「会社の屋上でOLがバレーボール」という光景を実際に目にしたことはないが、イメージとしてはあるだろう。誰に聞いても「ああ、あれね!」と言った感じで話しは伝わるのだが、実際に「会社の休憩時間に屋上でバレーボールをやったことがある人」に出会ったことがない。
砂漠の蜃気楼のようになにか靄がかった記憶の彼方に、屋上でバレーボールするOLの姿が見える。なんだろうか。僕が思い描いているOLの姿は夢なのだろうか。 そんなことを考えているとフツフツと「屋上でOLみたいにバレーボールがしたい」という欲望が湧いてきた。果たして実際にやったらおもしろいのだろうか?そしてなぜ他の競技ではなくバレーボールなのだろうか?
大学中退→ニート→ママチャリ日本一周→webプログラマという経歴で、趣味でブログをやっていたら「おもしろ記事大賞」で賞をいただき、デイリーポータルZで記事を書かせてもらえるようになりました。嫌いな食べ物はプラスチック。
前の記事:「女の子が武器を街中で持つとそこはもう異世界」 人気記事:「ふりかけの「ゆかり」が最高の調味料だと教えたい」 > 個人サイト ジャーニーとモアイとめがね 「屋上でバレーボール」という夢のような光景を実現するこれだ!この光景が僕は見たかったのだ!!
屋上でバレーボールをやるという、この夢のような光景を僕は実現したかった。「屋上でバレーボールをするOL」って誰もが映像としては知っているけど、実現させている人はきっと少ないはずだ。
ああ、僕の夢が叶った…!!よかった…楽しかった……!! ………ただこれだけだと記事が「屋上で バレーボールを やったよ」という今北産業(※)で終わってしまうので、「会社の昼休みにバレーボールをやるのは楽しいのか?」ということを考えながらやり、それから「他の球技を屋上でやったらどうなるのか?」ということも試していきたいと思う。 ※ 「今来たから三行で流れを教えてくれ」という意味。2ちゃんで昔良く使われていた。 みんなでOLっぽい格好をする みんなでOLっぽい格好をする
この日のために編集部の面々には会社員っぽい格好をしてきてもらった。ただ普段着ないスーツのせいか「笑顔あふれる職場です!」みたいな絶対に入社したくない胡散臭い写真になってしまった。あと余談であるが、真ん中で笑顔の石川さんは、この日一人だけスーツが似合いすぎてずっと「課長」と呼ばれていた。
屋上はこんな感じの場所を借りた。「会社っぽい!」「屋上っぽい!」「それっぽい!」という頭の悪そうな評価が飛び交った
ここまでで気づいた人もいるかもしれないが、僕と安藤さんはスーツではなくOLの格好をしている。あくまで「屋上でバレーボールをやるOLの気持ちが知りたい」からだ。けっして僕らにそういう性癖や趣味があるわけではない。
「屋上バレーボール」はどこで見たことがあるのか?謎の会社の謎な会議風景。
「屋上でバレーボールをやるOL」という映像は誰に聞いてもイメージが湧くようであるが、一体どこで見たのかどうやって知ったのかがまったく思い出せない。これから実際にやってみる前に「屋上でバレーボールをやっている人を見たことがあるか?何かドラマや映画で見たことがあるのか?」というのをそれぞれに聞いてみた。
【それぞれの屋上バレーボールに対するイメージ】
植木等がやっていたドラマで見た気がするなぁ。いずれにせよ昭和のテレビの風景だよね!!
