米Nianticは、米Googleの社内スタートアップ(Niantic Labs)として2010年に設立され、2015年に現CEOのジョン・ハンケ氏を中心に独立した企業となった。もともとGoogleで「Google Maps」や「Google Earth」などを開発していたチームなので、位置情報を扱うアプリはお手の物だ。
2013年に「Ingress」、2016年に「Pokemon GO(ポケモンGO)」といった位置情報やAR(拡張現実)を活用したスマートフォン向けゲームアプリを投入し、2018年にはハリー・ポッターを題材にした「Harry Potter : Wizards Unite」のリリースも予定している。6月28日(米国時間)には、「Niantic Real World Platform」としてARゲームのプラットフォーム戦略も発表し、世界的な注目を集めている。
同社はこうした成長とともに手狭となった橋の下の旧オフィスを離れ、現在は市の歴史的な施設であるフェリービルディングに拠点を構えている。このビルの1階は2000年のリノベーション以降は主に観光客を対象とした土産物屋やレストランが並んでいるが、2階はオフィススペースとして貸し出されている。今回はユニークな同社の新オフィスを訪問する機会を得たので紹介したい。
Nianticのオフィスは、意外にも古めかしい雰囲気。その入口は、まだサンフランシスコが小さな港町だったころの面影を残す意匠で飾られており、来社した人々を驚かせるクラシックなたたずまいだ。
なぜこのような内装かといえば、同社の社名の元となった「Niantic」号に由来する。Niantic号は1800年代半ばに実在した船で、ゴールドラッシュで沸き立つサンフランシスコで数奇な運命をたどった捕鯨船だ。
当時、米東海岸で建造された船は南太平洋で捕鯨に活用された後、パナマで多くの客を乗せてサンフランシスコに到達した。これが、実質的にゴールドラッシュ(つまり金鉱探しの目的)で人々を最初に同市へ運んだ記録とされている。
1850年前後に放棄された船は市内の内陸部で周囲を埋め立てられ、倉庫やホテルとして使われていたが、1906年のサンフランシスコ大地震で再発掘されるまで地面の下で眠っていた。後にその場所は史跡となり(現在のトランスアメリカピラミッド付近)、歴史的遺物は博物館や周囲のホテルなどで収蔵されて今日に至る。
Nianticのオフィス入口に飾られたアンティークの数々は、その遺物の一部や関連したものをあらためて買い集めたもので、コレクション展示場の役割も果たしている。
一見この風景からIngressやポケモンGOの会社を想像するのは困難だ。ただ、ゴールドラッシュの時代に作られて数奇な運命をたどったNiantic号の遺物が、同社の位置情報やARを活用して現実世界をゲームに変える開発に、何らかの影響を与えているのかもしれない。
ちなみに、フェリービルディングはもともと港の桟橋へのデッキがかけられていた建物なので、Nianticのオフィス入口をくぐると、いきなりサンフランシスコ湾の眺望が開ける。そして、さすがにオフィスの中までアンティーク調というわけではなかった。
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