ひどい10分間だった。1次リーグ最終戦、ポーランド戦の終盤に、日本の選手たちはプレーすることを放棄した。「自力」で打開することをやめて「他力」に頼った。決勝トーナメント進出という結果は称賛するが、その過程をポジティブにはとらえられない。
ボール回しが悪いとは思わない。勝ち試合での「逃げ切り」は恥ではない。相手のチェイスをかわしながらボールを保持し続けることは、サッカーの一部でもある。ただ、それがあまりにあからさまだった。1-0でいいポーランドはボールを取りにもこない。日本はパスを回すまでもなくキープできた。ピッチの22人は試合の外、試合をしているのは「攻めろ」と手で合図する主審だけだった。
G組のベルギー対イングランドは、ましだった。メンバーを入れ替えてキックオフから全力(に見える)プレー。ともに2位抜けを狙っていたのか(結果的にはベルギー勝利)緩い試合だったが、どちらも(シュートを枠に飛ばさないように)攻め合い、見ごたえはあった。「立ち合いは強く当たって、後は流れで」のような試合だった。
「パス回し」以上に引っかかるのは「他力」に頼ったこと。セネガルが得点してしまえば、ボール回しそのものの意味はなくなる。ロシアまで日本代表の試合を見に行ったサポーターはピッチではなくスマホの画面を見ていた。日本でなくコロンビアを応援した。目の前の相手に全力を尽くすことが「フェアプレー」だとしたら、間違いなく「アンフェア」だった。
もちろん、セネガルがゴールしたら切り替えて攻撃に出るのだろうが、少ない時間で結果を出せたかどうか。あまりにリスクの大きい判断だった。その確率を考えれば、すでに勝つために1点を守ることを優先するポーランド相手に同点を狙うこともできた。いや、狙うべきだったと思う。
VAR制によってロスタイムが長くなり、ロスタイムのゴールも増えた。テレビで見た子どもたちは「試合は最後まであきらめず、最後まで走ろう」と思うはずだ。そんな子どもが、この日の試合を見たらどう思うだろう。私には「ルールに合った立派な戦術だ」と言いきれる自信はない。
日本は皮肉にも「フェアプレーポイント」で2位に滑り込んだ。西野監督が批判覚悟で打った「ばくち」が成功し、大会に残った。子どもたちに「これが我々日本代表のプレーだよ」と胸を張って言えるような試合をするチャンスはまだ残っている。そのための「時間稼ぎ」であってほしい。