LIVE "Blue Field"とMMD
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LIVE "Blue Field"とMMD

2013-12-02 19:19
  • 9
2013年12月1日 Zepp東京にて行われたアニメ『蒼き鋼のアルペジオ - アルス・ノヴァ -』Live "Blue Field"。

(ホリプロ音楽事業部@horipro_music Twitterより引用)

 MMD映像制作班として参加しました。
 当日は緊急バックアップ要因として、関連データを持ってスタッフ参加──ですが、特にトラブルもなく、私は煙草を吸うかリハを見るかだけでのんびりと過ごさせて頂いてしまいまちた。

 私の知る限りでは、ボーカロイド系などのイベントではMMDの活用が多くなっていますが、アニメイベントでかつキャストさんと同じ舞台で使用するMMD映像というのは、初の試みかもしれません。
 正直、どうなるかは不安ばかりでした。
 何せニコニコ動画などを普段から見てる人にはMMDという言葉も浸透しているようですが、一般の方からすれば、単なるチープなCGにしか見えないだろうというのは容易に想像できるからです。
 この企画自体、そういう部分も含めて結構なチャレンジでした。
 MMD部分などは、まず批判ありきで私などは考えてました。なので事前告知部分でのMMD使用も怖かったですし、しかも会場には予想以上の大きさのLED映像パネルでしたので、「こりゃ耐えられるかな……」とリハの時などは、このまま逃げてしまおうかとも思い至ります。

 結果としての評価は……どうなんでしょうか。既に手が離れて終わった事ですし、様々な意見もあるでしょう。
 ここではそれには触れず、個人の感想やら反省点などをメモ代わりに記しておきます。


■ ライブの感想
 音響はエンジニアの方の腕で大分変わりますが、Zepp自体の箱鳴り(音の響き方)は旧Zepp大阪と同じ構造なので、聞きなれた感じでした。そのZepp大阪も引っ越してしまいましたが。
 安定した音鳴りでした。
 今回は生バンドではなくオケによるライブですので、どこまでライブ感出せるのかな?という素朴な疑問がありましたが、リハでは音楽プロデューサーの方とエンジニアの方が綿密に調整を行っていたのもあり、かなりライブ感あふれる音に仕上がっていました。
 残念ながら本番中は2F席側でしたので、お客様が入った状態での状態は確認できませんでしたが、それでも十分に音圧があった感じです。

 照明も、予想よりも多くの灯体があり、最新のLED照明を駆使していました。映像LEDパネルと近い配置の所もありましたが、逆に色々照明に助けられて映像が活きた場面も多かったです。
 タイミングもバッチリで、恐らくフロアで見てたら感動的なステージだったでしょう。2F席からでも十分にシーンが作られているのが分かりました。

 映像は正面LEDパネルがステージ正面横幅一杯くらいまでドーンとあり、センターにPV、左右サイドに生カメラ映像が映るというシステムでした。
 例えばイオナが歌ってる時はPVでイオナのアップ、その両サイドには実際に歌っている渕上さんが写ってるという感じです。
 生カメラ部分はかなり縦長に割られていたので、カメラマンも大変だったろうな……と。
 しかもセンターにMMD-PVが写ってるので、何だかこう言い様の無い奇妙な感覚ではありました。


■ MMDとLEDパネル(テクニカル部分について)
 私の勝手な予想では照明が従来からある電球タイプ(パーライト)系かと思ってたので、映像パネル側の自己主張が強くなりすぎるのではないか、という不安がありました。が、灯体自体は最新のLED照明が主でしたので杞憂に終わりました。
 MMDは、特に意識しなければRGBのフルスケールで作られており、かつエフェクトの掛け方次第ではコントラストもガンマも、結構極端になりがちです。
 一応納品直前には標準的なカラーグレーディングに微調整しましたが、あとは現場のスタッフさんにお任せするしかありません。
 心配は杞憂で、恐らく強く発光しないようにパネル出力も3割方抑えられてのもの。更にはステージ上のキャストの邪魔にならないくらいまでバランスを取ってくれていました。
 映像班にも感謝です。


■ MMDによるライブ用PV
 今回の私の役割はMMD班の制作進行と2曲作成、および告知動画制作でした。
 ここでは担当した2曲について軽く触れてみます。

"Blue Field"
 ライブタイトルでもあるこの曲は、ライブのOPを飾る事となりました。アニメ本編ではEDですが。
 モーションはトレース。モーション作成は、左手側から

タカオ=沼倉さん=あひるP
イオナ=渕上さん=かんな
ハルナ=山村さん=背中P



となっています。

 キャストさんのそれぞれの個性が出てる動き、更にはトレースした担当者がそれぞれバラバラという所で、面白く感じて貰えるか、それとも逆効果なのかは勝負所ではありました。
 告知では1~2コーラスでしたが、もちろんライブではフルコーラス分のモーション。
 背景はお茶会空間(仮称)を使用。これはライブだけの使用であれば(照明とキャストが見栄えするよう)黒バックで、ほぼ正面のみのカメラでもよかったのですが、Blu-ray特典にも入るので、単独で見ても成立させるために必要な演出でした。
 お茶会空間は何気に始まりの場所でもありますからね。また円形ステージなのでアングルの自由度も高く、かつ柱が良い感じで演出として使えるからという理由もあります。お茶会空間自体は自作しました。