美味しんぼでバレーボールやっているようなシーンがあった気がしますね。ただはっきりとは思い出せませんね…
五反田の会社にいたときに屋上がかなり広くて「バレーボールできそうだね!」って同僚と話したことがありますね。でも実際にやっている人はいませんでした。
ネットで調べると「サザエさんで見た」という意見もありました。僕はなんとなくショムニってドラマでそんなシーンがあったような気がするんですけど、かなり曖昧な記憶ですね…
僕は会社の前でキャッチボールはしたことありますけど、やっぱり昼休みにバレーボールをやっている人は、公園とかですら見たことないなぁ…
やはり誰もやっているところを目撃した人はいないし、何のドラマや漫画で見たのかハッキリとした記憶がある人もいないようだった。しかし、誰にこの話をしても全員の頭に同じイメージが浮かぶから不思議だ。もしかしたら僕らは「OLは屋上でバレーボールする生きもの」という記憶を謎の組織の陰謀で埋め込まれているのかもしれない。人類屋上バレーボール補完計画。
ということで、冒頭でも言ったように、実際に屋上バレーボールをここでやってみて「屋上でバレーボールをやると楽しいのか?」「会社の昼休みにバレーボールやるのはありなのか?」ということを確かめてみることにした。
ガタイの良い男がOLの服を着るとあのキャラになるちなみに安藤さんはOLの服装のサイズが小さすぎて、足がミチミチになっていた。
古賀さんが安藤さんを見たときに「ハンターハンターに出てくるキャラだ!!」と叫んだ。初めは理解できなかったが、次第に何を言っているのか理解できた。たしかに力を解放したときのビスケにそっくりなのだ。(わからない人は「ハンターハンター ビスケ 真の姿」で検索してみよう。めちゃくちゃ似てるから)
それを聞いて僕も安藤さんを見て笑っていたのだけれど、僕も身長180cm超えのすね毛ボーボーでOLの格好をしていることを忘れていた。目くそ鼻くそとはこのことだ。 屋上でバレーボールをやると楽しさよりも怖さが勝るということでいよいよ夢にまでみた屋上バレーをやってみることに。
屋上バレーボールと言ったら試合形式ではなく、円になって仲良くパスを回すイメージだ。みんなでキャッキャウフフしながら、キャピキャピと楽しそうにバレーボールをやるのだ。これだ!OLになってこのキャッキャウフフが僕はやりたかったのだ!!
……ああ、念のためにもう一度だけ言っておくけど、OLの格好をしたくてしているわけではない。あくまでOLの気持ちを知るための調査だ。どんなときでも仕事に手を抜かない男だと思ってほしい。 実際にやってみてすぐにわかったのだが、「ボールを屋上の外に落とせない」というプレッシャーがあるのでめちゃくちゃ怖い…!!
ボールを青空に向かって天高くあげている爽やかなイメージがあったのだが、柵の外に落ちそうでそんなことできるはずがなかった。
ドラマで見た楽しそうにOLがバレーボールをやる風景とは真逆だった。全員が「こわい」「私の方に投げないで!」「ああ!危ない!」「来るな!!!!」とまるでいつ爆発するかわからない爆弾でも投げ合うかのようにボールを扱っていた。映画のSAWとかで「硫酸入りのボールを投げ合う」みたいな拷問がありそうだな…とやりながら思っていた。 そして本当のことを言うと、ほぼバレーボールはやっていないのだ。危険と判断したので、両手ですぐにボールをキャッチするようにしていた。ボールを相手に投げて、それをキャッチして、投げて、キャッチして…という感じだ。なにこれ?老人ホームのリハビリ? 古賀さんがすぐに「私ムリ!怖い!抜ける!!」と言って心が折れてしまったので、屈強な変態OLによる変態のための変態バレーボールが始まった。屋上バレーボールは強靭な狂人しか生き残れない漢の聖域(サンクチュアリ)だったのだ。
トスで高く上げるのも怖いのだけれど、アンダーで打つ方がコントロールが効かないのでもっと怖い。最終的にはボールをワンバウンドさせて相手に返すようにする卓球風の謎の新競技でラリーした。周りから見たら服装含めて何がやりたいのかさっぱりわからないだろう。
「今日もうちの社員は元気でいいねぇ~」とバレーボールを見守る石川課長
ここまで「怖い」「緊張感がある」と言ってはいるが、決してつまらないわけでない。むしろ屋上でバレーボールをやるのはかなり楽しかった。天気もよくて気持ちがよかったし、屋上なので風も心地いい。汗もそれほどかかないで誰でもできるし、さらに着替えなくていいというのはかなり会社向きだ。たしかに昼休みにやるにはちょうどいいのかもしれない。
【屋上でバレーボールをやってみたそれぞれの感想】
屋上が広かったら全然ありですね!楽しい!
