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ヘイトスピーチを放置し続けるツイッタージャパン

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Thinstock/Photo by Kagenmi

 過去にツイッターでヘイトスピーチを投稿していた作家が批判されるケースが続いている。10月にテレビアニメが放送されることが決まっていた『二度目の人生を異世界で』の原作者・まいん氏が、2013年から2014年頃に中国や韓国などに対するヘイトスピーチをツイッターに投稿していたことが発覚したのが5月中旬から下旬にかけてのこと。

 今月6日には、出演予定だった声優4名が一斉に降板を発表し、翌日には原作を出版しているホビージャパン社が出荷停止を決定。またアニメの制作も中止となった。まいん氏はツイッターで謝罪後、アカウントを削除している(『二度目の人生を異世界で』優が一斉降板、原作者のヘイトスピーチが波紋)。

 また今月下旬には、『まんがタイムきららMAX』(芳文社)で「本日わたしは炎上しました」を連載している漫画家・どげざ氏が、2012年にコリアンに対する差別的なツイートを行っていたことが発覚。どげざ氏は今月25日にツイッターにて謝罪を行った。どげざ氏の謝罪ツイートは以下の通り。

「私どげざの過去のツイートにて特定の人種への蔑称を使用しヘイトスピーチだと思われてしまう表現、及び特定の方々を批判にさせる表現を使用しご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

6年前の発売当時の私は19歳と若く、注目されることも無かった為に言葉を選ぶという最低限のマナーを欠いておりました。また、当時の発言が現在の特定の方々に影響を与え不快感を与えるとは思考が及ばずこのようにお騒がせする形となりました。

該当の2012年当時のツイート、及び現在に至るまでの私が行った蔑称を含む可能性のある不特定多数のツイートに関しましてはこれ以上不快な方を増やすことの無いよう削除という形で対処致します。

今後はこのような不用意な発言を自粛し不快に感じる方を増やさぬよう配慮し発言して参ります。改めてまして、私どげざの過去の発言で特定の方々を不快にさせご迷惑をおかけしたことを深くお詫び致します」

 作家に限らず、ヘイトスピーチをツイッターに投稿するユーザーは現在も無数に存在する。昨年9月、ヘイトスピーチを放置しているツイッター社に対し、市民グループ「TOKYO NO HATE」が抗議を行っている。同時期には、モデル・女優の水原希子が出演しているPR動画が添付されているツイートに対し、ヘイトスピーチが投稿されていることが大問題になっていた(水原希子出演プレミアム・モルツCMへのヘイトは4カ月前から行われていた。私たちが批判の声を挙げることに意味がある)。

 ツイッター社は抗議が行われる前日に「ツイッターへの多くのご意見をありがとうございます。すべての方が安心してご自分を表現いただける場にしたいと考えている中、ご期待に添えていない現状を真摯に受け止めています。最近、日本対応チームを拡充し、早急な問題解決に向け動いています。また状況をご案内させてください」とツイートしたが、その後も十分な対応が行われているとは言えない。

 今月は、ツイッターで、差別的な投稿に対して批判を行っていた複数のユーザーが、ツイッター社によってロックされるという事件も発生している。過去にヘイトスピーチを引用する形で批判を行っていたツイートを理由にロックされたと見られており、「なぜ差別ツイートをするユーザーがロックされずに、それを批判するユーザーがロックされるのか」とツイッター社への批判が起きている。

 一方でヘイトスピーチへの対応も少しずつではあるが変化しつつある。今月28日、大阪高裁は、まとめサイト「保守速報」に掲載された差別的な記事によって名誉毀損されたという訴えに対し、損害賠償200万円を命じた地裁判決を支持。双方の控訴を棄却した。「保守速報」はサイト上で、上告することを発表。この裁判は「まとめサイト」に掲載されている記事内容の責任が引用元にあるのか、サイト側にもあるのか、法的責任を位置づける重要な判例になるとして注目されている。「保守速報」については、同サイトに広告が掲載されている企業にネットユーザーらが通報を行ったことで、広告出稿を取りやめる企業が相次いでいる。一部企業については、通報される前に、自主的に出稿を取りやめた企業もあった。

 YouTubeでも、大手掲示板サイトのあるスレッドで、YouTubeにアップされている差別的な動画を通報する呼びかけが起き、動画の削除や、アカウントの停止が相次いだ。その中にはネット上で差別的発言を繰り返してきた桜井誠氏が党首を務める日本第一党のチャンネルもあった。

 裁判所や広告出稿を停止した企業、YouTubeの例をみると、ツイッター社の対応の遅れが際立つ。ネットに広告を出稿している企業にせよ、YouTubeにせよ、日々多数の記事や動画がアップロードされており、差別的なコンテンツを完全にコントロールすることは現実的に不可能だろう。しかし何らかの形で注目され、問題視されれば、適切な対応することは不可能ではないはずだ。

 ツイッタージャパンの笹本裕社長は過去に『クローズアップ現代+』(NHK)に出演した際に、「ヘイト自体は残念ながら、僕らの社会の一つの側面だと思う。それ自体がないものだとしてしまっても、実際にはあるわけですから、それ自体を認識しなくて社会が変わらなくなるよりは、それはそれで、ひとつあるということを認識して、社会全体が変えていくことになればと思います」と発言し、「ヘイトスピーチを放置してもいいということか」と批判を浴びた過去がある。

 差別的な投稿をする作家といえば、まっさきに百田尚樹氏が思い浮かぶが、百田氏のアカウントはロックされず放置されている。ヘイトスピーチを批判したツイッターユーザーはロックされたにもかかわらず、だ。ツイッター社への対応に不信感を抱くのは当然だろう。

 今回、謝罪したどげざ氏が問題視されたのは19歳の頃に行った差別的投稿だという。19歳といえば、多くの場合すでに義務教育を終えている年齢である。今月には成人年齢を18歳に引き下げる法改正が成立し、2022年に施行される。誰もがネット上で自身の意見を表明できる現代社会では、義務教育の中でネットを利用する際の注意点や、何が差別に当たるのかを教えることが必須なのではないか。同時に、相変わらずヘイトスピーチが蔓延しているネットを改善する方向に動き出さなければならない。

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