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いやー、ある意味で凄まじい試合でした。僕は日本代表を応援する日本のファンなので嬉しい結果でありますが、本当にこれが日本代表が見せるべき試合なのかという点については大いに疑問が残りました。日本代表がベスト16進出を決めたポーランド戦は、まさにギャンブラーの戦い。自分たちに都合のいいことが起きるほうに全力でベットしにいく、あやうい戦いでした。
発表されたスタメン、いきなり西野監督の決断は大胆でした。先発6人入れ替え、2トップという布陣の選択。コロンビア戦・セネガル戦で活躍がつづいていた大迫・乾・香川・原口・昌子を休ませ、さらにキャプテン長谷部もベンチに下げる。ポーランド対策というよりは、ターンオーバーして主力を休ませようという意図を感じるもの。
前日会見では非難の的となっていた川島を連れ立って登場し、「あまり他会場を気にしたくないし、選手にも伝えるつもりはない」と宣言した姿。それはまさに「俺は日本代表を信じている」というチームへの信頼の表れでした。だからこそGK川島であるし、だからこそこれまでベンチにいたメンバーを大胆に起用する。必ずやってくれると信じているから。まぁ、最終的に信頼したのはコロンビアのチカラだったわけですが…。
決戦の地・ヴォルゴグラードは35度という真夏の暑さ。スタンドの観衆には試合が始まる前から汗が光ります。登場した日本代表はこの日も充実の表情。GKには指揮官の信頼に応えて日本に帰りたいメス川島(オス)。DFラインには暑くても大丈夫そう長友、最初で最後の出場となる槙野、川島がやらかしているので相対的に評価上昇中の吉田、世界基準の頼もしさ酒井宏と並びます。
中盤にはたぶん最後の出場となる宇佐美、日本のエンジン柴崎、「ウー、ワンワンワンワン!(※たぶん最後、の意)」山口蛍、たぶん最後の出場となる酒井高と入り、2トップには怪我の状態に不安のある岡崎と、たぶん最後の出場となる武藤を並べます。相手の分析を無為にするくらいの大胆な変更は吉と出るのか凶と出るのか。「凶と出ないでくれー!」「凶ダメ絶対!」「吉!吉!吉!吉!」と全力のお祈りを捧げながらの試合開始です。
↓ひええええ!ベスト16に行き損ねたら絶対に後悔する大胆布陣!都合のいい未来に賭けてきた!
#SAMURAIBLUE
— サッカー日本代表 (@jfa_samuraiblue) 2018年6月28日
STARTING LINEUP
GK川島 DF長友・酒井(宏)・槙野・酒井(高)・吉田 MF柴崎・宇佐美・山口 FW岡崎・武藤
2018FIFAワールドカップロシア
6/28(木) 23:00Kickoff
フジテレビ系列で全国生中継#jfa #daihyo #夢を力に2018
👇大会情報はこちらhttps://t.co/UQNqByr1oI pic.twitter.com/zkeOwGkFh1
ベスト8に行くことだけを考えたらココで絶対に休みたい!
ベスト8に行くことだけを考えたらココで出場停止は出したくない!
ベスト8に行くことだけを考えたらココで負けてもしょうがない!
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いきなりドーンとポーランドが蹴ってくるなか、日本は素早い動き出しでこれを封殺。基本的には動き回る日本とじっと待ち構えるポーランドという構造でのにらみ合いがつづきます。ハーフラインを超えてもボールを奪いにこないポーランドと、それならばコチラもとゆったりボールを回す日本。暑さも意識してでしょうか、省エネの立ち上がりです。
そんななか、ガバガバと空いた隙間が見えるポーランドの布陣。前半12分にはドリブルで仕掛ける武藤が、走り込む宇佐美に合わせられれば大チャンスという場面を作り、いきなり得点の匂いを感じさせます。DFラインと中盤との間に大きなスペースがあり、寄せは遅い。日本の選手はいい形でボールを持つことができる状態。簡単に攻められそうで、ウズウズします。ウズウズしたのでガンガン攻めてしまいます。前半13分には枠の隅に飛ぶ武藤のシュート、前半16分には酒井高のシュートと、次々にポーランドゴールを脅かしますが、得点は奪えず。
一方ポーランドは、攻守の切り替えは緩慢で、連動した動きでの崩しというものも見られません。のっそりとして動かない。レバンドフスキは脅威であるものの、しっかりセットした状態であれば十分に対抗できそう。あえて言えば日本が攻撃した際に、柴崎があがる&山口蛍が骨かフリスビーか何かに突進していくことで、中央に穴が開くパターンが怖いか。そう思うと、むしろ日本にどんどん攻めさせているという見方もできそうです。
そんななかで迎えた前半32分、ポーランドのカウンターの場面。ボランチ2枚がともに持ち場を離れた状態の日本は、中央を突破されると、外へ展開⇒中へクロスと振られて最後はグロシツキのヘッドを許します。いいコースへと飛んだヘッドでしたが、これをGK川島が右手一本でかき出しました。ゴールラインテクノロジーで見ると、ボール半個ぶんまでラインを割るギリギリでのセーブ。「ナイスセーブ!」「帰国を許す!」「そのセーブをセネガル戦で見せていれば、もう突破は決まっていたのが…」と、これまで非難と嫌味のオンパレードだった心ないインターネットの空気さえも変えてみせました!
