岡崎(9番)が47分に負傷でピッチを去る。交代出場の大迫もここ2試合のキレはなかった。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

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[ロシアW杯グループH] 日本-ポーランド/6月28日/ヴォルゴグラード・アレーナ(ヴォルゴグラード)
 
 ベスト16入りを懸けた一戦で、西野朗監督は博打を打った。なんと、セネガル戦のスターティングメンバ―から6人を入れ替えたのだ。最初の2試合はサブだった槙野智章、酒井高徳、山口蛍、宇佐美貴史、岡崎慎司、武藤嘉紀を、ポーランド戦で抜擢したのである。これで負けるようなら決勝トーナメントに行っても到底戦えない、そんなメッセージが含まれているのだろうか。いずれにしても、指揮官は大胆な決断をした。
 
 一方のポーランドもコロンビア戦からスタメンを5人変更しており、ある意味、チームの総合力が問われる試合となった。ちなみに、日本で3試合続けて先発したのは川島永嗣、酒井宏樹、吉田麻也、長友佑都、柴崎岳の5人だった。
 
 システムも4-2-3-1から4-4-2に変更した影響もあり、前の2試合と比べるとチームのパフォーマンスはいまひとつだった。前半こそボランチの山口とCBの吉田を中心にポーランドの攻撃を撥ね退け、32分にはGK川島のスーパーセーブでピンチを凌いだが、後半になると猛暑のせいもあって「きつかった」(山口)。
 
 個のパフォーマンスに向けると、特に酷かったのが左サイドハーフの宇佐美だろう。失点にならなかったものの、53分にカウンターを受けた際の戻りの遅さは首を傾げざるを得なかった。シュートまで持ち込むシーンも少なく、明らかに精彩を欠いていた。
 
  ひとつの誤算は岡崎の負傷交代(47分)だろう。貴重なカードの1枚をこのタイミングで使ったうえに、代わりに入った大迫勇也は試合の流れに乗れず、2トップを組んだ武藤との連係がスムーズではなく、宇佐美も乱調と後半は特にボールの収まりどころがない印象だった。
 
 頼みの柴崎も珍しく細かいミスが多く、59分には課題のセットプレーから失点。ここまで踏ん張っていた守備陣がとうとう崩されたことで、チームは大きなダメージを被ったように見えた。この時点で、他方のセネガル対コロンビアは0-0。このままでは日本のグループリーグ敗退という状況になった。
 
 同点に追いつきたい日本だったが、宇佐美に代えて乾貴士を投入しても決め手を欠いた。それどころか、押し込まれる時間帯が続き、ロベルト・レバンドフスキに決定的なシュートを打たれる場面もあった。
 しかし、74分、朗報が届く。コロンビアがリードしたのだ。このままであればセネガルと同勝点、得失点差、総得点も同じながら反則ポイントで上回る日本が2位通過できる。
 
 そういう駆け引きもあり、日本はここからトーンダウンして積極的に攻撃を仕掛けないようになる。82分に長谷部誠を投入してからは「イエローカードをもらうな」という指示もあり、時間稼ぎのボール回しに終始した。果たして、これは正解だったのか。
 
 結果的に日本は0-1の敗戦、セネガルも同スコアで敗れたことで、グループHは1位がコロンビア、2位は日本という順位になった。
 
 セネガルが追いついていたら、日本はグループリーグ敗退を余儀なくされていただけに、かなりリスキーな賭けだった。2位通過できたからよかったものの、運任せのところが強い。
 
 今日の試合運びから判断するかぎり、さすがに6人を入れ替えたのは正解とは言えない。首位通過できるチャンスがありながら、ベストメンバーで戦わなかった点で納得できない部分がある。疲労を考慮して2~3人のチェンジなら理解できるが、やはり6人は多すぎる。その点で、この試合に関していえば6人変更というギャンブルは失敗に終わった。
 
 一方で、終盤のボール回しは肯定できる部分がある。あそこで勝負をしかけて0-2になっていたら元も子もない。イエローカードをもらわず、失点もしないということを考えると、ああせざるを得なかったのかもしれない。
 
 個人的に、スタジアムの特大ブーイングは心地よく聞こえた。グループリーグを勝ち抜くうえであのような駆け引きも必要だ。「これもサッカー」ということを改めて教えてくれる一戦だった。
 
 それにしても、西野監督は持っている。グループリーグの3戦を振り返ると、普段ではありえないことが次々に起こっているのだから。コロンビア戦の退場劇、コロンビアがセネガルを下してくれたこと──。そういう運もワールドカップを勝ち抜くうえでまた不可欠なファクターだ。
  
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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