ナザリックの喫茶店   作:アテュ
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どうも、ご無沙汰しています。

色々と繁忙シーズンだったためてんやわんやでした

ぴゃーぴゃーっと書いていたら書けたため投稿です

忘れないうちに次を投稿したいですね(戒め)


コーヒー編 前半

「よし、掃除終わりっ」

 

第9階層の喫茶店。通称ナザリックの喫茶店で一般メイドのアストリアが満足そうに店内を眺めていた。

 

 

ここ最近特に来店される方が多い、自然と力が入る。そんな事に関わらず全力を尽くすことが真の忠義というものなのだろう。自分はそこまでストイックになり切れない。デミウルゴス様やコキュートス様はそういった考えをお持ちだろうなと尊敬してしまう。

 

 

とはいえもてなすならば多い方がやりがいがあるのは正直なところだ。以前はぶくぶく茶釜様、やまいこ様、餡ころもっちもち様、至高の41人の方々が足を運んでくださっていたが少し前までは残念ながら足が遠のかれていた。

 

最後まで残ってくださったモモンガ様……いえ、アインズ様もこの喫茶店に来てくださったのは何時が最後だっただろうか。至高の41人に奉仕するべく生まれ、最後に残られたアインズ様へお仕えするために私たちシモベはここにいる。かの御方々に作られた身、この喫茶店を管理する栄誉を与えられた身でありながらなんという不遜な考えだろうか。思わず自己嫌悪してしまう。……とはいえ、ここ最近は実に楽しい毎日だ。主であるアインズ様は当然だがナザリックの同胞も利用してくれとても賑やか。特に守護者方のお話はとても興味深い、私も至高の御方々の○○○様に作られた身。同じ立場の方々に作られた守護者方のみが知られる事もあるだろうがこういった場ではちらりとお話頂けることもある。

 

役得だなと思わずにやりと笑う。いけないいけない手を動かさないとと気持ちを切り替える。

 

今日は茶葉の在庫確認、備品の申請、副料理長へ新メニューのご相談……あと何があっただろうか。あぁそうだ、この前入荷したものを確認しなければ。

 

手を動かしながらアストリアはこの後の予定を頭に浮かべる。いっぱいやる事があるなぁとふと顔が緩んでしまう。至高の方々へ尽くすべく行動しお誉めいただければなんと光栄なことかと期待してしまう、いけないいけないさっき反省してすぐこれだ。ご褒美目当ての仕事などシモベとしてあるまじき姿勢、恥知らずにも程がある。

 

気持ちを切り替え、提出する書類をまとめる。書類ごとはこれで終了だ、次は……と思ったところで先日取り寄せて頂いたものをじっと見る。「コーヒー豆」だ、先日アルベド様から指示がありこちらについても品質を検分しなさいとのことだ。理由は直ぐにわかる、非常に光栄な事に私がご案内させて頂いた紅茶にアインズ様はひどく興味をお持ちくださっている。であれば同じ嗜好品のコーヒーにも興味を持たれる可能性がある、ならば事前に準備しておくのは当然の事だろう。

 

「うん、一度淹れてみよう。まずは飲んでみないと始まらないだろうし」

 

さぁ準備をしようというところで喫茶店のドアが開く音がした。

 

「申し訳ありません、少々お待ちくだ……デミウルゴス様?コキュートス様」

 

「失礼するよ、席は空いているかな?」

 

「邪魔ヲスル」

 

そう言いながら入ってこられた方々は守護者であるデミウルゴス様、コキュートス様だった。珍しい……というほどでもないがよく利用されるのは副料理長がオーナーのバーと聞いている。ただ最近はとあるバーテンダーのサービスがお気に召しているとも聞いた。私も見習わせてもらおう。

 

「あぁすまない、準備中だったかな?」

 

「……あっ失礼致しました。こちらは新商品の試作を時間のある時に行おうとしていただけなので」

 

デミウルゴスがアストリアの用意していたカップを見てふと問いかける。

 

「ほぅ……試作でしたか」

 

「? は、はい」

 

