誰だって絶賛するモダンロックのアヴァンギャルドな存在The Cribsに想いを馳せる
人は30代になると新しい音楽・バンドを探すことをやめる、という研究結果つきの記事が出たらしい。出処はNMEだ。
30代になった今、100%頷けるわけではないが、ちくちくと胸に刺さるものはある。
新しく世を騒がせているバンド、それを何か別のものに騒がしくなってる自分がスルーしてる事は今までもきっとあった。
知らず知らずに音源は手に入れていて記憶に刻まれている。
いつの間にか結構なくらい繰り返し聴いていて、アレッ!?ってくらい伸びた再生回数。
慌てる様に記憶を呼び起こし、調べてみればそりゃそうさってくらい痺れるバンドのバイオグラフィーがあったりするのだ。
最初から覚えてれば、今回の来日にも間に合ったのに。
今日日僕にとってそんなバンドはThe Cribsだった。
淡々とロックの今を引っ張るぶっ飛んだバンド
どっかの誰かが良いって言ってた。そうやってバンドを知ってくのが世の常だ。
雑誌だろうがネットメディアだろうがこういうブログだろうが友達の言葉だろうが。
そういうふとした一個になればいいなと思って書いている次第だ。
特にその誰かが巨大な影響力を持つ人物の場合はそのままそれが冠になる。
帯のどっかには〇〇絶賛とかかれる。イギリスのロック界で言うとオアシス絶賛とかはそれに当たるだろうと思う。
それで言えばThe Cribsは超太鼓判の付いたバンドだった。
The Cribs - Live at Amoeba (Jul 20, 2007)
インディーシーンで注目を集めると、すぐさまオアシスのリアム・ノエルが絶賛、リバティーンズもそれに続き、何故か大御所ポストパンクバンド、ザ・シミスのジョニー・マーもギタリストでバンドに参加を立候補しホントに在籍までした評価のされっぷり。
一方で〇〇絶賛という触れ込みの魔力はコンビニエンスになりすぎてしまうきらいもある。
いかに気にしていないようなコメントを残しても本人の知らない処で〇〇絶賛は意図せず間口を広げ、期待のベクトルの乖離によるアイデンティティーの喪失にも繋がる危険は常に孕むのだ。
サッカー界にはマラドーナ二世が20人くらいいるが、未だにその誰もがW杯を掲げていない、そこにもそういう見えない重圧が作用している気がしてならないのだ。
そこで言わしときゃいい、関係ないよってブレない態度が逆にロックに映る見え方にもなるのだが、何ともガチで気にしていないようだったのがThe Cribsなのだ。
そこが実に痺れるしカッコイイ。
The Cribsとは
2000年初頭のリバティーンズやストロークス、更にはアークティック・モンキーズ、フランツ・フェルディナンドのガレージロック・リバイバルのムーブメントの弟分のような位置取りで姿を表したザ・クリブス。
双子+弟による3ピースバンドで弟のロスがドラムで、ギターのゲイリーとベースのライアンがボーカルを変幻自在に変えつつ歌う。
リバティーンズの前座を抜擢されたり、フランツ・フェルディナンドのアレックスがアルバムをプロデュースしたり、ジョニー・マーがバンドに参加したり、イギリスのバンドの中でもトップの話題を集めながら活動していながら、前述もしたが何かこうサラッとしたスタンスが実にマイペースな印象を与える。
根本的にローファイ・サウンドに大きな影響を受けた3兄弟は、まさに独自なインディー路線でエネルギーを発揮する事を望んでいた。
巨大な成功を毛嫌いするわけではなく、ナチュラルに必要のないものとして捉える真のインディー精神として数多くのリスペクトを浴びつつも、こっちがアツくなればなるほど更にひらりと躱して掴めないぶっ飛んだ印象すらある。
ライブは事件的に過激で、そのサウンドもまさに独特なロックとしてガタガタながら成立しているのだ。
ソングレビュー
1. 'Hey Scenesters!'
