26話 新たな能力
昨日は投稿出来ませんでしたが、昨日の分と併せてなんとか書き上げました。
さて、人間の身体を手に入れた事だし、何時までも毛皮という訳にもいくまい!
という事で、早速衣服を作成して貰う事にした。
スライムの身体は便利なのだが、欠点があった。
それが、装備である。特殊な
まあ、寒暖は感じないので然程問題に為らないが、防御的には不安があった。
一撃くらい、耐えれる装備が欲しかった所なのだ。
ドワーフ達も、最近はゴブリン達の狩ってきた魔物の素材で、色々作成をしている様子。
取り敢えず一着、子供用の服を用意して貰おう。
そう思い、ドワーフの元へ出向いた。
いつの間にか出来上がった丸太小屋の中が、衣服関係の製作工房である。
ドワーフの長男ガルムが、中で
「おいっす! ガルム君。ちょっと服作って欲しいのだけど!」
「って、旦那。何言ってるんですか。どうやって着るつもりです? 装備出来ないでしょ?」
「ふふふ。ふはは、はあーーーっはっはっは! 舐めるなよ!
いつまでも、何も着れないままの俺だと思うな! はぁーーーー!!!」
「な、何いぃ!!! 旦那の身体がどんどん大きく…、は成ってないな。子供…か?」
「チッ。余り驚かないな…。まあいい。大人にも成れるけど、取り敢えず、この姿で着れる服をお願いします!」
「お、おう。じゃあ、サイズを測って貰ってくれ! おい、ハルナ。旦那の採寸を頼む!」
俺は、製作を行っていた女性の一人、ハルナさんに採寸をして貰った。
無論、真っ裸だが、恥ずかしくもない。何も無いのだから…。
「まあ! リムル様、可愛らしくなられて!」
そう言いつつ、嬉しそうに採寸してくれた。
可愛い? 俺的には可愛いが、ゴブリンの美的感覚でも可愛いのか。
魔物にも、美的感覚がある事の方が驚きだけど。
明日には出来るそうなので、一先ずスキルの確認を行う事にした。
場所を移す。
落ち着いてスキルを試すとなると、余り誰も来ない所がいい。
俺は、リグルドに出かける事を伝え、誰も近寄せないように命令した。
そして、村の中心から封印の洞窟へと向かった。
ヴェルドラと出合った場所。
あそこなら、広大な地下空間があり、異常に頑丈で誰も来ない。
洞窟の魔物すら恐れて、近寄って来ないのだ。
それでは、早速試す事にする。
ユニークスキル『変質者』と、エクストラスキル『炎熱操作』か。
あとは、炎巨人の『分身体,炎化,範囲結界』を手に入れた訳だが。
何から試すかな…。
分身を試したついでだし、炎巨人の能力を見てみるか。
炎化か。スライム状態では発動しなかった。
こういう風に、何らかの要因で使えない
範囲結界は、使用出来た。意味が判らん。
このスキルは、炎の熱を結界に閉じ込めて、熱エネルギーの流出を防ぐのが目的ではないのか?
炎化は出来ないのに、結界だけスライムで使えても…まてよ? これ、バリア的な用途もあり?
ふむ。
そもそも、相手を結界に閉じ込める訳で、結構な強度がある。そういう用途にも使えるかもしれない。
範囲の指定は、最大直径100mの半球。地面の下には効果なしである。
最小は、自分の身体を覆う程度にまで縮小出来た。効果は変わらない。サイズが変更しただけであった。
その強度は?
分身を作り、結界を張らせた。
その結界に向けて、"水刃"を放つ。パシィ!! と、弾かれた。
ほほぅ…。そこそこ強度あり?
