島の人気パン店、21年の歴史に幕 島外の客からも惜しむ声 五島市 [長崎県]

4月1日で店を閉じる堀江さん夫婦
4月1日で店を閉じる堀江さん夫婦
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 五島市吉田町のベーカリー「パンのいえ ボンジュール」が4月1日、閉店する。老舗ホテルを支えた味を島に持ち帰り21年。体力面を考慮した決断で、店主の堀江建次さん(70)は「おいしいと食べてくれるお客さんのおかげでここまで頑張れた」と語る。店は連日、閉店を惜しむ島内外の客で大盛況。「職人技を学びたい」との声も掛かっており、今後は味の継承に積極的に出向いていく考えだ。

 店は接客担当の妻キサ子さん(70)と一緒に切り盛りしてきた。2人は新上五島町出身。3歳からの幼なじみで23歳の時に結婚した。建次さんは本場パリで修業後、東京や神戸のホテルオークラで約30年、ベーカリー部門を担当。「五島の人においしいパンを食べてもらいたい」と帰郷し、1997年に五島市に店を創業した。

 ワカメやヒジキといった海藻から取る酵母でパンを作ったり、毎年味の視察でパリに通ったりするなど、味への追求には余念がなかった。その甲斐もあり、フランスパンなど約30種類のパンは午前中には大半が売り切れる人気店となった。

 「パンのうまさは生地の仕込みで決まる。最高の作品を目指し、基本に忠実で丁寧な仕事を心掛けていました」と建次さん。午前2時半から仕込みにかかり、焼き上げまで一人でこなしていたが、無理が利かなくなり、店じまいを決めた。

 店頭に閉店を知らせる張り紙を出すと、常連客はもちろん、島外からも注文が相次いでいるほか、島内外の企業数社から製法の指導の依頼が舞い込んだ。建次さんは弟子がいなかったことから「自分の味を受け継いでほしい」と依頼を快諾した。

 「人生は前向きになれば必ず開ける。商売は初めてでしたが、行動することが大事ということを学びました。次のステージも楽しみたいです」。キサ子さんの言葉に2人は笑顔で見つめ合った。

=2018/03/27付 西日本新聞朝刊=