 シェーダーについては既にブログの方で触れつつあるので、ここでは割愛。

 担当したイオナですが……イオナは腕がかなり短く、さらにはロングヘアで横髪も長い。胸が小さいから大丈夫かなと思ったら、意外とあるんです。
 なので横髪やらの物理挙動にはかなり苦労させられました。これはイオナだけでなく、タカオやハルナにも言えます。

 さて、そんな小柄なイオナですが、腕の振り方と表情にも悩まされました。表情は特に無表情のままともいかず、かといってコロコロと表情が変わるような子でもありません。対して渕上さんは表情豊かな方なので、さて、どっちに合わせたものかと……。
 結局は足して2で割った感じです(どちらかというとイオナ寄り)
 何となく素朴感がありつつも、無意識のあざとさが出てればいいなと。

 ライブ用でもあるのでシーンの切り替えは無しで、純粋にダンスPVとしてシンプルな構成にしてみました。
 あとはカメラアングルとサイズでごまかしごまかしです。この辺りはいつもの私のやり口ですね(笑)

"Dawning Light"
 いわゆる嫁曲です。金剛さんもコンゴウ様も戦艦 金剛も好きな私としてはコンゴウずくめですので力を入れたかった……のですが、力及ばずです。
 反省点・課題が多く残ったPVとなってしまいました。
 が、限られた範囲の中でも、可能な限り色々な要素を詰め込むのと同時に、テクニカル面でも色々と試行錯誤できた作品でもあります。
 構成はよくあるパターンではありますが、ストーリー仕立てのPV。
 1回目の視聴、つまりライブでは分かりやすく、Blu-Ray特典で2回目以降を見ると様々な捉え方ができるように構成したものです。特に曲終わり部分は少なくとも3種類の解釈ができるようには……したつもりです。

 『コンゴウ』モデルは非常に出来がよく、美しい造形です。キレ美人でもありますし、ああ見えて表情モーフも豊かだったりします。
 厄介なのは横髪と腰回り(ナイスバディなので、ドレスとの兼ね合いが難しい)でしたが、この辺りはPironさんとやりとりして解決していきました。
 お蔭でほぼ不動状態のコンゴウ様ではあるものの、存在感は出せたのではないかと思っています。
 もっとも、ライブではゆかなさんの存在感と声量がそれ以上でしたが……(笑)

 ゆかなさんとはごあいさつ程度の会話しかできなかったので、映像をどう解釈されたかは聞いてみたかったな、という心残りができてしまいました。

■ その他の曲など
 各担当の人からの話が良いでしょう。
 既に背中さんがブロマガに記事を書いていましたので、そちらをどうぞ。

http://ch.nicovideo.jp/senakap/blomaga/ar401981

■ 良くも悪くもMMD
 映像LEDパネルは、ディラッドやスクリーン投射に比べてドットピッチは荒いものの、客席から見る距離からすれば比較的シャープに表示されます。更にBlu-rayではモニタやTVで高解像度で映ります。
 MMDは、Shadeや六角大王以上に出力に癖があります。いわゆる”MMDくささ”というのがありますね。
 Toonシェーディングの結果はシェーダーによってコントロールできても、ポリゴンの見え方やエッジ処理、影、光源などでMMDくささというのが出てしまいます。
 これが良と出るか悪と出るかはわかりません。もう6年近くもMMDを弄ってるものですから、一般的な見方は難しくなっています。

 またサンジゲンさんの技術の結晶とも言えるセルルックレンダリングと比べられてしまう訳です。
 勝ち目はありません(笑)
 もっとも、MMD班スタッフの間では冗談めかして「サンジゲンの松浦社長を驚かせようぜ」という意気込み(だけ?)ではやっておりました。
 もちろん、雲泥の差はあります。が、現状でどこまで近づける事ができるかというのは課題としても良いものでしたし、現在も継続中です。
 一般の方向けの商品でもありますし、当然”MMDだからちかたないね”という言い訳も通用しない状況の中、どう結果に繋がるかはBlu-ray発売後の評価次第かもしれません。

 手が届かないなりにも、MMDには3DCGの理解しやすい基礎があり、可能性も増え続けています。
 6年近くが経ち、動画制作者も増え、ニコニコ動画の登録数も増え続ける中、MMDでの限界、のようなものを感じてる人も居るようですが、現時点ではようやく環境が安定しつつある段階にやっとたどり着いたようなものです。
 特に表現としてのMMD利用はまだまだよちよち歩きから、ようやく2足歩行になるかという段階ではないか、と私などは考えます。

■ 最後に
 今回の企画のMMD班だけでなく、様々な方のご協力の元、完遂する事ができました。心より感謝します。

ステージ・アクセサリ関係:カブっP、Drummasterさん、PACさん、額田倫太郎さん
エフェクト関係:Lessさん、ビームマンP、そぼろさん、針金さん
そして、樋口さん、moggさん、舞力介入P、極北P

 今回の機会を与えて頂き、根気よく対応して頂いた、サンジゲンの松浦様、音楽プロデューサーの西辺様、アニメプロデューサーの南様、フライングドッグの方々に御礼申し上げます。

 そして何よりも今回の切っ掛けになったゲーム『艦隊これくしょん ~艦これ~』にも感謝を。レンダリング中の癒しにもなりました。


 ライブイベントは終了しましたが、アニメの展開は今週から佳境に入るようですし、Blu-ray/DVD発売、キャラソンアルバムも配信販売、上映会、艦これとのコラボイベントなど、色々続くようです。
 私の役割は一端終わりますが、一視聴者として皆さんと一緒に楽しもうと思います。

 では、私はこれで…(cv:名取)
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