イメージ変えて 「子ども食堂=貧しい」?
2018年06月28日
家庭の事情で、1人で食事を取る子どもに低額や無償で食事を提供する「子ども食堂」が、全国各地で急速に広がる一方、「子ども食堂=貧困の子どもが行く所」とのイメージや、運営上の課題で休止に追い込まれるケースが出ている。子ども食堂の数はまだ足りておらず、専門家からは「見学してもらうなどしてイメージを変え、地域の交流拠点となるよう支援が必要だ」との声が上がっている。(三浦潤一)
昨年度、行政として初めて直営の子ども食堂を設置した群馬県太田市は、手応えと同時に課題を実感している。市内15カ所の児童館で隔週で開催。カレーライスを100円で提供したが、一部で利用が広がらなかった食堂もあったためだ。場所によって年間利用人数に3倍以上の開きがあり、100人に満たない所もあった。
市児童施設課の担当者は「子ども食堂というと、貧しくて食べられない子どもが来るというイメージがあり、気軽に利用しにくい保護者も多かった」と明かす。市は、市内全域に食堂を設けて運営することでイメージを変えようとしたが、払拭(ふっしょく)までには至らなかった。
アンケートから、保護者に送迎されてくる子どもが多かったため、下期から保護者の利用も可能にするなど利用を促したが、大きくは伸びなかった。ある程度定着はしてきたものの、15カ所で年間計1556人の子どもと保護者の利用にとどまった。ただ、子ども食堂は「共食の場の提供に必要」(同市)として、今年度、既に直営をやめ、今後は民間支援に切り替える。市が直営で運営するフードバンクから食料も支援していく考えだ。
「昨年の7月以降は毎回50人以上の子どもたちが利用した」と手応えをつかむのが、茨城県のいばらきコープだ。
16年から下妻市をはじめ県内4カ所で月1回、子どもに共食の場を提供する「ほぺたん食堂」を運営する。旬の野菜を使った料理が食べられ、親も来店できることで親同士の情報交換の場にもなっており、好評だ。組合員が主体となって地元の高校生も手伝いに加わり、食材はコープ商品の他、JA常総ひかりやJA北つくば、JA土浦、JA全農いばらきが支援する。
同コープで食育を担当する総合企画室の棚谷靖之さんは、地域に定着する鍵について「組合員主体で多くの団体や人を巻き込み、地域の交流拠点になっている。保険加入や衛生研修で安全・安心にも気を使っている」と分析する。万一のけがなども組合員保険を適用。保健所から講師を招いて研修を行うなど衛生面に特に注意を払う。今後もJAと協力しながら、活動を広げていきたい考えだ。
子どもが集まらなかったり、支援が集まらなかったりして、食堂の運営が休止に追い込まれるケースは多い。
幅広く地域に開放することが望ましく、人と人とが触れ合う温かい場所をつくり、交流の中で子どもの問題を発見してあげることが大切だ。マイナスのイメージを払拭するには、保険加入で安全・安心を確保し、自治体だけでなく地域との連携を強める必要がある。
厚生労働省の調査(2015年)では、17歳以下の子どもの貧困率は13.9%で、子どもの7人に1人が貧困世帯で暮らしている。全国の子ども食堂運営者らでつくる「こども食堂安心・安全向上委員会」の調査によると、貧困や地域のつながりの希薄化を受け、子ども食堂の数は現在、16年の7倍の2286カ所に増えた。
親の“誤解”が壁 群馬県太田市
昨年度、行政として初めて直営の子ども食堂を設置した群馬県太田市は、手応えと同時に課題を実感している。市内15カ所の児童館で隔週で開催。カレーライスを100円で提供したが、一部で利用が広がらなかった食堂もあったためだ。場所によって年間利用人数に3倍以上の開きがあり、100人に満たない所もあった。