では、『毒霧吐息』『麻痺吐息』と試す。
判明したのは、かなり魔素を消費するという事。
分身に持たせた魔素は、『麻痺吐息』ならダメージを受けないのか消耗しなかったが、『毒霧吐息』では直ぐに壊れた。
逆に言えば、魔素量を補給すれば耐えれるという事。
大量の魔素を持たせ、再度分身に結界を張らせた。
そして、黒狼になり『黒稲妻』を使用する。
この『黒稲妻』、黒狼の状態だと、範囲や威力の指定が可能なのだ。
二本の角、これで、威力調節+範囲調節を司っていたみたいだ。
スライムには角が無いので、一気に魔素を持っていかれる! という事のようだった。
という訳で、威力を最大で範囲を個人に調節し、放つ!
分身の結界は、個人用のサイズで張ってある。サイズが小さいと、魔素の消費量は少ないのだ。
結界は、
ピカッ! ………チュドーーーーーン!!!
後には、消し炭も残らなかった。
ヤバすぎるだろ!
これは…、この結界を過信出来ないという事だな。
そもそも、電流耐性や熱攻撃無効があるのに、どうして消し炭?
ちょっと意味が判らない。
この『黒稲妻』、どうやら、エクストラスキル以上の特殊スキルの可能性がある。
ドキドキしてしまったよ。
うかつに自分に試さなくてよかった! 心からそう思った。
ただ、黒狼に擬態しないと使えないので、この『黒稲妻』は使いどころが限定されそうだけど…。
炎巨人に擬態し、炎化を試して見た。
2000℃程度の高温のガス状に変化するようだが、予想通り、結界内で使わないと、エネルギー流出が大きすぎてすぐ魔素切れになる。
これも、使いどころが難しいスキルである。
ちなみに、結界と併用した炎化は、かなりエグイ。
流石はAランクオーバー。
俺は肺呼吸の必要が無い上に、熱変動耐性exがあったので問題なかったが、普通なら絶対的必殺技である。
相性が、実に良かったのだ! と安堵した。
使い道は、その内考えよう。
さて、エクストラスキル『炎熱操作』はと言うと。
シズさんがやったみたいに、爆発を起こす事が出来ない。どういうカラクリがあるのやら…。
指先に炎を灯したり、手の平から炎を出したり。そう言った事は、可能だった。
指先に熱を収束し、放射する、
というか、収束した方が威力が上がった。
手の平の炎は通常、200℃程度の温度。そこから指先に収束させると、1600℃位になる。
この状態で、"水刃"を放つ要領で、魔素を放出するのだ。
10m先の対象に当たった時点で、その部分の温度は1400℃以上。結構使えそうなので、"炎弾"と名づけた。
どこぞの宇宙人が、指先から放つ必殺技に似ていた。
手の平に炎を集中し、相手を焼く事も出来そうだ。
相手の頭を掴んで、炎を出す! そういう危険な事も、やろうと思えばやれるだろう。
このスキル、練習次第で温度を高める事も可能だし、爆発系統を使用出来るようになりそうだ。
魔物のスキルと違って、要練習! という事なのだろう。
さて、最後に手に入れたスキル。
それは、『変質者』。
俺は、違うよ? 紳士だったから、変質者ではない。大体、不名誉な名前すぎる。
まるで、危ない趣味に目覚めた人のようではないか…。
いや、俺は目覚めてないよ?
ともかく、その能力を検証する事にしよう。
だが、どういう事が出来るのか、まったく不明である。
ここは、困った時の『大賢者』。先生! お願いします!!!
《解。ユニークスキル『変質者』の効果…
融合:異なる対象同士を、一つのモノへと変質させる。
分離:対象に備わる異なる性質を、別のモノとして分離する。
(分離された対象が実態を持たない場合、消滅する場合がある。)
以上の2つが主な能力です 》
なるほど。
シズさんの魔人化、それはこのユニークスキルの効果だったのか。
正直な感想を言うならば、このスキル、俺の能力に相性いいのではないだろうか?
汗を流す機能など備わっていないスライム
これ、相手の能力を理解する事が前提のようだが、敵からスキルを消失させる事が可能なのでは?
