ビジネス書・今週の平台
うつでもコミュ障でも食える人に 当事者が実録仕事術
三省堂書店有楽町店
2階のビジネス書コーナー、1階のベストセラー棚のほか、売れ筋本を並べた平台にも陳列する(三省堂書店有楽町店)
ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は4月に訪れた有楽町駅前の三省堂書店有楽町店を再訪してみた。定点観測している3書店と同じく東京の中心ビジネス街の書店だが、駅前の入りやすい立地のせいか、客層がいくぶん若めで、新刊への反応が早い。ビジネススキル系の本がベストセラーの上位に並ぶ中で、書店員が注目したのは、発達障害を持つビジネスマンブロガーが普通に仕事をして生きていくための小さな知恵を書き留めた仕事術の本だった。
■ブログやツイッターで発信
その本は借金玉『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』(KADOKAWA)。借金玉(しゃっきんだま)というのはブロガーとしての名前。現在は営業マンとして働く32歳のサラリーマンだ。注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断され、処方された薬で症状を抑えながら働くとともに、「発達障害就労日誌」というブログを書き、ツイッターでも発信し、多くのフォロワーを持つ。略歴をたどれば、幼少期から社会適応ができず、いろいろあって大学までは卒業、金融機関に就職したものの、まったく仕事ができず退職、一発逆転を狙って起業し、ある程度成長したが大失敗、1年かけて「うつの底」からはい出し、営業マンとして働いているという。その体験をもとに、「『この辺は困っている人が多い』という問題に対するライフハック(ささやかな人生の工夫みたいなものでしょうか)を書き連ねたのがこの本」だ。
「この本の中心テーマは『生存』、すなわち『とりあえず生きていればOK。生き抜こう』です」と、「はじめに」の中で著者は書く。そんなギリギリの感じと、いい意味での軽さが本書には同居している。特に前半は仕事、人間関係、生活習慣の3つの領域で、発達障害を抱えていても何とかやり過ごす術が具体的に書かれていて、発達障害ではなくても社会適応に苦手意識を持つ人には大いに参考になる。
■道具や環境を変えよう
例えば、発達障害の人が陥りやすい「しょっちゅう忘れものをする」「片づけられない」といった失敗に対しては、自分を変えようとするな、道具や環境を変えようと促す。そのときの原則は「集約化(ぶっこみ)」「一覧性」「一手アクセス」だという。
2階のビジネス書コーナー、1階のベストセラー棚のほか、売れ筋本を並べた平台にも陳列する(三省堂書店有楽町店) ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は4月に訪れた有楽町駅前の三省堂書店有楽町店を再訪してみた。定点観測している3書店と同じく東京の中心ビジネス街の書店だが、駅前の入りやすい立地のせいか、客層がいくぶん若めで、新刊への反応が早い。ビジネススキル系の本がベストセラーの上位に並ぶ中で、書店員が注目したのは、発達障害を持つビジネスマンブロガーが普通に仕事をして生きていくための小さな知恵を書き留めた仕事術の本だった。
■ブログやツイッターで発信
その本は借金玉『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』(KADOKAWA)。借金玉(しゃっきんだま)というのはブロガーとしての名前。現在は営業マンとして働く32歳のサラリーマンだ。注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断され、処方された薬で症状を抑えながら働くとともに、「発達障害就労日誌」というブログを書き、ツイッターでも発信し、多くのフォロワーを持つ。略歴をたどれば、幼少期から社会適応ができず、いろいろあって大学までは卒業、金融機関に就職したものの、まったく仕事ができず退職、一発逆転を狙って起業し、ある程度成長したが大失敗、1年かけて「うつの底」からはい出し、営業マンとして働いているという。その体験をもとに、「『この辺は困っている人が多い』という問題に対するライフハック(ささやかな人生の工夫みたいなものでしょうか)を書き連ねたのがこの本」だ。
「この本の中心テーマは『生存』、すなわち『とりあえず生きていればOK。生き抜こう』です」と、「はじめに」の中で著者は書く。そんなギリギリの感じと、いい意味での軽さが本書には同居している。特に前半は仕事、人間関係、生活習慣の3つの領域で、発達障害を抱えていても何とかやり過ごす術が具体的に書かれていて、発達障害ではなくても社会適応に苦手意識を持つ人には大いに参考になる。
■道具や環境を変えよう
例えば、発達障害の人が陥りやすい「しょっちゅう忘れものをする」「片づけられない」といった失敗に対しては、自分を変えようとするな、道具や環境を変えようと促す。そのときの原則は「集約化(ぶっこみ)」「一覧性」「一手アクセス」だという。
その第一歩が「かばんハック」。必要かもしれない物まで何でも入り(ぶっこみ)、開口部が広く、4つ以上に仕分けられる(一覧性と一手アクセス)などの条件を持つかばんを使えば、探し物や忘れ物をしなくなると、具体的な商品名まで示して語っていく。
人間関係では、「すべての会社は『部族』である」と言い切り、「部族の掟(おきて)」を知って、どうしのぐかをスキル化して伝授する。「褒め上げ」「面子」「挨拶(あいさつ)」が部族の三大通貨で、「褒め」は5パターンぐらいのフレーズを録音アプリでスマートフォンに入れて練習しておこうとすすめる。後半は障害との付き合い方で、やや重たい内容だが、薬やアルコール依存や、死にたい気持ちに陥るのを避けるために、どうやっているかが率直に書かれ、胸を打つ。
「発売から1カ月ほどたつが、一時は品切れになりそうなくらい反応がよかった」とビジネス書を担当する同店主任の岡崎史子さん。「年度替わりから3カ月、仕事の様子がわかってくるこの時期は、ビジネススキル系の本が売れる。そこにはまった感じ」という。
■話し方やビジネスメールのスキル本も
それでは、先週のベスト5を見ていこう。
(1)東京一極集中時代の100年企業戦略 | 宮沢文彦著(東洋経済新報社) |
(2)読書という荒野 | 見城徹著(幻冬舎) |
(3)1分で話せ | 伊藤羊一著(SBクリエイティブ) |
(4)ロジカル・シンキング練習帳 | 照屋華子著(東洋経済新報社) |
(5)10年後の仕事図鑑 | 落合陽一・堀江貴文著(SBクリエイティブ) |
(三省堂書店有楽町店、2018年6月18~24日)
1位は、東京での不動産賃貸事業の可能性を説いた本。著者は区分所有オフィス事業を展開する企業の社長だ。2位は、前回紹介した幻冬舎社長による読書論。3、4位にはビジネススキル系の本が並んだ。3位は話し方、4位はビジネスメールに力点を置いた伝える技術にまつわる本だ。5位は人気著者2人によるこれからの働き方論。売れ筋が動きやすい同店でも、このところ上位の常連だ。表にはないが、紹介した本は10位だった。
(水柿武志)
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