昼休みに運動っていいですね!よくよく考えたら朝から夜までずっとデスクに座っているって不健康すぎるよなぁ…
女子も男子も一緒のレベルくらいでできていいですね!上司とか部下の関係でもできそうですし。
落ちることがなければ昼休みにはちょうどいいかもね!
もしかしたら昔は隣の会社の屋上とかにボールがいってしまって、菓子折りを持って謝りに行く文化とかあったかもしれませんね
意見はいろいろと出たが、全員の意見を聞いて一致したのは「屋上が広かったら全然ありだけど、せまい屋上では怖すぎる」という結論だった。
バレーボールをやっている横でお弁当を食べるとノスタルジックな雰囲気がでる橋田さんから「前のオフィスではバレーボールじゃなくて、ボードゲームをやっているグループはいました」ということを教えてもらった。おそらく屋上でスポーツをやるのは危険で禁止なところもあるのかもしれない。それに今はスマホのゲームやボードゲーム、雑誌、Youtubeなど、時間を潰せる娯楽がたくさんある。わざわざ会社の休み時間にバレーボールをやる必要がないのかもしれない。
もしも屋上でバレーボールをやっている会社があったら、「お弁当を食べているグループ」や、「バレーボールをやっているグループ」などがいるこういった風景なのかもしれない。良い写真だ。
あと写真を白黒にするともっとノスタルジックな雰囲気がでて良い。
そもそも屋上に入るのを禁止している会社も多いだろう。それこそボール遊びして会社の損害になったら一大事だ。安藤さんが「屋上を開放したときに、隣のビルに飛び移って遊ぶ社員とかいたら困りますもんね」と言っていたが、そんなジャッキー・チェンみたいな社員は日本にはいないと思う。今すぐ会社辞めてアクション俳優になった方がいい。
OLと言えば屋上で会話するこういうシーンもドラマだとよく見かける。ちなみにこの写真のポイントは「背が低くて柵に手が届かないOL」を演じるために安藤さんがコンクリートブロックの上に立っているところだ。
実際にはこうやって屋上の柵につかまって会話するOLは存在するのだろうか?だんだんとOLって存在すらドラマの空想上のものなんじゃないかと思い初めた。
ドラマのOLっぽい写真は撮れたのだけど、二人が話している内容は、
僕「OLって屋上で何を話すんですかね」 安藤「株の話しとかするのかな?」 僕「多分しないですよ…普通は会社の文句とか言うんじゃないですか?」 安藤「うーん…『あのプリンター紙詰まりが多くてムカつく!』とか?」 僕「『やっぱりプリンターはゼロックスに限るわよね…!』って感じだったら最高の会社ですね」 という頭の悪すぎるものだった。 バレーボール以外の競技は適しているのか?少し話しがずれてしまったが、屋上でやるバレーボールがどんなものかわかったので、今度は「他の競技を屋上でやってみたらどうか?」ということを試していきたいと思う。バレーボールのイメージが強い屋上であるが、もしかしたらもっとふさわしい競技があるのかもしれない。
ただ他の競技をやって「楽しかった!」では何も得られるものがないので、「会社の昼休みにやるとしたらふさわしいか?」ということもしっかりと評価していきたいと思う。 No. 1 サッカーまずは屋上でサッカーをやってみる
バレーボールと同じように円になってパスを回すだけなので、ボールが落ちる心配がないのでかなり安心だ。ゆっくり会話しながらできるので、キャッチボールのようにリラックスしてできるのは良い。会社の昼休みにはちょうどいいかもしれない。
ただ一つだけ難点があり、革靴が汚れるし女性のサンダルやヒールでは足が痛くなるのだ。「昼休みにサッカーじゃなくてバレーボールをやるのは、手だけを使うからなのか」と全員が納得した。
これはさっきより安心できる!でもヒールだと足が痛くなる!!
