ケイ・オプティコムは6月30日、格安SIM「mineo」のユーザーイベント「第3回 mineoファンの集い」を都内で開催した。「通信の最適化」を事前告知なしで実施したことがネット上で非難を浴び、騒動となった矢先の開催となった今回のイベント。冒頭のあいさつから通信の最適化についての謝罪がなされるなど、ユーザーからの信頼回復を強く意識する姿勢が見られた。
イベントではmineoの2013年のサービス開始から現在までの歩みが紹介された。サービス開始当初、目標として挙げていた100万契約は2018年4月10日に達成。MVNO市場で5位の地位を獲得するなど、順調にサービスを拡大しているmineo。
サービス開始当初の専従スタッフはわずか4人だったというが、現在は40人のチームに拡大している。
多くのMVNOがしのぎを削る市場の中で、mineoが独自の価値として打ち出したのが、ユーザーコミュニティー重視のブランド戦略。「Fun with Fan.」というブランドステートメントを掲げて、コミュニティーサイト「マイネ王」の運営を軸に、ユーザー同士が交流を促している。mineoのファンになってもらうことで、口コミによってユーザーを拡大する戦略だ。
今回のイベントもその一環で、東京会場では「マイネ王」で応募したmineoユーザーから100人を招待して開催された。イベント内容にはクイズ大会など、ユーザーイベントでは定番の企画も用意されていたが、mineoならではといえるのが「リアルアイデアファーム」だ。
マイネ王では、ユーザーが発案したアイデアをサービスに取り入れる「アイデアファーム」というコーナーがある。mineoにはユーザーがデータ量をシェアする「パケットタンク」など、他社にはないユニークなサービスがあるが、こうしたサービスを生む土壌となったのがアイデアファームだ。
リアルアイデアファームでは、それをネットではなく“リアル”で再現するというもの。グループごとにmineoのサービス改善や新キャンペーン企画といった議題が用意され、新しいアイデアを議論して発表するという内容だ。
各グループにはmineoスタッフから担当者が1人ずつつき、活発な議論が展開されていた。例えば「マイネ王 50万会員突破記念キャンペーン」をテーマに話し合ったグループでは、Web連動の謎解きイベントやmineoキャラバンカーの展開といったアイデアを発案。「店舗応対、サポートの改善」をテーマとしたグループは、「Web手続きと店舗手続きで手数料が同じなのは不公平。Web手続きを安くすれば店舗の混雑も緩和できる」という提案を行っていた。
イベントの冒頭で、mineoの責任者を務める上田晃穂氏は、こう陳謝した。
mineoは「通信の最適化」として、ピークタイムに全体の混雑を抑えるために、通信の制御を2018年4月から実施している。この実施に際して、契約者への事前告知がなかったとして一部のユーザーから非難を受けており、5月には公式コミュニティーサイト「マイネ王」のスタッフブログなどに謝罪文を掲載する事態となっていた。
そもそもmineoはなぜ、「通信の最適化」を導入したのか。その背景には多くのMVNOが共通に抱える悩みがある。
mineoが実施している手法は「データ圧縮」と「トラフィック制御」の2種類。データ圧縮は、例えばWebサイトなどのコンテンツデータを圧縮して送信容量を減らす行為が含まれる。トラフィック制御には例えば、動画視聴などの大容量の通信で、配信速度を抑制するといった制御がある(関連記事)。
MVNOは、キャリア(MNO)に通信帯域を借り受けてサービスを提供する仕組みだ。ユーザー数に対して通信帯域を多く借りれば借りるほどトラフィックに余裕が出るが、その分、キャリアに支払う「接続料」の負担が増え、安価に提供するためには借りられる帯域には限度がある。
一方で、ユーザーが通信を利用する量は、時間帯によって波がある。特にビジネスマンの昼休みにあたる午後12時台は通信のピークタイムとなる。この時間帯の大量の通信をさばき切れずに帯域の許容量を超えると、混雑によって通信が遅くなってしまう。
ただし、このピークタイムに合わせて帯域を借りると、他の時間帯には帯域が余ってしまい、接続料の負担だけがのしかかる。そのため、1日に発生する通信の波をなるべくなだらかにして、必要最低限の帯域で多くのユーザーに利用してもらうというのが、格安SIMを提供するMVNOに共通の課題となっている。
mineoはこの対策として3つの組み合わせを実施しているという。1つは、定期的な通信回線の増強。つまり借りる帯域を追加で借り続けるということ。2点目は混雑の分散。例えば夜間帯のみ高速で通信できるIoT機器向けプランを提供するなど、余っている帯域を多く販売する手法だ。
そして3つ目の対策が、今回問題となった「通信の最適化」だ。つまり、通信の最適化をピーク時に実施することで、全体の通信を抑えて、少ない帯域でも効率よく通信できるようになる。安価に通信サービスを提供するためには、即効性のある手段となりうるというわけだ。
今回の騒動の問題点として指摘されていたのは、「事前の告知なく実施してユーザーに不信感を抱かせたこと」「通信の秘密への抵触や通信の改ざんにあたる可能性」の2つ。
事前の告知なしに通信の最適化を実施したことについては、ユーザーの信頼を損ねる行為だったとして、イベントの中でも度々陳謝していた。
信頼回復のための取り組みとして、mineoでは「情報公開指針」と「行動指針」を設定し、mineoに関わる全スタッフに対して周知徹底していくと紹介した。情報公開の透明性を高め、「ファンファースト」を掲げるmineoブランドとして、信頼をそこねるような行動を防ぐ狙いだ。
また、mineoでは現在も、平日のピークタイムに限定して「通信の最適化」を実施しているが、mineoのサービスサイトとサポートページおよび「マイネ王」で、実施時刻や内容について告知していると紹介された。
一方、後者の「通信の秘密」への抵触については、イベント後に実施された上田氏への囲み取材にて、同氏は「契約時の提供条件説明書などで『通信の最適化を実施する場合がある』と記載した上で、各ユーザーに説明している」ため、問題とならないという認識を示した。
今後、「通信の最適化」の適用をユーザーが選択できる仕組みの導入を検討しているという。
責任者の謝罪する事態になった「通信の最適化」騒動だが、実際のユーザーからの反響は少ないようで、上田氏は「mineoの契約数の動向をチェックしていたが、“通信の最適化”事件前後による影響はほぼない」と話した。
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