市児童施設課の担当者は「子ども食堂というと、貧しくて食べられない子どもが来るというイメージがあり、気軽に利用しにくい保護者も多かった」と明かす。市は、市内全域に食堂を設けて運営することでイメージを変えようとしたが、払拭(ふっしょく)までには至らなかった。
アンケートから、保護者に送迎されてくる子どもが多かったため、下期から保護者の利用も可能にするなど利用を促したが、大きくは伸びなかった。ある程度定着はしてきたものの、15カ所で年間計1556人の子どもと保護者の利用にとどまった。ただ、子ども食堂は「共食の場の提供に必要」(同市)として、今年度、既に直営をやめ、今後は民間支援に切り替える。市が直営で運営するフードバンクから食料も支援していく考えだ。
地域交流拠点に いばらきコープ
「昨年の7月以降は毎回50人以上の子どもたちが利用した」と手応えをつかむのが、茨城県のいばらきコープだ。
16年から下妻市をはじめ県内4カ所で月1回、子どもに共食の場を提供する「ほぺたん食堂」を運営する。旬の野菜を使った料理が食べられ、親も来店できることで親同士の情報交換の場にもなっており、好評だ。組合員が主体となって地元の高校生も手伝いに加わり、食材はコープ商品の他、JA常総ひかりやJA北つくば、JA土浦、JA全農いばらきが支援する。
同コープで食育を担当する総合企画室の棚谷靖之さんは、地域に定着する鍵について「組合員主体で多くの団体や人を巻き込み、地域の交流拠点になっている。保険加入や衛生研修で安全・安心にも気を使っている」と分析する。万一のけがなども組合員保険を適用。保健所から講師を招いて研修を行うなど衛生面に特に注意を払う。今後もJAと協力しながら、活動を広げていきたい考えだ。
保険加入で安心確保を
■子ども食堂に詳しい法政大学の湯浅誠教授の話
子どもが集まらなかったり、支援が集まらなかったりして、食堂の運営が休止に追い込まれるケースは多い。
幅広く地域に開放することが望ましく、人と人とが触れ合う温かい場所をつくり、交流の中で子どもの問題を発見してあげることが大切だ。マイナスのイメージを払拭するには、保険加入で安全・安心を確保し、自治体だけでなく地域との連携を強める必要がある。
厚生労働省の調査(2015年)では、17歳以下の子どもの貧困率は13.9%で、子どもの7人に1人が貧困世帯で暮らしている。全国の子ども食堂運営者らでつくる「こども食堂安心・安全向上委員会」の調査によると、貧困や地域のつながりの希薄化を受け、子ども食堂の数は現在、16年の7倍の2286カ所に増えた。
おすすめ記事
野菜残さ利用し発電 農家負担・コスト削減 JAゆうき青森
JAゆうき青森は、発電事業者と協力し、バイオガス発電事業に乗り出した。野菜の洗浄選果施設などから出る野菜残さの処理費用を削減し、有効利用する狙い。生産者が負担する洗浄選果施設の施設利用料が約700万円削減でき、JA自己改革で掲げる「農業者の所得増大」の有効事業として期待される。2018年度内の稼働を目指す。
2018年06月26日
食品サンプル 芸術の域 長野で展示会開幕
長野県池田町の北アルプス展望美術館で30日、食品サンプルを展示した「FOOD SAMPLE展」が始まった。本物そっくりの農畜産物や料理のサンプルで、来館者を楽しませている。
作品は老舗食品サンプル会社、イワサキ・ビーアイ(東京都大田区)が提供。職人が社内コンクールなどで腕を振るった160点を展示する。
カレーの風呂に浸かるニンジンの家族や霜降り肉のサンダル、スパゲティのテニスラケットなど精巧でユニークな作品が並ぶ。食品サンプルの作り方や歴史も紹介。出口付近では、そばや信州サーモンなど町内の飲食店お薦めのサンプルを展示する。学芸員の吉成見奈子さん(29)は「世界に誇る日本独自の食のアートを楽しんでほしい」とPRする。
展示は8月26日まで。入場料は一般800円、高大生600円、小中学生200円。
2018年07月01日
勝谷誠彦さん(作家) 地酒と特産料理コラボを 外国人旅行客が好反応
