働き方改革法が成立 脱時間給や同一賃金導入

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2018/6/29 11:48
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 政府が今国会の最重要法案とした働き方改革関連法は29日午前、参院本会議で可決、成立した。残業時間の上限規制や、正社員と非正規の不合理な待遇差を解消する「同一労働同一賃金」、高収入の一部専門職を労働時間の規制から外す「脱時間給制度」の導入を柱とする。日本の労働慣行は大きな転換点を迎える。

 働き方改革法は28日の参院厚生労働委員会で、与党と日本維新の会などの賛成多数で可決した。立憲民主党や共産党は、島村大参院厚労委員長(自民)の解任決議案を提出して採決に抵抗したが、決議案は与党の反対で本会議では扱われないことになった。参院野党第1会派の国民民主党は決議案に加わらなかった。

 参院厚労委では、働き方改革法案に関する要望や監督指導の徹底を促す47項目の付帯決議を可決した。脱時間給制度を導入した事業所全てに労働基準監督署が立ち入り調査するなど、野党が導入に反対してきた脱時間給制度に関する13項目が盛り込まれた。国民民主党、立憲民主党も付帯決議には賛成した。

 働き方改革法は労使の代表が参加した「働き方改革実現会議」の実行計画に沿ってつくった。労働基準法など計8本の法律を一括で改正する。長時間労働を是正するため、残業時間の規制は「原則月45時間、年360時間」と定める。繁忙期に配慮し、上限は年間で計720時間、単月では100時間未満に規定する。違反した企業には罰則を科す。大企業は2019年4月、中小企業は20年4月から適用する。

 同一労働同一賃金は、正社員や非正規などの雇用形態に関係なく、業務内容に応じて賃金を決める制度だ。基本給は勤続年数や成果、能力が同じなら同額とする。休暇や研修も同様の待遇を受けられるように改め、通勤・出張手当も支給する。大企業が20年4月、中小企業は21年4月から導入する。

 法案審議の最大の焦点となった脱時間給制度は、年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタントなどの専門職が対象となる。残業代は支給せず、成果で賃金を決める。無駄な残業を減らし、労働生産性の向上につなげる狙いがある。健康確保措置として「4週間で4日以上、年104日以上」の休日確保を義務付ける。自らの意思で制度を離れることができる規定も設ける。19年4月から始める。

 安倍晋三首相は今国会を「働き方改革国会」と位置づけ、法成立に強い意欲を示してきた。しかし、厚労省の労働時間調査に不備が見つかり、同法案の柱だった「裁量労働制」の切り離しを2月末に決めた。衆院では5月31日に本会議で法案を可決し、参院に送付していた。

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