ナザリックの喫茶店   作:アテュ
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ご無沙汰しております。遅くなりました 再び紅茶メインです

(現在の時系列は9巻、帝国に赴いた前後の状況です。10巻でシャルティアらとドワーフ国にはまだ行っていない設定です)




5th Cup 「????」

「う~ん……」

 

喫茶店でアストリアの声が響く。

 

「ちょっとミルクが強すぎる……かな?コクが弱いなぁ」

 

淹れた紅茶を口にしながら悩んだ様子を見せる。先ほどから紅茶を淹れているが上手くいかない、どうしたものかなぁと目を瞑りながら考える。

 

「ティーテイスター」の職業クラスによって通常であれば問題なく紅茶を淹れられる。ただそれもゲーム時代のユグドラシルでの話である、いかにクラスを得ようとも該当する行動が全て万能になるわけではない。この世界においては「資格を得る」程度の認識でいた方が良い。「資格を得る」のは分かりやすい、料理スキルを持っていない者(一般メイド)が肉を焼いても失敗した実験のようにしかるべきルールが設定されている。では「資格を得た」ら必ず成功するのか?というところに関しては転移した後ではルールが捻じ曲げられている、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……悩んでてもしょうがないか、分かりそうな人に相談してみよう」

 

そう呟きアストリアが喫茶店を出て食堂に向かおうとする。だがちょうど出るところで扉が開いた、勢い余って開いた相手にぶつかってしまう。

 

「む?あぁ、すまないアストリア。タイミングが悪かったな」

 

折り悪くぶつかってしまった人?は至高の御方、アインズだった。思わずアストリアが青褪める、敬意を払うべき存在の至高の御方、今も慈悲深く我らを導いて下さる御方になんと無礼な事をしてしまったのかと愕然としてしまう。

 

アストリアは真っ青な顔をしているがアインズは珍しい事もあるもんだなとあまり驚いていない。とはいえ周りの雰囲気で察する、これはイカン流れだと。

 

「申し訳ございません!恐れ多くもアインズ様へぶつかる等!愚かな私めに罰を!」

 

アストリアがアインズの足元へ跪く。

 

「よい、気にするな私も前をよく見ていなかったからな。幸い……この場には私とアストリア、それにナーベラルしかいない」

 

そう言ってアインズがちらりと後ろのナーベラルを振り向く。

 

ナーベラルも少しばかり動揺している様子が見受けられる、どうやって同僚をフォローしたものかと悩んでいるようだ。

 

そんな怒るつもり無いんだけどなぁと思うが周りはなかなかそう考えてくれない、であればしかたがない軽い罰で済まそうと思いなおす。

 

「いえ、私は許されぬ事をしでかしました!以前アルベド様が仰られていたように信賞必罰は当然のことでございます。どうか……どうか……」

 

むちゃくちゃ泣きそうな雰囲気を醸し出すうわぁめっちゃ叱り辛い。そもそも反省している者へ過剰な罰などよろしくない、反省していない者にこそ罰は必要だが次に備えるべきならばそれは益ある失敗だ。リザードマンを相手にしたコキュートス然り。

 

どうしたものかなとアインズが少し考える、傍ではナーベラルとアストリアが緊張した面持ちで言葉を待っていた。

 

「ふぅむ……あぁちょうど良い。アストリア、お前に1つ罰を与えよう」

 

「はい!なんなりとご命じ下さい!」

 

「これから行く先で紅茶を飲むのだが、お前はそれを手伝ってはならない」

 

 

ご無体な

「そ……!か、畏まりました……」

 

思わずでかかった声を抑え承服の意を示す。「紅茶を淹れる」という事をアイデンティティに持つ私にとってあまりにも非情すぎた。とはいえ至高の御方へぶつかるなど不敬極まりない事をしてしまったのでは何も言えない、むしろ見合った厳罰をいただけたことに感謝すべきだろう。なにきっと飲まれる場所もナザリック外だろう、外の喫茶店等だろうなと必死に自己暗示をかけ考えをそらす。

 

「ちなみに行く先はシャルティアの住居……ナザリック第1層だ」

絶望しかない

 