世界中を旅し、いろいろな物を食べてきました。南極大陸に上陸したこともありますし、北極圏のかなり北まで行ったこともあります。
スウェーデンの最北端にあるキルナという小さな町に、オーロラを撮影しに行った時のことです。零下40度の中で三脚を立ててオーロラの出現を待つ。雲が出ている悪条件で、いつ見えるかとひたすら極寒の中で待っていました。
その町にはスウェーデン宇宙公社の施設があって、日本人の科学者も研究をしていたのです。こんなところでも日本人が働いているんだと感動しました。
同じようにキルナで感動したのは、中華料理店があったこと。北緯68度の北極圏にも中国人が移り住み、中華料理を提供しているとは! 聞けば、世界最北の中華料理屋だそうで。
その店で料理を食べ、紹興酒を飲みました。でも味については何の印象もない。薫製や酢漬けなどの北欧料理を食べながら、アクアビットというジャガイモの蒸留酒やウオッカを飲む方が、あの寒い町では良かったですね。ビールなんてアルコール扱いされていなくて(笑)。朝の起き掛けに飲んだり、アクアビットのチェイサーとして飲む。そんな扱いでした。
世界中を回ってみて感じたのは、料理はその土地の風土・気候にのっとって作られたものがうまいということですね。これは酒についても同じ。フィリピンでサンミゲルビールを飲むと、とてつもなくおいしいけど、日本で同じものを飲んでもたいしたことないと感じた経験のある人も多いでしょう。
ヨーロッパ、特にフランスの田舎を巡ると、農家とレストランの「距離」がとても近いことに気付きます。農家がレストランをやったり、逆にレストランが農作物を作ったりすることが少なくありません。そこまでいかなくても、各地のレストランは、地元の食材を使った料理と地酒でもてなすのが当たり前なんですね。
それに対して日本では、両者の「距離」がとても遠く感じます。せっかくの地元の食材を使う店が少ないと感じざるを得ません。特に地方では、チェーン店が幅を利かせています。商店街を歩くと、見たことのあるチェーン居酒屋の看板ばかりというところも多いと思いませんか。もちろんチェーン店には安い価格で提供できるというメリットもあり、一概に悪いというわけにはいきませんが。
一方で流通が発達したおかげで、東京には全国の食材や酒を提供する店が増えました。また取り寄せブームで、地方から自宅に送ってもらう人もたくさんいます。でもそれでは、その土地の風土を感じることはできません。せめて、同じ土地の料理と地酒をセットで頼めるようになればいいのですが・・・。
そんな中、僕が注目しているのは地方の蔵・酒造メーカーが始めた取り組みです。例えば大阪府交野市にある大門酒造では、築200年の酒蔵を改装し2階に「無垢根亭」という酒亭を設け、地酒と土地の料理を楽しめるようにしています。各地の蔵元の間にもこうした動きが広がりつつあります。
僕は日本酒が好きだし、炊きたてご飯も大好き。同じ土と水で育った米から作られる白いご飯をあてに酒を飲む。これこそが究極の食と酒の関係だと信じています。実は酒蔵発信の新たな試みに、いち早く反応しているのが外国人旅行客。地方地方の特徴ある料理と酒が、食文化として多くの人に愛されることを期待しています。(聞き手・写真 菊地武顕)
<プロフィル> かつや・まさひこ
1960年、兵庫県生まれ。出版社勤務などを経て、フリーランスの文筆家に。テレビのコメンテーターとしても活躍。報道系から飲食に関するもの、小説まで多ジャンルにわたり著書多数。日本酒に関する書としては『獺祭 この国を動かした酒』『にっぽん蔵々紀行』などがある。
2018年07月01日
ゴールドラッシュ塩 山梨県中央市
