映画界に「拝金主義」 俳優の報酬に制限=中国当局
中国共産党中央宣伝部などは27日、映画やテレビに出演する俳優の報酬を制作費の40%に制限する規定を発表した。当局者らは映画界に脱税行為や「拝金主義」が広がっていると警告した。
また、主演俳優の報酬はキャスト全員の報酬の70%を上回ってはならないとした。
中国では、有名俳優の高額報酬や脱税疑惑をめぐる議論が高まっている。
なぜ今報酬規制なのか
中央宣伝部や文化観光省、国家税務総局、国家ラジオ映画テレビ総局など5つの党・政府機関が連名で発表した文書では、報酬の規定を今導入する理由について説明していないものの、俳優たちの「とてつもなく高額な報酬」や「陰陽契約」(表向きと実際の内容が異なる2重契約)、「脱税そのほかの問題」に取り組む必要があると指摘している。
発表文は、これらの問題が「映画・テレビ産業の健全性を損なっている」とし、「拝金主義」や「若者たちが盲目的に有名人を追いかけ」、「社会の価値観をゆがめる」ことにつながっていると指摘した。
新たな規制がどのように執行されるのかについて、発表文は説明していない。
今回の発表は、先月沸きあがった著名人の脱税疑惑をめぐる議論が背景にある可能性が高い。
テレビ司会者の崔永元氏は先月、中国で最も著名な俳優の一人、范冰冰(ファン・ビンビン)氏が160万ドル(約1億7000万円)の報酬を受け取る内容の契約書だとするものを、ソーシャルメディアに投稿した。
崔氏は続いて、多くの著名人たちが「陰陽契約」を行い、報酬が低く書かれた契約書を当局に報告し、脱税していると主張する投稿をした。ソーシャルメディアの多くのユーザーたちは、崔氏が范氏について述べていると受け止めた。
范氏の事務所は不正を否定し、范氏の契約書を公表し脱税行為にかかわっていると示唆した崔氏を裁判に訴える可能性があると警告した。
今月に入り、中国の税当局が「インターネット上で話題になっている映画・テレビ界の特定の人物たちの脱税疑惑」について調査を始めている。
映画・テレビ産業へ当局が介入するのは珍しいのか
例えば米ハリウッドやインドのボリウッドで、俳優の報酬をめぐって政府が介入することはない。
しかし、中国では民間であっても多くの産業がより強い政府の監督を受けている。
27日に出された発表文は、製作会社が「単に入場券販売やレーティング、クリック数」を追うのではなく、「社会への恩恵を優先」すべきだと述べている。
映画・テレビ産業にかぎらず、中国当局は検閲や規制を行ってきた。ソーシャルメディア上で問題となりそうな文言は削除され、中国のジャーナリストたちは「政治、思想、行動」で国家の指導部に従うよう求められる。
当局は昨年、テレビ・ドラマの内容が「人々の文化的趣味を高め」、「精神的な文明を強める」ことに貢献するよう求める通達を出した。
中国のエンターテインメント産業が重要な理由
中国で製作された映画が、ハリウッド作品のように世界的に上映されることは少ないが、近年では、中国とハリウッドが共同製作する作品が増えている。
最も有名な例の一つとしては、製作費1億5000万ドルがかけられた「グレートウォール」があるが、興行収入は振るわなかった。
しかし、観客数の単純な規模を考えても、映画製作会社にとって中国のエンターテインメント産業は重要だ。
専門家たちは、中国が近く世界最大の映画市場になるとみている。ハリウッドの多くの映画製作会社はすでに、中国の観客を引き付ける内容にしようとしている。
(英語記事 China caps film stars' pay over 'money worship and tax evasion')