 

 

予想以上に茫然自失とした様子のアストリアを引きつれアインズウールゴウンの指輪使い転移をするアインズ、少し厳しかったかな?と考えつつまぁ理由を聞けば納得してもらえるだろうと思いなおす。

 

 

「お待ちしておりました、アインズ様」

 

「うむ、シャルティア邪魔をするぞ」

 

ナザリック第1階層シャルティアのホームへアインズ、ナーベラル、アストリアが到着する。既にシャルティアは連絡を受けていたようで歓待の準備を整えていた。テーブルにはビスケット、クッキーを始めマドレーヌ、シフォンケーキ、サンドウィッチなどがケーキスタンドに載った状態でスタンバイされている。(貴族がアフタヌーンティで使ってそうなアレ)パーティでは演出効果が非常に高いが友人に誘われたアフタヌーンティーでは少し気後れするなと感じる。

 

とはいえせっかく用意してもらったものを無碍にさせるような事はしたくない、そういった思いを払い話しかける。

 

「ほう、なかなか凝った催しをしてくれているな」

 

「アインズ様にお越し頂けるという事で一般メイドに協力してもらいんした」

 

「正しい判断だ、任せられる仕事は一般メイドに任せ他の事をシャルティアが行う柔軟さはよりよいモノに仕上がる事へ繋がる」

 

「ありがとうございます!」

 

シャルティアがどこか安心した表情を浮かべ艶のある表情で笑う、あの笑顔が達成感での喜びならばこちらも嬉しいのだが何だか別な悦びもあるんじゃないかと思わず勘ぐってしまう。それはともかくと思いなおし、席に着く。

 

「そうだ、アストリアも連れてきたが良かったか?」

 

「もちろんでございんす、歓迎しますえ」

 

シャルティアがアストリアへ微笑みかけ、アストリアも恐縮した様子で目礼で返答する。

 

「今回はシャルティアに紅茶の話を聞きに来たのだが……シャルティアはどの程度ペロロンチーノさんから知識を与えられている?」

 

「嗜む程度……と申し訳ございんせんが淹れる方のスキルについては習得をしておりません」

 

シャルティアのステータスはガチビルドのためフレーバーテキストに合わせた職業を取らせる余裕は無かったかとペロロンチーノの考えを察する。

 

「嗜む程度か……、具体的でないフレーバーテキストでは差異が発生するのか……?いや、アストリアの知識と比較すればある程度の確認は出来る……いやすまん、今やるべき事ではなかったな」

 

「とんでもございません!アインズ様がナザリックのためにお考え頂いている事を深く感じとれ幸せでございんす!」

 

 

そう言いながらアインズは席に着く、同じくシャルティア、アストリア、ナーベラルも促す。さすがに最近では主がそう強く望んでいるということが周知されているためかシモベらも呼びかけに対してはスムーズに対応する事が多い、良い機会だなと改めてアインズは実感する。

 

「さぁ今日はシャルティアのエスコートだ。楽しませてもらうぞ?」

 

そう言ったアインズは期待を向けた目でシャルティアを見る。明らかに発情している顔になっているが……おかしいな、最近まともな顔見たかと素朴な疑問が生まれるが考えないようにする。

 

「はい!では早速でありんすが……お飲み物は如何いたしんすか?紅茶でと……伺っておりますが」

 

ふむと少しアインズが考える。そもそもシャルティアに茶会をお願いしたのはコミニュケーションのためだ、アルベド、デミウルゴス達とは話す機会も多いがここ最近シャルティアとあまり話していなかったようにも感じる。例の事故でシャルティアは深く傷ついている、いかに私の責任だとアインズが伝えても本人が納得しなければいつまでも引きずってしまうだろう。罰(ご褒美)は与えたが、聞けば先のゲヘナでも中心的な位置では無かったようだ。まぁ徐々に時間をかけておく事も必要だが、チャンスは与えるべきだろう何も外に攻めに行く必要など無いナザリック内でも出来る事、やってもらえる事はあるのだから

 

 