山梨県中央市の「道の駅とよとみ」が甲府市内の業者と共同で開発した調味塩。人気が高く栽培の盛んなスイートコーン「ゴールドラッシュ」の粉末と岩塩を混ぜ合わせ、幅広く調味料として使える塩を開発した。塩の粒子を大きくし、ゴールドラッシュ粉末量も増やした。1日で20個売れる日があるほど売れ行きは好調だ。
同駅の塚田茂樹駅長は「スイートコーンのつやのある黄色い粉が料理に花を添え、主食材の味を引き立てる。幅広い世代の方に風味を楽しんでほしい」と強調する。
新開発の「ゴールドラッシュ塩」(110グラム)は540円。問い合わせは同駅、(電)055(269)3424。
2018年06月29日
東北農政局不祥事 再発防止に全力挙げよ
東日本大震災の復旧工事を巡り、東北農政局の職員が非公開情報をゼネコンに漏らしていたとして、農水省は職員を処分した。被災地が農業再開に向けて必死の努力をしている中での不祥事である。再発防止を徹底しなければならない。
同省の調査によると、ゼネコンに再就職した同省OBから働き掛けられた東北農政局の専門官(当時)らは、ゼネコンが提出を予定していた技術提案書の添削・助言をした。また、予定価格の基礎となる検討段階の設計金額、未公開情報である入札公告日、入札書の提出前の技術評価点および順位を教えていた。
同省は、専門官ら4人を懲戒処分とし、当時の上司7人を厳重注意とした。公正取引委員会から排除措置命令を受けた準大手ゼネコンは1カ月の指名停止とした。当然である。コンプライアンスや適正な文書管理を徹底し、二度と繰り返さないようにしなければならない。
OBを通じて業者に情報を漏らすということ自体が、言語道断の行為である。被災地では、農業を再開できないで苦しんでいる被災者が多い。1日も早い農業再開に向けた取り組みが今も続いている。こうした中で、官と民が“癒着”して、不明朗な行為を繰り返すことなどあってはならない。
東日本大震災の復旧工事を巡っては、2年前にも入札情報を漏らした見返りに飲食接待を受けたとして、同省職員が逮捕された。東北農政局は「職員が逮捕されたことは非常に残念。再発防止を図りたい」としていたが、改めて反省し、襟を正すべきだ。
通常、公務員が取引業者と応接する場合は、受付カウンターや適切な場所で複数の農政局職員で対応することになっている。しかし、今回の調査では現役の職員はOBと2人きりで対応していた。非公開の技術提案書も事務所の机の上に置かれていたことが明らかになった。ずさんな管理と言わざるを得ず、早急に改善すべきだ。
ゼネコンが農水省OBを再就職で受け入れる背景には、公共事業などの情報を取りやすくする狙いがあるのではないかとの指摘がある。それだけにOBとの関係は、特に慎重であるべきだ。調査では、仙台市内に事務所を構える農政局OBの親睦団体がゼネコン各社の受注調整に関与した事実は確認できなかったとしたが、「李下(りか)に冠を正さず」である。
同省は農業土木で多くの公共事業を発注する。農業農村整備事業の入札契約に携わる全国の地方農政局職員らに対し、同様の事案の有無について聞き取り調査を行うとしているが、総点検を行って国民の不信を払拭(ふっしょく)すべきだ。
政府役人の不祥事が続いている。農水省の不祥事は、農政不信にもつながるものだ。省を挙げて綱紀粛正に取り組む必要がある。
2018年06月28日
地域の新着記事
[活写] 競演 30万株
岐阜県揖斐川町の大洞地区で、地元農家が育てた30万株のユリが見頃を迎えている。畑や牛の放牧地だった約3ヘクタールに、オリエンタルユリやスカシユリなど60品種が咲き誇る。農家が3月に球根を植え、除草や施肥に打ち込んできた。
観光客を呼び込もうと1994年に始め、昔の村名から「谷汲(たにぐみ)ゆり園」と名付けた。当初は農家以外も含む25人で管理していたが、今は高齢化などで3人の農家だけになった。今年の植え付けは岐阜農林高校の生徒20人ほどが手伝った。
