水道管など様々な水路を流れる水を活用する「マイクロ水力発電」の導入が増えている。エアコンやベアリングで培った技術を生かして機器の小型化が進展、設置コストが安くなった。見捨てられていたエネルギーを無駄なく使うには、水利権などの制度見直しも必要になる。
(日経ビジネス2018年4月23日号より転載)
京都府長岡京市北ポンプ場にある「水道管」が2018年4月、発電所へと変貌した。秘密は、水道管と水道管をつなぐように設置したダイキン工業製の「マイクロ水力発電システム」。管の中を流れる水の力で水車を回し、年間18万4000キロワット(kW)時の電力を生み出す。この設備だけで、一般家庭56軒分の電力を賄える計算だ。
マイクロ水力発電は、出力およそ200kW以下の小規模な発電システムのこと。小水力発電と呼ぶ場合もある。水道や河川などの「弱い水流」を効率的に電気に変えられるのが特徴だ。巨大ダムを利用した水力発電所と比べて規模は極めて小さいが、神戸市や富山県南砺市など全国の自治体で導入が相次いでいる。
背景には2つの要因がある。まずは国策。16年に閣議決定された政府の「地球温暖化対策計画」では、「上水道において小水力発電などの再生可能エネルギー発電設備の導入を実施する」とした。FIT(固定価格買い取り制度)の対象にもすることで、マイクロ水力発電の普及を後押しした。
これにダイキン工業やNTN、リコーなどが呼応。発電機の小型化を進めたことで設置コストが安くなり、少ない発電量でも採算が取れるようになった。
ダイキン工業の場合、比較的小型な22kWのシステムの設置コストは3000万円ほど。同社がマイクロ水力発電専門の子会社として17年に立ち上げたDK-Power(大阪府吹田市)の松浦哲哉社長によると、「FITを利用すれば、5~10年ほどで(設置コストを)回収できる見込み」だという。
リコーも19年度中の事業化を目指し、静岡県の河川で実証実験を繰り返している。導入コストを数百万円に抑え、「短期間で回収できるように、水車を樹脂製にするなどコストダウンを図っている」と、エコソリューションズ事業センターの出口裕一所長は語る。
ダムなどを使う旧来の水力発電では「大がかりな土木工事が必要になるため、導入費用は数億円かかるのが当たり前だった」。こう話すのは、東京電力ホールディングス(HD)傘下で水力発電の導入や運用などを手掛ける東京発電の濱田督子氏だ。
ところがマイクロ水力なら初期費用が抑えられるうえ、売電収入も見込めるため投資を回収しやすい。だからこそ、財政が厳しい自治体が相次いで導入しているのだ。
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