ここ最近アインズも少しシモベの考え方が分かってきた、仕事を与えられなければ落ち込むという事がスタンダードだ。仕事をしているものを評価する、当然バランスもあるがどちらかと言えば与えられていない者に対してのフォローをした方が良いというのが転移してから見ていた感想だ。

 

「うむ、紅茶だがそのチョイスを今回はシャルティアに任せようと思ってな」

 

「えっ」

 

思わずアストリアが声を出す。

 

「アストリア……失礼じゃないかえ?」

 

「失礼致しました!アインズ様、シャルティア様!」

 

焦ったアストリアだがそれ以上にシャルティアがピリピリしている雰囲気を醸し出す。周知の事実だが今回の茶会はシャルティア主催いわばホストである、それがアインズ以外によってテンポを崩されるのはあまり良い気分にはならない。

 

まだまだそういったところは慣れてなさそうだなとアインズがふと思う。

 

「よい、シャルティア気にするな元々私が詳しく説明せずに連れてきたのだからな、私の説明不足だ」

 

「そ、そのような……」

 

「あまり尾を引いても……な?さてアストリア先に伝えておこう、先ほど話した紅茶を淹れるな と」

 

「はい……」

 

怒られた後もあってかどこかしゅんとした表情をして答える、うーん本当に俺悪いことしてないか不安になってくるなと思うアインズ。

 

「お前達の出来る、出来ない事について確認をしたいと思っていてな」

 

「わっちどもに出来ぬことなど お気になさりんせんでくんなまし!アインズ様は命じてくだされば……」

 

「あぁ、すまないなシャルティア表現が良くなかった」

 

「……?…………?」

 

あまりシャルティアに意味が伝わっておらず混乱している同じように近くにいるナーベラル、アストリアも混乱した様子だ。

 

「そうだな……一言で言えば意図してやらない事を選択できるかという事だ。簡単なようでとても難しい。特にお前たちシモベらはナザリックに対して忠誠を誓ってくれている。これは私も疑っていない」

 

その言葉にシャルティア、ナーベラル、アストリアだけでなく護衛としてついている八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジアサシン)も歓喜で震える。慈悲深き御方に我らの忠誠を受け取って頂けるなどなんと身に余る幸せかとそっと涙すら流す者もいた。

 

「うわーお」

(そう難しい話ではないさ)

 

「「うわーお……?」」

 

しまった!逆だった!と思わず焦る。慣れてくると油断するなと気を引き締める。

 

「い、いや気にするな」

 

はぁと頷き返すシャルティア達。今までに無いミスに動揺するアインズだった

 

 

 

「例えばの話をしよう、シャルティアお前は私が死ねといえば死ねるか?」

 

「もちろんでございます!」

 

「そうか、では私が一度死に掛けなければ達成できない目的のためお前たちは座して待てるか?」

 

シャルティア達は呆然とした、主たる至高の41人のために尽くすべきと生まれた我らに障害への解決のために何もするなという回答が信じられなかったためだ。かつそれも世界級アイテムのような理不尽な力ではなく我らにも対応できる事に対してでだ、耐え切れるか全く自信など無い、考える事も恐ろしい事を行おうとした者を縊り殺したいという憎悪が沸きあがる。

 

「それが答えだよシャルティア。先ほども言ったがお前たちの忠誠心は疑いようも無い。だが時として我らの結びつきを利用しようとする不届き者もいるだろう。知恵者たれと生み出されたデミウルゴスやアルベド、パンドラズアクターであっても全ての事に対応できるというのはいささか楽観的だ」

 

「私はだいたいの事は自分で対応出来ると考えている。しかしそのだいたいの事を解決した際にお前たちに傷を負わないかが心配なのだ」

 

「私達の身等どうとでも!」

 

「出来てはいないだろう?シャルティア、蒸し返すのも何だがお前はずっと以前の事を気にしているように見える」

 

何も言えなかった確かにあの失態はアインズにお前に責は無いと名言されても抜けない針がささっているように忘れられなかった。

 