6月上旬から7月中旬の見頃に約2万人が訪れる。同園会長の山岸保明さん(84)は「ユリの虹のような彩りを楽しんでほしい」と話す。開園は16日まで、入園料は大人500円など。小学生までの子どもは無料。(富永健太郎)
2018年07月02日
梅雨前線異常あり
いつもと違う不安定な梅雨に、全国各地の農家やJAが困惑している。梅雨がないはずの北海道では梅雨前線が停滞し、異例の日照不足と低温、長引く降雨で、梅雨のような天候だ。一方、空梅雨・猛暑が続く地域では、人間だけでなく、家畜も“ばて気味”だ。梅雨前線が例年より北に位置するため、雨の多い地域と少ない地域の差が大きい。体調や農産物の管理への注意が必要だ。(猪塚麻紀子、尾原浩子)
日照不足牧草乾かず 北海道“ブルブル”
平年に比べて大きく天候が異なるのが北海道だ。長沼町で大豆などを18ヘクタール栽培する向信勝さん(70)が、悲しそうな顔で圃場(ほじょう)を見つめる。通常なら青々として5センチ以上生育しているはずだが、今年は発芽したばかりの大豆もある。
「5月は干ばつ傾向だったが、一転して寒く、晴れ間がなくなってしまった。大豆の生育は半月以上のばらつきがある。50年農業をしていて、こんなことは初めて」と向さんは話す。
同町で90ヘクタールの米や大豆を栽培する柳原光恵さん(66)も「牧草が乾燥しないので収穫できない。稲は低温障害で黄色になってしまった」と嘆く。農家は7月の気温上昇と晴天を願っている。
気象庁によると、北海道の広い範囲で、27日までの20日間の平均気温が平年に比べて2度以上も低かった。降水量は平年に比べて多く、4倍以上の雨量だった地域もある。日照時間は道全域で平年を下回り、平年の半分に満たない地域も多い。
九州南部では、27日までの10日間の降水量が、平年の3倍以上降った所もある。既に梅雨明けした鹿児島県のJAあまみ知名事業本部は「5月は空梅雨だったのに、6月に入ると一転して雨が続いた。こんなに極端なのは珍しい」と驚く。
人も家畜もばて気味 北陸など“カラカラ”
山陰や北陸では平年の半分以下しか雨が降っていない地域が目立ち、高温、空梅雨傾向が続く。富山県南砺市で花きなどを栽培する百生真さん(32)が「梅雨はどこに行ったかと思っていた。農作業がはかどらないし、体力的にきつい」と困惑する。百生さんによると、この1週間はまとまった降雨がなく真夏のような晴天が続いたが、やっと28日午前中の短時間、強い“恵みの雨”が降った。それでも、気温が高く農作業にはつらい日が続く。
気象庁によると、東北、関東甲信、北陸、山陰などで、27日までの5日間の平均気温は平年を大きく上回り、富山市や金沢市など、平年に比べ3度以上高い地域もある。
福島県会津美里町の酪農家、福田正幸さん(49)は、蒸し暑さで牛の乳量が1頭当たり平均2キロも減ってしまった。
福田さんは「ここ1週間急激に暑くなり、人間だけでなく牛もうんざりしている。牛は呼吸も荒く、汗ばんでいる」と訴える。
降水量 地域差大きく 熱中症注意を
気象庁によると、北海道の梅雨空の要因は、平年に比べて梅雨前線が北寄りに位置し、北海道付近で停滞しているため。本来なら梅雨真っ盛りのはずの地域で雨が少なく、北海道で雨が多い現象となっているという。
気象庁は「降水量が極端に少ない日本海側など地域と、極端に多い北海道など、地域の差が出ている。農作物管理に気を付けてほしい」(気候情報課)としている。
不安定な天候の時期には、熱中症の危険が高まる。信州大学医学部の能勢博特任教授は「湿度が高い日は汗が蒸発しにくく熱中症に注意が必要。特に、涼しい日が続いて急に高温になったときは、体が汗をかきやすくなってないので気を付けて」と警戒を呼び掛ける。
農家は1人で作業を行うことが多く「人目がないところで症状が出たときに対処が難しい」(同)ため、家族や従業員同士での体調管理、チェックも必要だ。
2018年06月29日
イメージ変えて 「子ども食堂=貧しい」?