《解。魂に刻まれた能力の消滅や分離は、不可能です 》
そこまで万能では、無かったか。
だが、俺の能力に相性がいいのは間違いないと思う。
例えば、擬態する魔物同士を融合する事も可能なのでは?
シズさんは、炎の
魔人化は、
任意で、姿を変える事も可能なのかも知れない。
俺は、イメージする。
スライムをベースに炎の
身体の表面に薄紅の
見た目的にはそんなに変化ないが、表面温度は200℃程度になった。
先程は出来なかった、炎化も簡単に可能となった訳である。
炎化を行うと、
体当たり的な攻撃でもダメージを出せそうだ。
もし敵に捕まっても、この状態になったら逃げ出せるかもしれない。
こうして、捕食した魔物を各々融合してみた。
蜘蛛は白色の模様。
ムカデは牙が生えた。キモい。
トカゲは、身体の一部に鱗が。
蝙蝠は、悪魔のような翼が生えた。スライムの身体に悪魔の翼。意外に格好良い。
黒狼は、身体の色が黒色に変化し、角が生えた。ユニコーンのような角が二本。
眼が無いせいで、イマイチ角の位置に不安があるけど。
次に黒蛇。身体に金色の斑模様が浮き出した。
スライム形態のまま、全ての能力を完全に駆使する事が可能であった。
見た目的にはアレだけど・・・。
では、同時に融合は可能なのか?
答えは、可能である。ただし、二体の魔物まで。
3体の能力を融合させる事は、出来なかった。だが、融合するまでもなく能力を使用出来る魔物がほとんど。
性能が劣るが、能力自体を使えるのなら、わざわざ融合しなくてもいい話である。
擬態しないと使えない能力・・・『炎化,黒稲妻』だけである。
技能ではないが、蝙蝠の飛翔能力は擬態しないと使用不可能。翼だけを出す事が出来なかった。
となると、炎巨人、黒狼、蝙蝠から二つを選んで、状況に合わせて融合変質を行うのが基本となるだろう。
まあ、
ちなみに、最初に擬態して、そこに能力を付加すると・・・。
最大三体の魔物の能力を、融合する事が可能となる。
どう見ても、
いや、これは、見た目の威圧感が半端ない。
黒狼や黒蛇ベースが、一番ヤバそうだった。
どれをベースにしても、能力の強さは変化ないが、機動力に優れる黒狼が
本当にピンチの時は、この姿を披露する事になるだろう。
ふと、人化して能力付与はどうだろ? そう思い立った。
人化の最大のメリットは、装備が行える事。
魔物というよりは、魔獣に近い姿への擬態では、装備出来る武具がないのだ。
人化での融合も、強力なスキルであると言えるだろう。
見た目の変化だけ記しておく。
炎巨人・・・髪と瞳が真紅に変化。
黒狼 ・・・髪が黒髪に変化。アホ毛のようなくせ毛が二本飛び出た。狼の尻尾と犬耳が!
黒蛇 ・・・瞳が金色になり、瞳孔が蛇のようになった。手足の先端が硬質化した鱗に覆われ、爪が生えた。
蝙蝠 ・・・悪魔の翼が生えた。
擬態しないと使えない、能力持ちへの変化は以上。
今後、強力な魔剣みたいな物が入手出来たら、この姿での戦闘が主になるかもしれない。
前に考えた、魔剣、そろそろ製作を考える時が近づいたのかもしれない。
なにしろ、融合は無機物にも適用される。
どういう事かというと、属性や特殊能力を持つ武器同士を融合する事も可能っぽいのだ。
これは実際に、試してみないと詳細が判らないのだけども。
魔王を倒すには、やはり聖なる属性の剣とか在った方がいいのかな?