思わず何かミスをしてしまったかと不安になる。

 

「良かったら試作を我々にも試させてくれないかな?」

「確カニ気ニナルナ」

 

「そのような……まだまだ守護者の方々へ出せられるような出来栄えではございません」

 

「いえいえ、構いませんよ。少々気になる事もありますしね」

 

デミウルゴスがにこりと一般メイドを安心させるように笑いかける。

 

「簡単な話ですよ、我々守護者は外の事に対しては万全の体制で臨んでいるといえますが中の事に対してはまだまだアインズ様にご満足頂ける内容とはいえません」

 

「ウム、ゲヘナハデミウルゴス主導デ成功シタ。リザードマンニツイテモ最初ハ失敗シタガ統治ハ順調ダ」

 

「ええ、外的の要因についてはおおむね予定通り。まぁ……シャルティアの件は私も予想外でしたが」

 

それはともかくとデミウルゴスが話を戻す。

 

「内部の事……内政についてはまだまだアインズ様にお力を注いで頂いてる現状。至高の御方に仕える身として不甲斐なく思います」

 

デミウルゴス様が申し訳なさそうに零す。しかしどことなくその偉業をより拝見したいという雰囲気を感じる。

 

「そんな中、アストリアあなたがアインズ様へ行っている事は非常に満足頂けていると誰からの目から見ても明らか。であれば我らもそれに学ぶべきである事は必然でしょう」

 

「マチガイナイナ。アインズ様ハ先日モ執務室デ紅茶ヲ嗜マレテイタ、非常ニ楽シゲデイラッシャッタ」

 

外殻を震わせながら感心するような目でアストリアを見る

 

対して私は恐縮しっぱなしだ。何せナザリックにおいて至高の御方々を除けば最高位といえる守護者の方々にこうも褒められるなどそうそう無い。

 

守護者はナザリックのシモベに対し同胞として誰しもに敬意を持っている、それこそ相手がレベル1の一般メイド達でも例外ではない。むしろあの至高の御方々へ直接仕える事が出来る選ばれた存在として特別視すらある、今いる地下9層ロイヤルスイートも本来はギルトメンバーのリビングスペースであり立ち入る事を許されているのは一部のシモベ、一般メイドくらいだ。アストリアもそこまで敬意を払われているとは露とも思っていないが。

 

「あ、ありがとうございます。まさか守護者の方々にそこまでお褒め頂けるとは思いもよりませんでした」

 

「謙遜も過ぎるのはよくありませんよ、我々にはそれぞれ与えられた役割がありますがあなたはまさにその役割を果たしていると言える。慢心は論外ですが自信を持ってなんら恥ずかしくない結果です」

 

そう言ってデミウルゴス様がにこりとこちらへ微笑む。

 

「フム、トコロデ気ニナッテイタノダガ……ソレハ『コーヒー』カ?」

 

「は、はい。新メニューのほうを検討しておりまして、その一つにコーヒーの案があり副料理長へ提出後まずは試飲という形になりました」

 

「なるほど、ではそちらの器具は試飲のための……さらに練習というところでしょうか?」

 

「はい、仰る通りです」

 

相変わらずこの方は察しが良すぎると少し怖くなる。

 

「ふむ、ますますいいね。いやはや良いタイミングに出くわしたものだ」

 

「あの、デミウルゴス様?」

 

「いやいや、気にすることは無いさぜひそのまま練習を続けてくれたまえ」

 

「いえ、でも……」

 

「気にすることはない、どのみち副料理長へ提出は通る段階だろう?副料理長がやってみろというのならば何かしらの期待があるに違いない。その後ともなればそうであれば我々守護者も判断に加わる可能性は少なからずあるだろうしね」

 

「そう仰られると……でも……」

 

何だろう、ツボを買いそうなイメージが沸いた。ツボってなんだ壷って。

 

「ふむ……何か気になるのかな……?あぁ、すまない。いきなりこのようなお願いをするのは少々不躾だったね。失礼した、ウルベルト様がコーヒーに少々こだわりがあったのだよ」

 

「「ウルベルト様」」(ですか!?)ガ!?