家庭の事情で、1人で食事を取る子どもに低額や無償で食事を提供する「子ども食堂」が、全国各地で急速に広がる一方、「子ども食堂=貧困の子どもが行く所」とのイメージや、運営上の課題で休止に追い込まれるケースが出ている。子ども食堂の数はまだ足りておらず、専門家からは「見学してもらうなどしてイメージを変え、地域の交流拠点となるよう支援が必要だ」との声が上がっている。(三浦潤一)
親の“誤解”が壁 群馬県太田市
昨年度、行政として初めて直営の子ども食堂を設置した群馬県太田市は、手応えと同時に課題を実感している。市内15カ所の児童館で隔週で開催。カレーライスを100円で提供したが、一部で利用が広がらなかった食堂もあったためだ。場所によって年間利用人数に3倍以上の開きがあり、100人に満たない所もあった。
市児童施設課の担当者は「子ども食堂というと、貧しくて食べられない子どもが来るというイメージがあり、気軽に利用しにくい保護者も多かった」と明かす。市は、市内全域に食堂を設けて運営することでイメージを変えようとしたが、払拭(ふっしょく)までには至らなかった。
アンケートから、保護者に送迎されてくる子どもが多かったため、下期から保護者の利用も可能にするなど利用を促したが、大きくは伸びなかった。ある程度定着はしてきたものの、15カ所で年間計1556人の子どもと保護者の利用にとどまった。ただ、子ども食堂は「共食の場の提供に必要」(同市)として、今年度、既に直営をやめ、今後は民間支援に切り替える。市が直営で運営するフードバンクから食料も支援していく考えだ。
地域交流拠点に いばらきコープ
「昨年の7月以降は毎回50人以上の子どもたちが利用した」と手応えをつかむのが、茨城県のいばらきコープだ。
16年から下妻市をはじめ県内4カ所で月1回、子どもに共食の場を提供する「ほぺたん食堂」を運営する。旬の野菜を使った料理が食べられ、親も来店できることで親同士の情報交換の場にもなっており、好評だ。組合員が主体となって地元の高校生も手伝いに加わり、食材はコープ商品の他、JA常総ひかりやJA北つくば、JA土浦、JA全農いばらきが支援する。
同コープで食育を担当する総合企画室の棚谷靖之さんは、地域に定着する鍵について「組合員主体で多くの団体や人を巻き込み、地域の交流拠点になっている。保険加入や衛生研修で安全・安心にも気を使っている」と分析する。万一のけがなども組合員保険を適用。保健所から講師を招いて研修を行うなど衛生面に特に注意を払う。今後もJAと協力しながら、活動を広げていきたい考えだ。
保険加入で安心確保を
■子ども食堂に詳しい法政大学の湯浅誠教授の話
子どもが集まらなかったり、支援が集まらなかったりして、食堂の運営が休止に追い込まれるケースは多い。
幅広く地域に開放することが望ましく、人と人とが触れ合う温かい場所をつくり、交流の中で子どもの問題を発見してあげることが大切だ。マイナスのイメージを払拭するには、保険加入で安全・安心を確保し、自治体だけでなく地域との連携を強める必要がある。
厚生労働省の調査(2015年)では、17歳以下の子どもの貧困率は13.9%で、子どもの7人に1人が貧困世帯で暮らしている。全国の子ども食堂運営者らでつくる「こども食堂安心・安全向上委員会」の調査によると、貧困や地域のつながりの希薄化を受け、子ども食堂の数は現在、16年の7倍の2286カ所に増えた。
2018年06月28日
いよいよ小菊出荷へ 震災後初、来月下旬から 福島県飯舘村
東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で営農が困難になった福島県飯舘村で、7月下旬から原発事故後初となる小菊の出荷が始まる。JAふくしま未来が県と協力し、昨年に試験栽培し、出荷に向けて検討してきた。営農再開の柱となる品目とあって関係者の期待は大きい。
2018年06月28日
ミツマタ 産地再興へ挑戦 中国・四国
