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PTA退会、子どもに制裁 集団通学“追放”学校は傍観

学校の裏門から出てきたわが子を車に乗せる女性。PTA退会の制裁として、集団通学から“追放”された

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 くらし調査隊にメールがもたらされた。「PTAを退会したら、子どもが地域の集団通学から外された」-。岐阜県西濃地方の小学校に二人の子どもを通わせる四十代の女性の声だ。退会をめぐる大人の事情はあろうが、その制裁が子どもに向かうとは。現場に向かった。

 全校一斉下校の日。他の児童が地区ごとに班を作り、南の正門から帰る時、まず低学年の弟が裏門から出てきた。やがて高学年の兄も。車で家に向かう。便乗した記者に女性は言った。「こんな扱いをされて一年が過ぎました」

 きっかけは二〇一五年、女性がPTA退会を申し出たこと。当初、女性は委員を務めるなどPTAに協力的だったが、「平日昼にも集まれと言われ、仕事も辞めて…」と“PTA離職”に追い込まれた。PTA幹部はさらに求めた。「○○委員長になるクジを引いてほしい」。女性は恐れた。「もう限界。自分も家庭も壊れてしまう」-。

 ネットで調べると、同じ悩みにあふれていた。その中で女性は知った。「PTAは任意団体で、退会も自由」「全児童のための団体で、非会員への不利益があってはならない」

 女性は意を決した。「プール掃除などできる協力はするので退会したい」。だが、PTA幹部の言葉は女性にはどう喝に響いた。「子どもを産んだ以上、PTAは義務だ」。他の幹部も言った。「地域に居づらくなる。子どもがいじめられる原因になる」。そして「退会後は、何らかの『区別』は表れる」と宣告。そのひとつが集団通学からの“追放”だった。

 学校、市教委とも「任意団体であるPTAに助言はできても、指導する権限はない」。児童は平等と認めながら、PTAの動きは止めなかった。諸行事の運営をPTAに支えられている学校としては、強くものが言えない構図がある。県教委も「市立校に立ち入れない。解決への祈りを込めて見守る」と対岸の火事を見るようだ。

「子供を産んだからにはPTAも義務なんだよ!」。PTA幹部の罵声を女性はメモに書き留めていた

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 「働く母親が増えたのに行事で仕事を休み、家計は圧迫。役職も押しつけ合っている。このままでは、PTAは子どもを差別し、家族を不幸にしかねない」と女性は恐れている。

    ◇   ◇    

 子どもの健やかな育成のため発足したPTA。その功績は大きいが、近年、各地でPTAをめぐるトラブルも。「私も経験が」「実はこう思う」という話をお寄せください。メール=chousa@chunichi.co.jp=は件名に「PTA係へ」と記入を。

 (三浦耕喜)

 

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