関東、もう梅雨は終わっているらしいのでした。いつの間に？早くない？雨って降ったかしら？カラ梅雨もお馴染みになりつつあるのだろうか。
まあいいです。天気の話ばかりしてもしかたない。
それはともかく。
ビールがうまい季節になって参りましたぁ！ビールが美味い！ああこの感情。どうして伝えられようか。
たとえば観光地の少しはずれた場所にでも日陰を探してしっかりとしたスペースを確保しよう。柔らかい芝生のうえで春に買ったお洒落なオレンジ色のレジャーシートを広げよう。朝から仕込んでくれたお弁当箱を開け、ワインのボトルはとりあえずスニーカーと一緒に四隅の重しがわり。プラスチックのグラスを取り出しまずはこれ。キンッキンに冷えたスーパードライ。そいつを簡易保冷袋からおもむろに取り出そう。なににも代え難い最高のキレ。にんまりにやけ顔でプルタブに指をかけようぜ。ビールがうまい季節になって参りました。ビールが美味い！
たとえば、真っ昼間は出歩く気も出せず、ようやく動き出す涼しくなった夕暮れ時。夜気に晒され頭も身体も落ち着きを取り戻す。真昼に蒸されたものを冷ますみたいに、黄昏時を徘徊する。軒を連ねる焼き鳥のにおいにもホルモンのにおいにもほだされず、橋を渡る。安い電飾と読めない看板。突如として現れるタイ王国。とびきり辛いメニューを選べ。ここはチャーン。あるいはシンハー。これが定番。こいつらには香草の爽やかな辛さがよく似合う。何本だって飲み干そう。ビールがうまい季節になって参りました。ビールが美味い！
たとえば、ひさしぶりの外仕事。納品。少々動くだけで汗みどろ。嵐のように音を立てるワゴン車のエアコン。クールダウンもままならず、すぐにお次の現場に到着。非力な細腕で段ボールを引き出す。納品完了、お次はどこ？終了？よしきた。うんざりする日差しも気持ちもそれですべて反転する。ぬるいシャワーを浴びたらビーチサンダルで近所をぶらつけ。どうしてくれようか。安くてうまい広東料理。常連といつもペラペラとおしゃべりをしているご主人、ビールだけは早めにお願い。大きな星一つ、鳴り物入りで運ばれてくるサッポロビール。これは中瓶。間違いない。コップのサイズも調度良い。いやぁビールが美味い！
たまには音楽イベントもいい。いい歳なので体力を使う野外フェスなんかではなくて、空調の効いたライブハウスがいい。少しだけお金をはたいて音の良い箱を探そう。ビルボード、ブルーノート。良いライブならなんでもいい。ルーツレゲエ、アフロビート、クンビア。このへんのジャンルがいいかな。ともあれ乗れる音ならなんでもいい。音に合わせてなんなら服装も若干コーディネイト、なんかしちゃったりして。そんでみんなで出かけよう。で、そういう日にはレッドストライプなんかうってつけ。なによりビールが美味い！
ああ、もう呑みたい。なんでもいいや。すぐ呑みたい。文字なんか打ってたってはじまらない。どうせ伝わりゃしない。夏のビールのあの美味さ。なんやかんやいってもはじまらない。
もうすぐにでも飲みに出かけよう。仕事を切り上げて。仲間を誘って、誘われて。あるいはひとりでも出かけよう。琥珀色した繁華街を練り歩こう。コンビニで500ミリをたっぷり買い込んだっていい。ビニール片手に、公園で涼みながら飲んだっていい。
エビスに麒麟にアサヒにサッポロ、コロナにバドにハイネケン。シンハー、チンタオ、タイガービア。ラガーにスタウト、エールにピルスナー。生にジョッキに大瓶中瓶。赤ラベル黒ラベル。なんでもいい。銘柄なんて気にしやしない。
嫌なことも憂鬱な毎日も全部反転させて飲み干そう。おじさんも兄ちゃんも、誰だってかまわない。隣に座れば、杯を交わせば、一晩だけの友となる。政治批判、スポーツ批判、愚痴に戯言、なんでもござれ。別に話なんか聞かなくってもいいじゃん。嫌なことなんて聞かなきゃいいだろ。とにかく楽しく飲もうぜ。一緒にさぁ。
どうせ朝になれば全部忘れるんだ。飲んだ仲間も、話した話題も。どうせ覚えちゃいないだろ。だからこそずっと同じ話題でも飽きもせずにばかみたいに何度でも話せるってもんだろ。
だからこっちに来なよ。さあほら兄さん姉さん。席は空いてるよ。じゃいま空けるよ。面倒なことはいわないよ。あ、いや言うかも知れないけど聞き流しておくれよ。下品かもしれないけど許しておくれよ。細かいこたぁいいんだ。とにかく笑いあおう。ビールにゃ笑顔がよく似合うぜ。なに、飲めなくてもかまわないよ。おれが代わりに飲んであげるよ。心配しなさんな。引っ込み思案でも口べたでもなんでも心配しなさんな。代わりに話してやるよ。なんならお代も気にするなよ。きっととなりのおじさんが払ってくれるさ。
だからほら、ただ一緒に飲み干そうぜ、孤独、焦り、妬みに嫉み、全部忘れて飲み干そうぜ。ダイジョウブダイジョウブ。心配しなさんな。えびしんがなびーおーらい！一緒に心も体をゴールドに染めようぜ。