「低能先生」を凶行に駆り立てたネット民の闇

匿名コミュニティによる正義追求の恐ろしさ

自宅アパートの部屋の中の確認を終えた松本英光容疑者=27日午後8時19分、福岡市(写真:共同通信)

人気ブロガー「Hagex」ことネットセキュリティ会社勤務の岡本顕一郎さんが殺害された6月24日の事件が大きな波紋を呼んでいる。岡本さんを殺害したのは、インターネットコミュニティの中で誹謗中傷を繰り返していた無職・松本英光容疑者。岡本さんは、自身のブログの中で、「低能先生」として知られる松本容疑者の行為を問題視し何度か取り上げていた。松本容疑者はこれを逆恨みして犯行及んだと見られている。

岡本さんはインターネットセキュリティの世界でよく知られる存在だったほか、ネット上の様々な出来事を綴った「Hagex-day.info」をHagex名で書いていた。

現実社会では接点がまったくなかった

しかしこの事件が注目されているのは、岡本さんがネット社会で広く知られた人物だったからだけではない。松本容疑者が岡本さんと現実社会では接点がまったくない上、ネット上でも直接の議論などを交わしたことがないにも関わらず、強い意思を持って殺害という行為を選択している点にある。

警察からの情報を基にした複数の報道によれば、松本容疑者は岡本さんの本名すら知らず、ネット上で見つけていたHagex氏とみられる人物の写真を参考にして殺害する人物を特定したようである。Hagex氏を「ネット上で自分を批判している人物の代表」と一方的に見定め、社会への復讐として犯行に及んだと考えられる。

この事件が驚きをもって受け止められたのは。ネットコミュニティにおける匿名のやり取りに過ぎないのに、それが原因で凄惨な殺人事件を犯した点にある。たしかに、殺人にまで至った今回のようなケースはまれではあるが、ネット上には、想像を超えた発想から執拗な攻撃を行う人は多い。一方的な逆恨みは、ネットコミュニティでは決して珍しい話ではないのだ。

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  • NO NAME3e13458a6f0f
    個人が個人に制裁を下すような環境では必ず度を超えた過ちに繋がりますから
    >「追い詰める快楽」に酔っては危ない
    結局、この一点に尽きるのかなと思います。
    掲示板でもSNSでも迷惑なユーザーは一定数居ますし、サービス提供側もそういったユーザーを排除できるようシステムを整備するべきではあります。
    この事件を機に、そういった仕組みの整備についての議論がより進むことを願っています。
    up2
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    2018/6/29 19:29
  • NO NAME73e87a80a445
    【筆者はこの追い詰め方はまずい(以下略)筆者自身が連絡し(以下略)彼の周囲とともに説得に乗り出した。彼の脳内では自分の行為が正当化(以下略)で攻撃されている」と解釈するため、非常に厄介な経験だった。(以下略)ネット社会では精神的に追い詰められていく過程で、自分の敵を過大に見積もる傾向があることがわかった。「追い詰める快楽」に酔っては危ないようにも感じた。(以下略)不足する情報を人間は推測で補完しようとする。現実社会よりも圧倒的に情報が少ない中で補完する情報が過大になってくると(以下略)認識の乖離が進み、さらに追い込まれていく(以下略)。今回の痛ましい事件の教訓は、「異常な行動を取っているように思える見知らぬ人物の凶行に気をつけろ」(以下略)ではない。(以下略)「凶行に及ぶようなところまで相手を追い詰めないこと」が大切(以下略)と思う。】は大変参考になった。さすが、本田雅一氏だと思った。
    up2
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    2018/6/29 19:23
  • NO NAME2fcb3c70c79c
    自業自得とは思う。
    自分で挑発的な行為をして
    味方も無ければ批判される事しか起きないだろう。
    何故容疑者が挑発行為を繰り返すようになったのか知りたい。
    最近あった新幹線内の通り魔的凶行と今回の事件は
    筆者の解析に近いと頷ける点がある。
    孤立した容疑者が
    味方も無く憎しみや怒りを増幅させて爆発させたのは
    やはり周囲から追い詰められた事が原因の一つであると思う。
    ただ、そういう人間とどう接すればいいのかが難しい。
    up0
    down0
    2018/6/29 19:48
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