輸入品に押され生産減少の一途をたどる、和紙原料のミツマタ。主産地の中国・四国地方では再興を懸けた新たな挑戦が始まっている。省力化に活路を見いだそうとする動きや獣害対策として栽培に取り組む他、紙以外の用途として加工品の開発で新しい価値を生み出している。(柳沼志帆)
紙幣原料 自給めざす 島根県松江市
島根県松江市の福頼貴司さん(63)は、「“国の顔”くらい国産で作ろう」と、2年前からミツマタ栽培を始める。日本の紙幣の原料の多くが外国産だということをテレビ番組で知って、衝撃を受けたのがきっかけだ。ラーメン店を営む中、第二の人生に林業を考えていた頃だった。
同県は古くからの産地で、紙幣原料として国立印刷局にミツマタを「局納」してきた。ただ、収穫時期は寒さの厳しい冬で、出荷するには手作業で枝を蒸して黒皮を剥ぎ、水に浸す必要があるなど重労働で、生産は減少していた。
福頼さんは産地を復活させようと、持っていた杉林を間伐。現在は約1万4000本を管理する。少しでも作業を楽にしようと機械化も思案中だ。「省力化できれば若い人も興味を持つはずだ。花が美しいので、花見コースも作って観光客を呼び込みたい」と展望を語る。
鹿の食害気にせず 徳島県那賀町
徳島県那賀町の林家らでつくる木沢林業研究会は、2013年から栽培を始め、現在25ヘクタールに植樹する。杉やケヤキは柵で囲っても鹿の食害に遭っていたが、自生していたミツマタは食べられないことに着目。雨などで林業の仕事ができないときの作業にもなると考えた。
昨年には新たに作業場も建設した。亀井廣吉会長は、手作業で手間のかかる仕事が多いため、産業として成り立つには「局納価格の引き上げが必要」と指摘する。その上で、「自分たちが栽培したミツマタが紙幣になるのは誇り。那賀町の一大産業に持っていきたい」と意欲を示す。
美容液 新しい用途に 岡山県真庭市
岡山県真庭市で米の販売やガソリンスタンドなどを経営する(株)エイチケイ商会は、岡山理科大学との共同研究で、ミツマタの抽出液にメラニン生成抑制効果があることを突き止め、世界で初めてミツマタエキス配合の美容液を商品化した。
ミツマタは同市の伝統産業である和紙の原料。ギフト商品用に和紙を使っていた同社が産地の窮状を知り、新商品の開発に乗り出した。
美容液は、寒さの厳しい時期にも作業をする紙すき職人の手がきれいなことから着想。「結の香ホワイトセラム」と名付け、ホームページなどで昨年10月に発売。30ミリリットル8640円で販売し、40~70代女性から人気が高く、既にリピーターも付いているという。同社の内藤靖史会長は「新しい用途ができたことで、伝統を守る一助となればうれしい」と力を込める。今後はせっけんなど他の商品も開発する考えだ。
同市の美和局納三椏(みつまた)生産組合の山崎茂さん(67)によると、かつてはミツマタと炭で生計を立てていたが、輸入増加などで市内の生産量は最盛期の20分の1程度だという。それだけに「化粧品ができるなんて半信半疑だったが、素晴らしい。生産にも張り合いが出る」と気を引き締める。
生産量10分の1
日本特産農産物協会によると、ミツマタの生産量(黒皮換算)は、16年が10年前と比べ10分の1の29トンまで減少。白皮で見ると9・4トンしかない。
国立印刷局では、徳島、島根、岡山などから、白皮を1キロ当たり約3000円で購入。ここ数年は白皮8トン前後の取引で推移しているが、外国産と比べ価格が4倍に上ることから「現状を維持していく」(広報官室)考えだ。
2018年06月26日
トウモロコシ盗難防げ 手拭いで識別抑止に手応え 静岡県森町
連携強化 素早く対応 生産者・県警・JA遠州中央
静岡県森町で、生産者、県警、JA遠州中央の3者が協力したトウモロコシの盗難防止対策が効果を上げている。年間数百本単位で盗まれていた被害が取り組みを始めた2017年の収穫シーズン(5月下旬~8月)は、2件6本に減少。今年も20日時点で1件の被害に抑えている。生産者がそろいの手拭いを身に着けることで、圃場(ほじょう)に侵入した部外者をひと目で特定するなど三つの対策が被害を抑制した。