↓日本を救うビッグセーブ!守護神・川島が帰ってきた!
GK川島がビッグプレーで日本ゴール守る!
— 読売新聞YOL (@Yomiuri_Online) 2018年6月28日
【記事→】https://t.co/0Vzqyk5N3H
#川島さん #worldcup #daihyo #SAMURAIBLUE #ポーランド #JPNPOL pic.twitter.com/SZ3Efb2GwI
勝ち上がるチームはどこかでこういうビッグセーブがある!
指揮官の信頼に応え、日本の不安を払拭した!
結局前半は0-0での折り返し。このグループリーグ全体を通じても上位に入るであろう塩試合でした。他会場のコロンビアVSセネガル戦も0-0ということで、ベスト16進出がどこになるかはまったく見えない状況です。日本は前半かなり動いて点を取りに行きながら取れませんでしたが、気温35度という環境も含めて、そのあたりがどう出るか。このまま塩漬けで終わるなら結構ですが、何か間違いがあったときは日本だけ一方的に疲れていそうで怖いな、というイヤな雰囲気も漂います。
↓暑さ対策なのか、水を大量にクチに含み、全部吐き出す槙野!
ほぼこぼす人 pic.twitter.com/qdIB1T7LAq
— 見学だじゃれ構内証マン (@Geda_2) 2018年6月28日
飲みたいのか飲みたくないのかwww
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後半に入ると、イヤな雰囲気は加速します。後半2分に、もともと足を痛めていたという岡崎の状態が悪化し、大迫との交替を余儀なくされたのです。そしてポーランドの動きというのも前半とは異なります。棒立ち気味だった前半とは違い、ボールへの寄せは早く、自由にボールを持たせてはくれません。攻撃でも圧力を高め、いかにも「後半勝負」といった様相。後半8分にはカウンターからあやうく川島が飛び出して防ぐ場面など、じょじょに主導権はポーランドのものに。
↓日本も槙野のオーバーヘッドなどでゴールに迫るも、入る気せず!
このオーバーヘッドは要らなかったwww#daihyo pic.twitter.com/ihsHdDq31R
— はなたろう (@hana_taro2014) 2018年6月28日
よかったな!いい思い出になって!
惜しかった惜しかった!
試合が動いたのは後半14分。中盤でのせめぎ合いでアッサリと逆を突かれた山口蛍がファウルでフリーキックを与えた場面のことでした。セネガル戦では世界一のオフサイドトラップも見せた日本でしたが、ここは普通にいきまして、普通に蹴り込まれてしまいました。人数は十分に足りており、特に外される動きもなかったのですが、最終的には相手をフリーにしてしまいました。うーん、困った。
↓絶対に与えたくなかった先制点を与えてしまった!(1分10秒頃から)
うへー、酒井高と山口蛍と槙野と武藤と宇佐美をいっぺんに替えるにはカードが3枚足りない!
ギャンブルジャパン、大ピンチや!