「意地悪な質問だったな、ただ病気のようなものだ。1度かかった病は次はかからないように予防しなければならない。それを疎かにすると自分だけではなく周りのものも巻き込んでしまう私もあの時の事で1つ学んだ

解決するにしても解決のやり方も上手く考えなければならないとな」

 

何も言えずに黙っているシャルティア、ナーベラル。言い表せない同様と喜びに震えながらアストリアが一歩前に出る。

 

「恐れながら申し上げます、私共はナザリックのシモベ……私などがおこがましいとは存じておりますがどの者もアインズ様へ命を捧げる覚悟は出来ております……それは許されない思いなのでしょうか」

 

答えを聞くのが怖くてたまらない風な表情でアストリアがアインズに問いかける。

 

「それはあくまで最終手段と考えよ、自己犠牲の精神は尊いものだが悪戯にそれを行うものは只の愚か者でしかない。厳しい言い方だがその手段を行った結果より悪い方向へ陥る可能性もある」

 

「シャルティアお前に暗殺任務を与えたとしよう交渉の場で、だ。その際にお前は最終手段で自爆技も視野に入れて行動するか?」

 

「もちろんでございんす!」

 

「ワールドアイテムアイテム相手ならばそれもやむなしという時もあるだろう。しかし交渉の場というのが非常にまずい、話し合いに来たものが自分に刃を向ける事ばかりを考えている等知れ渡れば我々と交渉しようと考える者はいなくなるだろう」

 

「アインズ様、恐れながら質問がございます」

 

「ほう?珍しいなナーベラル、良い言ってみろ」

 

「アインズ様はなぜ御力を使わずに対話という手段を取られるのでしょうか。我らが見ぬ強敵の可能性という事を示唆されていましたが、あまりにもこの世界の者達は脆弱です」

 

「ふむ、良い質問だ。そうだな……」

 

え、強敵がいるかもしれないってだけで十分じゃないか……?まだまだ認識の差がナザリック内のシモベとあるな……

 

「今私が言える事は2つだ。1つはまだ見ぬ強敵の可能性、もう1つは何だと思う?ナーベラル」

 

「……恐れながらアインズ様の御力でなし得ぬ事が想像できません……」

 

「ある意味答えに近いな?惜しいなナーベラル」

 

意外な返答にナーベラルだけでなくシャルティア、アストリアも驚く。

 

「答えそのものかもしれんが、力がありすぎるからだよナーベラル」

 

「力が……ですか?」

 

「そう、我々の持つ力がこの世界で圧倒的な存在である事はほぼ確定だろう。凄まじい力を持つという竜王クラスでもナザリックの力を使えば容易い。しかし圧倒的な力とは時として思いもよらぬものまで破壊してしまう可能性がある。私はそれを危惧しているのだよ」

 

セットされた空のティーカップを持ち上げてアインズは話を続ける。

 

「それは我々がこの世界で新たに得られる可能性を摘む事に他ならない。代表的な例では生まれながらの異能(タレント)、その地でしか得られない物質等だな」

 

そうなんだよなぁ……ここだけの話、帝国近くの山で紅茶を作ってるって聞いたんだよなぁ。調べたところなかなか興味深かった、何だよジルクニフブレンドってどんな味だ!気になるぞ!

 

思わず沈静化が起こってしまうがとっさに誤魔化す。さすがにアインズも紅茶のために侵略戦争を起こすのは少々やりすぎではないかと思うのは本心だった。

 

「 流石はアインズ様……あちきらには考え至らぬ事でありんした。正に智謀の王…… 」

 

「それはやめてくれ……」

 

小さくつぶやくアインズだった。

 

 

 




ご報告が遅れましたが無事、紅茶検定合格しました。初級と中上級どちらもなんとか。

いやー、紅茶以外も聞かれたので結構あせりました。

まず試験前に車の事故をしたっていう時点でもうね……

初級の試験内容に紅茶の成分を~ってのがあったんですが、当然答えはカテキン。緑茶にも含まれてるあれです有名ですね。

俺が選んだ答えはカロテンでした。ニンジンじゃねぇか!



動揺が現れてて自己採点の時にちょっと笑えました







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