当館寄託の日本最大級の古地図コレクション「守屋壽コレクション」の第3回目の展示会。今回は,新発見の伊能忠敬の日本地図など幕府の日本地図を中心に,地図づくりの進歩の様子を,コレクションに新たに加わった資料を交えて紹介します。併せて,県内には他に例がない安芸国絵図や備後国絵図のほか,広島城・福山城下の古地図も紹介し,その上で,江戸時代の地図づくりが,時代を生きる人々に利用され,また,人々の暮らしを支えていた様子を紹介します。
本展示会は,次の六つの章で構成されています。
江戸時代の泰平の世の中は,地図の発展と普及が欠かせませんでした。ここでは,泰平を享受する人々の様子と共に,江戸時代の人々に利用された地図を紹介し,当時の人々の生活に地図が不可欠であった様子を概観します。
祭礼図屏風から祇園祭図(部分) 江戸時代
江戸時代の地図づくりについて,強大な権力を背景に,その時々の最先端の地図を作製していた幕府の地図づくりに注目します。江戸時代以前の行基図,江戸時代前期・中期・後期の幕府の日本地図,初公開の伊能図や徳川吉宗の日本地図も紹介します。
初公開の文化元年伊能図(部分) 1807年写し
本コレクションに収集された,国絵図・城下絵図のうち,広島県にゆかりの古地図を一挙に公開します。なかでも江戸時代前期の「正保国絵図」の写本と見られる「安芸国絵図」は,タテ3メートルとヨコ4メートルの巨大な地図で,今回が初公開です。
初公開の安芸国絵図
安芸国絵図に描かれた宮島
諸藩が作成した国絵図は,その後,実用・観賞用など様々な形で利用・活用されています。これらの地図は各藩のみならず,民間でも作成されました。本章では,装飾品,調度品に利用された国絵図,領内の統治に活用された実用的な地図,刊行され流布した地図を紹介します。また,初公開となるコレクション所蔵の城下絵図も一挙公開します。
大坂冬の陣図
大坂冬の陣図に描かれた「真田丸」
19世紀に入るころになると,泰平の世の中は動揺を始めます。幕府は蝦夷地を直轄支配地とし,蝦夷地の情報を収集するために現地の測量や探検調査を行っています。
本章では,当時の探検家たちが出会い記録したアイヌの人々の風習を紹介し,また新たな時代の要請の中で作られた蝦夷地の地図を紹介する。特に,幕末に松浦武四郎が作成した「東西蝦夷山川地理取調図」は1万か所もの地名が書かれた詳細な地図です。
平沢屏山(ひらさわびょうざん)画 蝦夷神祭図(えぞしんさいず)
開国後,幕府はこれまで公開してこなかった伊能忠敬の日本地図を基に,最初で最後の公式な日本地図の刊行を行いました。この地図は明治政府にも受け継がれ,この後,伊能忠敬の地図が本格的に活用されるようになります。ここでは,幕末に刊行された「近代」の地図のさきがけとなった刊行伊能図を紹介します。
会 期 :平成30年7月19日(木曜日)~9月24日(月曜日・休日)
休館日 :月曜日(9月17日〔敬老の日〕・9月24日〔振替休日〕を除く) ,9月18日(火曜日)
開館時間 :午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
一般 700円(560円),高・大学生 520円(410円),小・中学生 350円(280円)
※( )は前売入館券及び20名以上の団体
次の方は入館料免除になります。
※身体障害者手帳・戦傷病者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳(障害者手帳)の交付を受けておられる方
※校長が学校教育活動であることを証明した小学校・中学校・高等学校及び特別支援学校の児童・生徒
【前売入館券・取扱所】
啓文社(コア福山西店,コア春日店,Books Plus緑町,ポートプラザ店,コア神辺店,新浜店),ガレリア・レイノ福山店,フジグラン神辺,福山ニューキャッスルホテル(ベッセル),イトーヨーカドー福山店1Fサービスカウンター,御菓子所勉強堂(本店・南蔵王暢適庵,川口暢適庵,駅家暢適庵,戸手暢適庵,東尾道暢適庵),JR福山駅観光案内所(福山観光コンベンション),エディオン広島本店プレイガイド,天満屋福山店4Fプレイガイド,ひろしま夢ぷらざ(広島商工会連合会),中国新聞備後本社,友の会
開催記念講演会(1)・博物館大学第2回
日 時 :7月21日(土曜日)午後2時~午後3時30分
演 題 :江戸時代の測量と地図づくり
講 師 :川村 博忠(かわむらひろただ 元山口大学教授)
開催記念講演会(2)・博物館大学第3回
日 時 :8月11日(土曜日・山の日)午後2時~午後3時30分
演 題 :地図が支えた江戸時代
講 師 :上杉 和央(うえすぎかずひろ 京都府立大学准教授)
開催記念講演会(3)
日 時 :9月22日(土曜日)午後2時~午後3時30分
演 題 :江戸時代の地図の発展と新出の伊能図
講 師 :久下 実(くげみのる 当館主任学芸員)
「伊能忠敬の測量を体験しよう」
日 時 :会期中随時
参加費 :無料
日 時 :7月22日(日曜日),8月5日(日曜日),8月26日(日曜日),9月23日(日曜日・秋分の日)の午後1時30分から2時30分まで
解 説 :当館学芸員