まあ、王国にでも行って見て、探してみよう。
っと、耐性の確認を忘れていた。
まず、エクストラスキル『炎熱操作』獲得時、これの習得と同時に、熱攻撃無効耐性がついた。
とは言え、流石に太陽に突っ込んだら融けて死ぬだろうけど。
どこまで耐えれるのか。これは、自分の能力で試してみるしかないのだ。
今までは、自分にダメージが来るのを恐れて、色々試せなかった訳だが、今日の実験は一味違う!
先程『黒稲妻』を試したように、分身体の出番である。
自分がどの程度までダメージに耐えれるか、心置きなく実験出来るのだ!
少し心が痛む気がするが、割り切ろう。
分身を出し、操作する。勿論、スライムの姿だ。子供になったら、絵的に問題ある。
この分身、今の俺が
慣れれば、装備を複製し、着た状態での作成も可能になりそうだ。
分身体の制限は、主にユニークスキルにかかっている。
その一、『大賢者』
半径が1km以内に同時に居る場合は、使用可能である。
それ以上離れると、意識のリンクが切れて単純な命令をこなすだけになる。
視覚は共有しているので、随時命令の変更は可能なので、偵察だけなら可能なのだが…。
その二、『捕食者』
胃袋が共通で、本体しか出す事が出来ない。
捕食や保管は可能なのだが、取り出しは出来ないのだ。
ただし、能力など、フィードバックは行われる模様。
その三、『変質者』
融合可能なのは、一体のみだった。分離は、普通に行える。
詳しく調べてみると制限はあったが、十分高性能である。
色々な攻撃を、自分の分身に試していった。
結果、"水刃"はかなりの威力があった。
黒蛇までは一撃。黒狼も二撃で殺せる。それ以外は、言うまでもない。
"炎弾"も、指先からビームが出るような感じに見えるが、威力は凄まじい。
ただし、こちらは貫通効果なので、即死に至らない。頭や相手の弱点を、打ち抜く必要があった。
黒蛇の頭も貫通したが、即死しなかった。油断すると、逆襲されてしまうだろう。
威力は"水刃"より上なのに、殺傷力で劣るのだ。
なるほどなーと、妙に納得してしまった。
最強は『黒稲妻』
最強形態[ 黒狼+炎巨人 ]で結界を張って炎化した状態だと、即死しなかった。
何とか耐えられた感じ。
炎化は、攻撃よりも防御として考える方が優れているのかもしれない。
ただし、最強形態以外でこれを防ぐ術は、現在見当たらない。
擬態状態から一定ダメージを受けると元に戻るのだが、本体へのダメージは無いのだ。
それなのに、一撃で死ぬのだから、オーバーキルもいいところである。
とまあ、色々なデータは取れた。
後は、『大賢者』の脳内シュミレーションで検証可能だろう。
俺は子供状態になると、洞窟から外へと向かった。
途中、ムカデと遭遇したが、チラッ! と、見ただけで逃げて行った。
ふふふ。やっと俺にも貫禄が出てきたのだろう。
見た目は子供なんだけどね!
ステータス
名前:リムル=テンペスト
種族:スライム(人化可能)
加護:暴風の紋章
称号:"魔物を統べる者"
魔法:なし
技能:スライム固有スキル『溶解,吸収,自己再生』
ユニークスキル『大賢者』『捕食者』『変質者』
エクストラスキル『水操作』『炎熱操作』『魔力感知』
獲得スキル…黒蛇『熱源感知,毒霧吐息』,ムカデ『麻痺吐息』,
蜘蛛『粘糸,鋼糸』,蝙蝠『超音波』,トカゲ『身体装甲』
黒狼『超嗅覚,思念伝達,威圧,影移動,黒稲妻』
炎巨人『分身体,炎化,範囲結界』
耐性:熱変動耐性ex
物理攻撃耐性
痛覚無効,熱攻撃無効
電流耐性
麻痺耐性
ユニークスキル『変質者』の能力は、予想通りだったでしょうか?
そろそろ何が出来るのか、作者が思いつかないような使い方があるかもしれないです。
『黒稲妻』が強いのには理由が在ります。主人公は気付いていません。