EU首脳会議、移民問題で合意 議論は10時間近くに
欧州連合のドナルド・トゥスク大統領(欧州理事会常任議長)は29日、EU首脳会議が移民問題で合意に達したと明らかにした。
ブリュッセルで28日から開かれていた首脳会議での議論は10時間近くにおよび、29日未明まで続いた。
合意文書によると、EU加盟各国が自主的に新たな移民施設を設置することで合意した。施設では、移民を純粋な難民なのか「送還される不規則的な移民」なのか判断されるとしている。
トゥスク大統領は29日朝のツイートで、移民問題を含め共同声明がまとまったと述べた。
イタリアのジュゼッペ・コンテ首相は、「このEU首脳会議のあと、欧州の責任感は増し、連帯が強まる」と話した。
「きょう、イタリアは独りではなくなった」
一方、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、合意に至らなかった部分を解決するため、なおすべきことが残っていると話した。
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何が決まったのか
自主的な移民施設設置以外に、EU加盟国首脳が合意した内容は以下のとおり。
- EU域外との国境の管理強化や、トルコおよびモロッコなどの北アフリカ諸国への金融支援拡大
- 密入国の斡旋(あっせん)を行うギャングを壊滅されるため、EU域外で難民や移民を審査する「地域下船プラットフォーム」の可能性模索。ただ、北アフリカにこうした施設を置くことは難しく、モロッコはすでにこの提案を拒否している
- EU域内での移民の移動制限。合意では、この移動が亡命政策やシェンゲン条約を疎外していると説明している
- アフリカ大陸が「大きな社会的・経済的変革」を遂げ、人々がより良い生活のために国を離れることがないよう支援するための投資拡大
- 亡命申請は最初にたどり着いたEU加盟国で取り扱うという「ダブリン規約」を含む、EUの亡命政策の改革への取り組み
長時間にわたった議論の後、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「欧州の協力がこれを可能にした」と語った。
コンテ伊首相は首脳会議で、移民問題で合意できなければ共同声明を拒否すると、異例の姿勢を示した。イタリアのほかギリシャも移民への対応で加盟国の公平な分担を求めている。
メルケル独首相はこれに先立ち、移民問題がEUにとって非常に重要な局面になる可能性があると語っていた。
メルケル首相はドイツで、別の国ですでに移民として登録した人々がドイツに流入するのを防ぐ合意を得るよう求める声に直面していた。
ドイツ南部バイエルン州の党でメルケル政権の連立相手、キリスト教社会同盟(CSU)に所属するホルスト・ゼーホーファー内相は今週末を期限とし、移民対策で合意がまとまらなければ、バイエルン州で移民送還を始めると表明していた。
CSUが連立を離脱すれば、メルケル政権は議会で少数派に転落する。
移民の流入には、シリア内戦などの戦闘を逃れ、安全な居住地を求めてやってきた難民も含む。
ギリシャの島々で多数の難民が押し寄せた2015年の難民危機当時と比較すれば、状況は落ち着いている。欧州評議会によると、EUに非合法的に入った移民の数は、ピークに達した2015年10月と比べて96%減少したという。
しかし、今月にはイタリアが移民を乗せた船の入港を拒否し、移民問題が再び強い関心を呼ぶ結果となっている。
最近の例では、ドイツのNGOが運営する船「ライフライン」が入港先を探していたが、EU各国間の激しい外交交渉の末、マルタで停泊が許可された。各国は乗船している移民をそれぞれ受け入れることに同意した。マルタによると、ノルウェーがライフラインの乗船者の一部を受け入ると表明した。
(英語記事 Migrant crisis: EU summit leaders reach migration deal after marathon talks)