 

驚いた、至高の御方の1人であるウルベルト様がコーヒーに興味をお持ちだったとは。となると興味を持たれるのは仕方が無い。

 

「私モソレハ初耳ダゾ、デミウルゴス」

 

「そうだね、すまない。とはいえなかなか話すきっかけも無かったんだ、許してくれ」

 

そう笑いながらコキュートス様に詫びるデミウルゴス様。

 

相変わらずの仲の良さが伺える。守護者という立場とは別な友人同士ともいえる距離感が見える。

 

「とはいえそういう理由もあってね、ぜひこの機会に学ばせて頂きたいお願いできるかな?」

 

 

そこまで言われては私も断りきれない、守護者というトップクラスの方々が相手とはいえ自分の専門分野については譲れない気持ちもある。向き不向きというやつかな、とはいえデミウルゴス様に何かを教えるというのは貴重な機会だぜひ今度シクススに自慢してやろう。

 

ドヤ顔を隠しつつ私がわかりましたと答えるとデミウルゴス様とコキュートス様によろしく頼むよと言われる。

 

さて、私も一般メイドの1人。もてなしするともなれば抜けがあってはならないなと気合を入れる。

 

 

 

「申し訳ありませんが少々お待ち下さい。器具の方などを準備させて頂きます」

 

「あぁ、時間に余裕はある。ゆっくりと進めてくれて構わないよ」

「ウム、手順ナドモ学バセテモラオウ」

 

コキュートス様はずいぶんとやる気のようだ。

 

「では……ご説明も交えて準備させて頂きます。普段コーヒーはよく飲まれますか?」

 

「いや、最近は知ってのとおり紅茶が多いね」

 

「ウム、水出シノアイスティー。アレハ素晴ラシイ口当タリダ」

 

おお、素晴らしいアインズ様だけでなくナザリック全体に紅茶ブームが巻き起こりつつある。

 

 

「ありがとうございます、では基本のところからお話させて頂きます」

 

「一般的にコーヒー豆を粉にして(挽いて)、そちらをドリップ(抽出)するという形が主流です。他にサイフォン式やフレンチプレス、エスプレッソなどがありますイメージとしましてはドリップはろ過するイメージですね。」

 

「ドリップの抽出にも色々ありますが……最もポピュラーなものはペーパーフィルターを使ったドリップ式です。人気の理由としてはペーパーフィルターが使い捨てで衛生面が良い点、後はペーパーフィルターだからこそのクリアな味わいです」

 

「ふむ……衛生面は魔法でどうにでもなるが……クリアな味わいというのが気になるね」

 

「はい、ほかにこういったドリップ式のもので抽出の方法はネル(布)、ステンレス繊維などがあります。ただこちらは旨みや香り、油分などを抽出できますがえぐみなどの雑味も抽出がされやすくなってしまいます。反面ペーパーフィルターであればえぐみなどはシャットアウトされやすく、旨みなどは少し弱くなりやすいですがクリアな風味になりやすいです」

 

「ホウ、クリアナ風味カ。好ミモアルダロウガ私ハソチラガ好ミダ」

 

「はい、仰られるとおりその透明感のある味わいが好評です」

 

「普段から飲むものでもあるだろうし、軽さは魅力の一つだね」

 

そう守護者の2人が答える。

 

「ペーパーフィルターを使う理由は以上です、次に豆ですね」

 

「最モ重要ナ要素ニ思ワレルナ」

 

「はい、とはいえ味に影響する要素としては私は後に考えております」

 

「ホウ」 「ほう?」

 

二人の声が重なる。

 

「では先に私が考える味の順番の要素をご説明致します。」

 

そうして近くにあったブラックボードへ2,3箇条書きを行う。

 

①抽出の温度

②豆の焙煎具合

③どこ産の豆か

 

(作者の考えによって変化はあります、現時点ではの考えです)

 

「順番の根拠としては、上位(数字が小さい方)であればあるほど味に与える影響が大きいと考えています」

 