ソングレビューの一発目は実にクリブスらしい初期のハチャメチャナンバー。
ローに躍動感を誘うベースライン火花散るギターカット、カオティックに跳ねるフリーキーなメロディーに、コーラスもシャウトも自在に入り乱れるツインボーカルの味わい。
蛍光色の黄色いペンキを次々とぶちまけられてるような圧倒的な染められる感じは、3ピースながら超強力。
バラバラな個性が不思議と一体となるマジカルな魅力が詰まった一曲で、ちょっと風刺的な感じも良い。
2.'Our Bovine Public'
コミカルなメロディーの滑り出しに一瞬で心奪われるこれぞクリブス流のマジカルな高揚感。
四方八方に散らばった音がねじれてうねる収束感、しかもマキシマムな地点は実にメロディアスでキャッチーになる不思議でちょっと聴いたこと無いぜって曲。
キャッチーなコーラスに高音で煌めくエッジのギター、はちゃめちゃに見えつつ誰も同
じように歌えないだろうスペシャルなボーカルを思う存分堪能できる2分半。
クリブスとはなんぞや的なアンサーアンセムだ。
広告
-->
3.'I'm a Realist'
4.'Men's Needs'
The Cribs - Men's Needs [Non-PA] (Video)
一度聴いたらこびりついて離れないリフの屈指のアンセム。
強烈な個性を放ちつつ、滑り落ちるような爽快感でアンバランスに鮮やかにキマる。
メロディアスなボーカルとエッジーなボーカルを巧み入れ替え、突如聞こえる重なるコーラスも単純な仕組みながらインパクトは凄い。
ギターロックの浮遊的な魅力をおさえつつ、眩しさに目を奪われるキラーチューンだ。
5.'Mirror Kissers'
6.'Rainbow Ridge'
ニルヴァーナ的なサウンドデザインの新しめのナンバー。
ロウでピュアなメロディー、鋭角に切り上げるギターで惹きつけてまとまり滑空する様なサウンドは攻撃性より切なさを纏い響く。
終始シンプルなメロディーメイクだからこそキャッチーに掴むし、尖ったエッジがえぐっていくだけのフックもあるのだ。
ちょっと大人だし、インディー的な深さを感じさせる一曲。
7.'Don't You Wanna Be Relevant?'
The Cribs - Don't You Wanna Be Relevant?
終始強烈に眩いギターにリードされるメロディアスなナンバー。
歌謡曲みないなコブシ的情感も感じる歌うようなギターリフ中心のメロディーラインは心地よく聴く事が出来る。
どこかクラシカルなサウンド・デザインがホッとする心の柔らかい部分を突くし、彼らの歌心がストレートに出た良曲。
8.'Kind Words From the Broken Hearted'
The Cribs - Kind Words From The Broken Hearted
ミディアムなポップナンバー。
ギターとシンセの眩いばかりの広がりのサウンドに、ポップなビートが跳ねるわかりやすくポップな一曲だ。
高音でめちゃめちゃに絡みあうメロディーは虹のように綺麗で、セクシーに味のあるハスキーなボーカルにロックを感じつつ、しっかりサビでキメてくるドライヴなサウンドメイクは実に聴いていて嬉しい祝祭感すらあるのだ。
The Cribsはきっとずっと密かに僕の心で鳴る
きっと耳の早い音楽ファンはあっという間に好きになってるバンドだろうし、10回以上超える来日を果たしている事からしても、既にファンベースが日本にもあるというデカイ存在のバンドだ。
全然僕が知らなかっただけであるが、それでも気付かずに驚くほど聴いていたのは彼らの音楽性とスタイルにおもねる所が大きいと思った。
どんなプレイリストの中で聴いてても異彩を放ち、彼らだけ聴いてみりゃ異様にカッコイイ。
音楽人生で実は密かに幾度もドラマティックな瞬間を作っているバンドは、実はこういうバンドなのかもしれない。
それではまた別の記事で。