メイ英首相、EU治安維持スキームからの離脱に懸念
テリーザ・メイ英首相は28日、欧州連合(EU)首脳会談に出席し、EU離脱で英国がEU加盟国の治安維持をめぐる合意から除外された場合、英国民の安全が損なわれると警告した。
英国は、EUの交渉官が2019年3月の離脱以降、英国をテロリストの追跡や情報共有の合意から外そうとしていると指摘している。
EU側は、英国は「第三国」になった時、現在と同じように治安維持イニシアチブにアクセスすることはできないとしている。
ブリュッセルで行われている首脳会談の夕食会の席でメイ首相は、英国の法執行スキームへの参加を妨げるのは、テロに対抗する能力を削ぐことになると話した。
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メイ首相はまた、「我々は凶悪犯を含む指名手配犯に対する警告をリアルタイムで共有できなくなる」と指摘した。
「海峡の両側にいる失踪人の情報に反応し、愛する人々と再会させることが速やかにできなくなる」
「欧州のテロリスト網を特定し、テロストを法の下で裁く集団的能力が削がれる」
その上で、「これは私が求めていることではないし、あなた方が求めていることでもないと信じている」と付け加えた。
さらにEUの首脳らに対し、英国がDNAデータバンクの「プラム・メカニズム」や、リアルタイムで特定の個人を警告する「次世代シェンゲン情報システム(SGSIS)」、欧州犯罪記録情報システム(ECRIS)といったスキームに引き続き参加できるよう、離脱交渉官に求めるべきだと話した。
「我々とあなた方の市民に何がとって最も安全なのかを考え、我々がこの重要な目標を達成できるよう交渉官に命じて欲しい」
ローラ・クンスバーグ政治編集長は、メイ首相はEU首脳に交渉における欧州委員会の厳しいアプローチから離れ、「最後の一線」を緩和するよう説得したいのだと分析している。
EUのミシェル・バルニエ首席交渉官は6月初め、英国はブレグジット後に、EU加盟国同士なら本国送還の交渉をせずに逮捕や収容を要請できる欧州逮捕(EAW)の合意から外れるだろうと話した。英国は欧州司法裁判所の管轄や、人の自由な行き来を認めるシェンゲン条約から外れることを求めているため、EAWにも参加できないと説明した。
メイ首相が前回、EU加盟国首脳の前で話をしたのは昨年10月。当時は英国側もEU側も、2019年3月の離脱までに合意すると望んでいた。
しかしジャン=クロード・ユンケル欧州委員長は、メイ内閣の分裂が事態をより複雑にしていると指摘する。
ユンケル委員長はブリュッセルで「メイ首相に対する説教はないが、英国の友人たちには立場を明確にしてほしい」と話した。
「分裂した内閣とは共存できない。要望をはっきりと言ってくれればそれに答えられる」
与党・保守党内でも圧力にさらされているメイ首相は閣僚らに対し、7月6日に首相の公的な別荘チェッカーズで閣議を開き、EUとの将来の関係に関する草案を承認するよう求めている。
ブリュッセルに到着したメイ首相は、EUと英国双方の利益となる「力強い将来の関係を確保する」ことを楽しみにしていると話した。
「双方とも、これまでより早いペースでこの仕事を進めることを望んでいると思う。我々はもちろんそれを歓迎する」
29日まで行われる首脳会談で、メイ首相は各国首脳と一対一の会談を行う予定で、欧州が直面する移民問題やユーロ圏改革などを話し合う。
英国を除く27カ国の首脳は29日朝にブレグジットについて協議するが、その時点ではメイ首相はブリュッセルを離れるという。
28日に10時間に及んだ協議で、EU加盟国首脳は移民問題について合意に達したと話した。
メイ首相は29日朝、「前向きな結論」が出たことを歓迎した。
合意の内容についてメイ首相は、多くは「英国が長い間、推奨してきた事柄についてだった。(移民の)出身国側でもっと対策を取ることで、人々が極めて危険な旅をする必要がないようにする」と話した。