「少々意外に思えるね……産地の影響が弱いとは」

 

「ウム、焙煎具合トイウノハ分カラナイデモナイガ。抽出ノ温度トハ……盲点ダッタナ」

 

「そうですね、以前別の方にご説明をした時にも同じ感想を頂きました。もちろん産地によっては影響が強いものも多いです、イエメンのモカマタリなど小ぶりな豆で特徴的です。味わいはフルーツを思わす酸味の味わいです」

 

「ぜひ味わいたいね、後ほど頼むよ」

 

「はい、もちろんです」

 

そう言ってアストリアが微笑みながら説明を続ける。

 

「では、①抽出の温度についてですが……まず先にこちらの方からご案内を」

 

「ざっくりとコーヒーの味わいですが、3種類に分けられます」

(作者の主観です)

 

・苦味よりのコーヒー

エスプレッソが代表する一般的なコーヒーのイメージ。炭火焼の焙煎などもここに入る事が多い。エスプレッソは極端な例だが焙煎が深い豆はここにあたる。

 

・酸味よりのコーヒー

キリマンジャロ、モカマタリなどが使われる事が多い。アメリカン系(軽めの風味)も人気。

酸味という表現への誤解が非常に多く損を受けているコーヒー。

 

・マイルドめなコーヒー

上記二つに当てはまらないもの全てがここに入るのであんまり参考にならない(極論ですが)。ブレンドコーヒーとか店の名前が冠されているブレンドはたいていこれ、始めに選ぶ人も多いので万人向けに作られている事が多い。

 

「なるほど、分かりやすい。キリマンジャロだモカだと聞くことは多いですが単品でそれぞれ覚えていくのは少々手間ですからね。3つの傾向があると……」

 

「はい、では抽出の温度がどう関わってくるのか?ですが一言で言えば ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() です」

 

「ホウ、興味深イ」

 

「コーヒー抽出に使われる温度帯として、90℃~70℃程度が多くあります。その中でも90℃付近はかなり苦味が強く抽出されますね。私は苦手です」

 

そう言って >< と舌を出す。少し幼い仕草が自然で愛らしい。

 

「逆に70℃付近になってくると酸味が目立ってきます。ただこれは語弊がありますね、高い温度での抽出は苦味の成分が強く出ますが温度が高くても低くても酸味の抽出具合に大きな変化はありません」

 

「なるほど、だから苦味を主軸に答えていたのですね。酸味が強くなるというよりも苦味が弱くなると」

 

「はい、仰る通りです。さすがはデミウルゴス様」

 

やはり察しが凄い、守護者一の知恵者というのは噂だけではない。そう気合を入れるアストリア。

 

「繰り返しになりますが、高い温度での抽出は苦味を強く出します。なのでコーヒー豆の焙煎具合、産地によって温度を変えていく必要があるのです。例えばですが焙煎が深いコーヒー、苦味よりに作られた豆を低い温度で抽出するのはブレンダー(製作者)の意図から外れてしまうともいえます。最終的には好みですが」

 

「ナルホド、武人ノ読ミアイニモ通ズルモノガアルナ」

 

「君はいつでも武に例えるね……たまには変えてもいいと思うよ?」

 

そうデミウルゴスがコキュートスへ呆れたようにため息をつく。

 

「ふふっ、まぁこちらは要点としては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という点ですね」

 

「素晴ラシイマトメダ」

 

シンプルさが実に良いとコキュートス様が頷く、デミウルゴス様がやれやれといった様子で笑っていた。

 

 




どうもお読み頂きありがとうございました

今回は試しにとコーヒーの話を書きました。喫茶店だしね


後の話にも書きますがあくまで嗜好品なんで好きなように飲めば良いんです。ただそれ専門店が言うのもどうよ?ってなりますので

どう違うのか、どう違いを出すのか?が専門店の役割だと思っています。

ぜひ一つの基準として楽しんで頂けたらと思います

次の話は皆さんが①を忘れないうちにと心がけますね(震え声


ささいな事でも構いません、感想お待ちしております







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