対策は、①生産者ごとに定めた番号を記した識別カードを圃場入り口に掲げる②生産者は指定の手拭いを身に着ける③作業車両に指定のマグネットシートを貼り付ける──こと。
圃場に番号を付けることで、万一不審者がいた場合は、どの圃場かがすぐに分かり、通報もしやすい。生産者相互や、パトロールする警察官らが誰の圃場かがすぐに特定できる。農家が身に着ける手拭いなどの資材は、県警袋井署が無償で提供した。
JAは、不審者を発見した場合、速やかに生産者と連絡を取れるように同署に生産者の連絡先を伝えている。県警は、狙われやすい時間帯の夕方から未明までの夜間パトロールを強化する。
5月中旬には3者と同町職員らが集まって今年の対策会議を開き、方針を共有した。警察は、不審車両を見つけたら、その時間帯や車両のナンバーを控えることや、圃場への侵入をしづらくするネット、柵、電灯などの設置など取り組みの強化を呼び掛けた。
同署の望月康生・森担当次長は「生産者が苦労して育てたものを盗むのは許せない。3者が共通認識を持つことで、スムーズに対策ができるようになった」と話す。
JA森営農センターの小栗清人センター長は「対策で大きな効果が出ている。連携してさらに強化を図り、農家の所得を守りたい」と気を引き締める。
2018年06月23日
大阪北部地震 農業被害あらわ あぜ崩れ、ため池亀裂
大阪府北部を震源とする地震の発生から一夜明けた19日、行政やJAは農業被害の情報などの収集に追われた。揺れが強かった大阪府や京都府では水田のあぜが崩れたり、ため池が壊れたりする被害が発生した。調査・確認できた範囲はまだ限られており、被害はさらに広がる可能性がある。
2018年06月20日
大阪で震度6弱 M6・1 道路陥没、火災も
18日午前7時58分ごろ、大阪府北部を震源とする地震が発生し、大阪市北区や同府高槻市などで震度6弱、京都市などで震度5強の揺れを観測した。気象庁によると、震源の深さは13キロ、地震の規模(マグニチュード=M)は6・1と推定。多数の死傷者が出た他、各地で、道路が陥没するなどの被害が発生した。JAなど農業関係者も、被害状況の把握に追われた。産地からは、今後の降雨による土砂災害への懸念の声が上がる。
2018年06月19日
[あんぐる] 里で瞬く星に願いを 竹棚田の火祭り (福岡県東峰村)
昨年7月の九州北部豪雨で農業などに大きな被害が出た福岡県東峰村で9日、「竹棚田の火祭り」が行われた。棚田は、いまだに一部が耕作できない状態だが、地域住民が復興への願いを込めて今年も催した。同村竹地区にある水をたたえた水田に約1200本のトーチをともし、集まった観光客らを魅了した。
2018年06月17日
皮使って “ジビエ家具” 岐阜県高山市・牧野泰之さん
岐阜県高山市の家具職人、牧野泰之さん(48)が地元の猟師と連携し、イノシシや鹿の革製品の商品化を進めている。飛騨高山地域の野生鳥獣の肉(ジビエ)の皮を加工し、クッションや椅子などの家具に利用する。昨年から生産を始めた飛騨牛の革製品と合わせて「HIDA Leather(ヒダレザー)」のブランド名で、売り出す計画だ。
同市内には解体処理施設が複数あり、肉の活用は進む一方、骨や皮の多くが廃棄されている。これまでナラ材や飛騨牛の革など、地元の素材で家具を作ってきた牧野さん。「地域の資源を有効利用したい」と狩猟関係者に声を掛け、皮を提供してもらうようになった。
試作では高山市の猟師、今井猛さん(68)がさばいたイノシシと鹿の皮を県外の業者に委託し、なめし加工した。現時点で、染料なしで革を白く仕上げる「白なめし」と、黒系、茶系の3種類を試作。今後は、クッションや椅子に使う予定だ。牧野さんは「野生ならではの色むらや傷も魅力。飛騨の新たな特産にできるよう、事業を練っていく」と意気込む。
2018年06月14日