタのヤツに出来て、俺に出来ないなんて、プライドが許さなかった。影で練習していたのである。
早速、役に立って良かった。
俺も、黒狼に擬態し、3人乗せる。ランガも3人乗せて、村へと向かった。
徒歩だと1日の距離だが、1時間程度で到着する。
流石は、
こうして、
テントのあった場所に、ログハウスが出来ていた。
俺が、木版に設計図を書いて渡していた通りの形状で。
俺がスキルを研究するのに村を離れていた間に、大急ぎで建ててくれた様子。
俺は、ゴブリンとドワーフ達に礼を言い、中へ入った。
設計通りに、建てられている。凄いな。
図面程度なら俺にも書けたので、黒炭で木の板に寸法など細かい事まで書き込んで、ミルドに渡していたのだ。
ミルドは図面を眺め、解り易い! と頷いていた。俺の書き方の方が、効率よく相手に伝わるようだ。
そうして打ち合わせはしてあったのだが、内装も注文通りだった。
応接間に、
少し中で待つように告げ、外に出た。
ガルムの元へと向かい、出来上がっていた服を受け取る。
早速、
鋼糸を編みこんだ下着に、牙狼の毛皮の服。
俺がストックしていた、元ボスの毛皮である。何故か、黒色に変色していた。
ズボンと上衣を着込む。素晴らしい着心地だった。
毛皮には、かなり大量の魔素が染み込んでいたそうだ。
「旦那、こいつはかなりの防御力がありそうだぞ。普通の毛皮の比じゃない!」
と、作成したガルムが太鼓判を押した。
防具ではなく、普段着なんだけどね。まあいい。無くて困るものではなく、あったほうが良いものだしね。
さらに嬉しい事に、
「ああそれとな、その服、
との事! つまり、
ガルム君、良い仕事してくれよる。
この毛皮、多分俺の魔素を浴び続けて強化されてるのだろうけど、いい素材があったら胃袋の中で熟成させておくといいかもしれない。
心のメモに、書き込んでおいた。
さて、あまり待たせても悪い。
丁度いい所に見かけたので、ハルナさんにお茶を7人分用意するようにお願いし、
もっとも、まだ装飾も何もない、出来たてのほやほやなのだけども。
ハルナさんが、お茶を出し、部屋から退出した。
人間の味覚を、試す時がやって来た。
そっとお茶を口に含む。美味い。
味の違いなど、然程煩くなかった俺だが、この世界初めての味覚は十分に感動出来る味だった。
抹茶に似た、苦い味なんだけどね。熱さも感じる。熱無効だが、熱さは感じるのだ。
少し面白いと感じた。
落ち着くのを待って、話を聞く事にする。
途中で話を中断し、リグルドを呼んだ。そして、元族長の4人で手の空いている者も呼び寄せる。
カイジンも丁度休憩に入った所だったようで、やって来た。丁度いい。
レグルドとリリナは、すぐにやって来た。
他は忙しいようだったので、俺を含めて5人で話を聞く事にした。
何故、リグルド達を呼び寄せたのか?
それは、話がかなり重要だと判断した為である。
たったそれだけの事になる。
丁度、この村で炎の
森の覇者でもある
ゴブリンの族長達にも、衝撃が走った様子。
一気に、表情が引き締まる。
相手は?
「奴らは、いきなり俺達の里を襲撃して来た。圧倒的戦力で…! 奴ら…、
魔物には、人間と違って、宣戦布告を行ったりするルールは無い。
だから、不意打ちを咎められる事はないのだが、
それなのに…、弱者が強者に戦争を仕掛け、あまつさえ勝利するなど…。
詳しく、話を聞いた。
Bランクの魔物、300人。
それは、一国の騎士団に相当する戦力である。"B-"ランク程度に鍛えられた騎士3,000人以上の戦力になるのだ。
それを、
里は、皆殺しにされたそうだ。
里長が率いる戦士団が、
一人の
「俺に、もっと力があれば…!!!」
と、呻いていた。
彼が、若なのだろう。
最後に見た光景、それは、里長が
巨大な
そのオークに匹敵する固体が、他に3匹。
その4匹に、里の精鋭である戦士達が注意を向けている隙に、オークの兵が雪崩れ込み蹂躙を開始したらしい…。
その数、1万。これは、彼らが数えた訳ではなく、そのくらいいると感じた数であるそうだが…
それにしても、途轍もない数である。
一匹一匹が、人間の着用するような、
それが事実なら、オークだけに出来る話ではない。
どこかの国、人間の国と手を組んだと考えられる。
「いや、あるいは、"魔王"の勢力の何れかに組したのかもしれん。」
カイジンが、そう呟く。
その可能性もあるのか…。
基本、魔王は、森には手を出さないのかと思っていた。
森を抜けた先に、魔大陸が広がっている。
そこは肥沃な大地で、大量の戦争奴隷や
だから、魔国に飢えは無く、魔王達に人間への興味は無い。
だからこそ、領土欲があるとすれば、それは人間側である可能性が高いのだ。
だが、中には、興味本位や暇つぶしで戦争を起こそうとする魔王がいても、不思議は無いとの事。
ジュラの大森林の守護者"暴風竜ヴェルドラ"の消滅は、そういった魔王への抑止力の減少も意味するのだ。
なるほど。
