この人も宇野功芳センセがいなかったら決して日本では知られていない指揮者。
大学生の時彼の指揮する『プラハ』を聴いて、僕はモーツァルトの天才を知った。
それまではなんとなく「ポップなメロディを書く人」くらいにしか思っていなかったが、なんと深い精神世界なんだろう、なんて美しくて、そして悲しいんだろう、と心が震えた。
後日、「モーツァルトが解らん」と言ってた今や「ハリボテの巨匠」K氏に聴かせた。
第一楽章を聴いて、何とも言えぬ表情で、重い口調で「解った」と言ったのが強く印象に残っている。
シューリヒトは地元でもマニアックな指揮者だったらしく、華々しいキャリアはない。
しかし、晩年特にウィーン・フィルに愛された。
最初マイナー指揮者扱いだったのに腹を立て、オケに容赦なかったらしい。
彼がVPOと録音したブルックナーは素晴らしい。
特に第9番は、あまりに神々しい響きで、この作品の俗世離れした天界の調べを良く表現している。
こういう信念を貫いた質実剛健な指揮者、今まだいるのかなぁ?