このままなら敗退となる日本は、失点を受けて乾を投入しますが残るカードは早くも1枚のみに。前半に動きすぎた影響、酒井高と山口蛍がいつもどこかに行ってしまっているという構造的弱点、自分から進んで孤立する武藤、槙野、不慣れなシステムをギャンブル採用したことがここにきて裏目に出ました。攻め手は乏しく、展開は遅く、選手たちにも苛立ちが募ります。後半29分にはカウンターから「レバンドフスキの動きしか見ていなかった」槙野の裏を取られ、あわや失点という大ピンチも。追いつくどころかトドメを刺されそう。
しかし、ここで思わぬ朗報が。ポーランド先制の報を当然知っていたであろうコロンビアVSセネガル戦で、コロンビアが頑張って先制したのです。「引き分けで両チーム勝ち抜けでどうでっしゃろ」という談合よりも、自力で突破を取りにきた。1位突破を目指すコロンビアにとっては当然の頑張りですが、さすがのしぶとさです。これにより、日本はフェアプレーポイントの差でセネガルをかわし、再び突破圏内へと入ります。
ここで西野監督はこの試合最大のギャンブルにうって出ます。後半37分に長谷部を投入すると、「もうこのままでいい」と0-1のまま負けることを指示したのです。セネガルが追いつけば再逆転を許すわけですが、それでもいいと。向こうの試合がこのまま終わることに全力ベットして、0-1の負け、フェアプレーポイント差での勝ち抜けという細い道を進むのであると。
「他会場は気にしないどころか、ガン見やんけ…」
そこからの10分あまり、日本は露骨にペースダウンし、ポーランドに意図を伝えます。向こうも勝てばOKということか、これにお付き合いしてくれます。日本がダラダラとボールをまわし、ポーランドはそれを棒立ちで見守るという時間。「これが勝負」と世間は言うのでしょうが、非常に微妙な選択となりました。全部が自分に都合いいほうにまわることだけを期待するギャンブル。「セネガルが追いついたらしゃーないっすな」という割り切りを褒めるべきなのかもしれませんが、万一があれば悔やんでも悔やみきれないあやういギャンブルでした。
↓この選択について書き始めると長くなるのと、たぶん気分の悪い水差し野郎の話なので、同じ話を再掲しておきます!
スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム : なでしこJAPANワールドカップ出場権獲得!最後のボール回し5分間のモヤモヤ解消のためアジア制覇を強く期待の巻。 https://t.co/bfAKkwLwOI pic.twitter.com/hUtYALuo9m
— フモフモ編集長 (@fumofumocolumn) 2018年4月13日
みなさんのおっしゃることはわかりますけどね!
大ブーイングのなか、日本は0-1のまま、警告も受けずに試合を終わらせました。ポーランドもまたブーイングのなかで、このまま勝ち切る道を選び、最後は監督の指示で選手が倒れ込むという振る舞いも見せました。不本意ながら両者に利がある0-1決着。その数分後、他会場でのコロンビアVSセネガル戦はコロンビアが1-0勝利で決着し、日本代表はベスト16進出を決めました。ここまでに積み上げた勝点、警告少なく乗り切った戦いぶりを活かした、ルールに基づく正当な勝者として。
負ける可能性も含めて飲み込んだ、まさにギャンブラーの戦い。主力は休むことができ、出場停止も生まず、ベスト16に進出したのですから、あやういギャンブルにうって出ただけのリターンは確かにありました。しかし、このギャンブルはすでに次の勝負に仕掛かっています。勇敢なコロンビア戦、美しいセネガル戦で得た「日本のサッカーは素晴らしい」という声、誇らしさ、笑顔、後味……ここまでの払い戻し全額を再びコインに替えて、日本代表はベスト8進出に賭けました。ある程度の払い戻しで満足するのではなく、史上最大の払い戻しを得るためにこそ、この不本意なギャンブルにうって出たのです。
こうなった以上、日本代表を信じて、その結果を見守りたいと思います。願いは「日本代表は、日本のサッカーは、素晴らしい」と思って締めくくれる大会になることだけ。史上最高成績を獲得して史上最高に誇らしい日本代表となることができたなら、この日浴びた大ブーイングを雪ぐこともできるでしょう。信じて、待ちたいと思います。
↓試合後の指揮官は悪びれず胸を張るわけではなく、普通にしどろもどろ!
次、次、次!
次の試合で、この選択に後悔の残らない戦いをしよう!
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4年に一度、ここでしか出せない生涯最高を出そう!勝ち負けよりも、生涯最高を目指して!
15分以上残して戦いをやめて他会場の結果にベットするという判断はよっぽどの博打好きしかありえない。
選手のメンタルに悪影響が入ってないことを祈りつつ次の試合の勝利を願います。