そう考えると、この森の防衛も、もっとしっかり考えないとならないだろう。
さて、どうしたものか…。
皆の意見を聞いてみた。
「
目で合図を送り合い、代表してリグルドが答えた。
俺の様子を覗っている。
戦うか、逃げるか、傘下に入るのか。
オーガ達も、俺の態度次第では囚われる事となると思った様子。
急速に高まる緊張感。
「まあ、茶のおかわりでも貰うとするか!」
そう言って、お茶のおかわりを用意して貰った。
皆お茶を口につけ、緊張をほぐす。
さて、と。
「で、お前達はこれからどうするの?」
オーガ達に、問う。
「知れた事。隙を窺い、再度挑むまで!」
「その通り。お館様の仇討ちを行わずばなりますまい!」
「私も! 今はまだ非力だが、豚共は生かしては置けぬ!」
「「「我等は、若と姫に従います!!!」」」
ふむ。死ぬのは判っているだろうに…。
「お前達、俺の部下になる気はあるか?」
「な、何を?」
ふん。どうせ、ゴブリン達の戦力だけでは足りないのだ。
オークが攻めて来るなら、少しでも戦力は多い方が良い。
「お前等が俺に協力を誓うなら、お前等の願いは叶えてやれると思うぞ?」
「どういう事だ?」
「簡単だ。お前等に協力してやるって言っているのさ。ま、どうせ戦う事になりそうだから、ついでだよ。」
「なるほど…。ゴブリンが我等に協力すると同時に、我等もまたここの守りに利用される…、と?」
「そういう事だ。ちなみに、部下になるのは、オークを始末する間だけでいいぞ! その後は自由にして貰って構わない。
ゴブリンに協力して国を作るも良し! 旅立つもよし! だ。どうする?」
俺の問いに、しばし考える"若"と呼ばれるオーガ。
流石にBランク。この"若"は、"B+"ランク相当の実力がありそうだ。目に知性の輝きが見える。
一度瞑目し、目を見開いた。そして、
「承りました! 我等、貴方様の配下に加わらせて貰います!」
勝ち目を少しでも上げる為に、俺の部下となる事を選んだようだ。
良かった。
こちらも、助かると言うものだ。
この時、俺は知らなかったのだが、オーガは傭兵家業を行う者達もいたらしい。
魔王が起こす戦の先陣を駆けたりと、時代毎に活躍する一族もいたそうで、この者達もそうした一族だったのだろう。
配下となるのに、忌避感は感じなかったとの事。
それを聞いて、俺は簡単に仲間になった事に納得したのだった。
「良し! それではお前達に、名を授けよう!」
「は? 一体何を…?」
恒例の、名前付けである。
オーガ達は戸惑っている様子だが、お構いなしである。
俺はサクッと、名前を付けていく!
今回の俺は、一味違う。
オーガの雰囲気、それを色で表してみた。
若を"
姫に"
家臣団にそれぞれ、
と名付けた。
恒例の低位活動状態になった…。
というか、たった6人に魔素を奪われるとは、これは一体…?
翌日、目覚めた(起きてはいたのだが…)時、答えが明らかとなる。
真紅の燃える炎のような髪の美男子、ベニマル。
大柄な体躯だったハズなのに、身長180cm程度になり、身体も引き締まっている。
しかし、その内に秘めた
え…? ここまで進化しちゃったの?
それが、俺の本音だった。
明らかに、Aランクオーバー。まさに、鬼人。
漆黒の角が二本、真紅の髪から飛び出ている。黒曜石より美しい輝き。
完璧な美形って、嫌味だよね。
次だ。
シュナとシオンは、女性である。姫で男だったら、文句を言うところだ。
オーガの女性は、意外に美人さんだったのだが、進化したら凄まじくなった。
なんだ、これ? どこのアイドル?
いやいや、そんなレベルじゃねーぞ!
薄桃色の
なんという美少女!!! 身長は小柄で155cmくらいである。
真紅の瞳が、濡れる様な艶を帯びて、俺を見つめていた。
もう一人、シオンはというと。
紫がかった漆黒の
紫の瞳が、真っ直ぐに俺を見つめている。身長は170cmくらいか…。
モデルの様にスラリとした美人さんであった。
俺の秘書になって欲しい。
心からそう思った。
クロベエは、壮年。ダンディなおっさんである。
ハクロウは、初老の爺さん。しかし、その身ごなしは油断出来ない。
ソウエイは、ベニマルと同年代。
浅黒い肌に、青黒い髪。雰囲気の違う美丈夫で、190cmの長身だった。
青い瞳が、良く似合っている。
全員Aランクオーバー!
もう一度言おう。全員、Aランクオーバーだった!!!
そりゃ、一気に魔素、持っていかれますわ!
聞けば、一族の中でも最強の者が脱出して来たそうで…。
先に聞いたとしても、やはり名前は付けただろうけど。
これ、裏切られたら、洒落にはならんぞ!
そんな俺の心配を嘲笑うかの如く、
「「「リムル様! 我等相談の上、お願いが御座います! 何卒、我等の忠誠をお受け取り下さいませ!!!」」」
と、俺の前に一斉に跪いたのだ!
断る理由は…、無い。
こうして、俺は新たな仲間を得たのだ!
…ちょっと強力過ぎて、怖い気がしたのは秘密である!
強力な仲間が、出来ました!