柵から落ちる心配がないからいいですね。ただ同僚と二人でやってたらいつか飽きそう。
これ楽しいですね!良いですね!
総評:
屋上でサッカーをやるのは「あり」という結論だ。ボールを用意するだけで準備もいらないし、ボールが落ちる心配もほぼないから安全なのも良い。 No. 2 キャッチボール誰でも仲良く会話しながらできる遊びと言えばキャッチボールだ。
写真を見てもらうとわかると思うが、真後ろに隣のビルの屋上がある中でのキャッチボールは怖いのだ。なので、かなり近づき下投げで相手に渡すようにやることにした。上投げでやるのはかなりの勇気が必要だ…
あと関係ないのだが、キャッチしようとして屈むとスカートの中が見えそうで心配になる。OLの格好をしているうちに、だんだんと下着を見られるのが恥ずかしくなってきていることに気づいた。自分の中で開けてはいけない感情の扉が開きつつあるのを感じる… 橋田さんと古賀さんにもやってもらったが「バレーボールよりもっと怖い…」という評価だた。ちなみに端っこで見ている人がいると「仲間に入れてもらいなぁ…楽しそうだなぁ……」という哀愁をものすごく感じるということもわかった。
石川課長が一回やってみたところアワアワしながら「怖すぎる!やめましょう!!」と言ったのでキャッチボールは中止になった。恐怖が強すぎると人は笑顔になる。
ちょっとこれは屋上でやるのは向いてないですね…!
ボールが小さすぎると屋上には向いていませんね!
キャッチボールは良いですね!楽しいですね!
総評:
屋上でキャッチボールは完全に「なし」だ。公園などでやるのはちょうどいいかもしれないが、屋上は危なすぎる。本気でやったらドラえもんのカミナリオヤジみたいな人に怒られるのが目に見えている。 No. 3 卓球今度は卓球をやってみる。
「屋上で卓球なしかなぁ…」と僕は思っていたのだけれど、意外にも好評だった。理由はボールの軽さだ。これなら跳ねて隣のビルの窓が割れる心配もない。
しかし、油断していると…
ボールを落としてしまう。同じビルのベランダに落ちたのですぐにとりに行った。
「どうやって下の階に?明に行く?」「誰がとりにいく?」と楽しそうにはしゃぐ二人の大人。「見た目は大人、頭脳は子供」という逆名探偵コナンのお手本だ。
ちなみに女性二人がやっているときにも、僕はその仲間に入れてもらえなかった感じの哀愁が漂っていた。悲しき巨人OL。
これはいい!!今まで一番楽しい!!!
ボールが軽いから安心感がありますね!女性でも男性でも出来るところがいいと思います。
卓球は良いですね!楽しい!!
総評:
卓球は安全面からいっても「あり」だ。ゲームとして成り立つし、軽い運動にもなる。むしろバレーボールよりも向いているかもしれない。 No. 4 だるまさんがころんだ趣旨を変えて球技ではない遊びをやってみることにした。
球技は落ちてしまう心配があるが、昔ながらの道具を使わない遊びなら完全に安全である。屋上という限られた空間では鬼ごっこなどの走り周る遊びは出来ないので、だるまさんがころんだはまさにぴったりな遊びかもしれない。
石川課長から見た視点で体験してみよう…
徐々に変態が近づいてくる恐怖を…
恐怖を……(顔が猟奇的すぎる)
やってみると確かにおもしろいのだが「これを会社の上下関係がある中でやるのは気まずくないか?」「女子が鬼だったらタッチした瞬間にセクハラになりそう」「仲がいい人じゃないと動いたときに指摘し辛い」という意見がでた。
なるほど。一見して「屋上でだるまさんがころんだをやる」というくだらない行為でも、やってみないと見えてくるものがあるのだと改めて感心した。もっともなことを言っているが、自分たちの行動になにか理由をつけないと「何やっているんだろう」という虚無感に襲われ気が狂いそうになるのだ。
上下関係があるといろいろと気を遣いそうですね。完全に忖度の遊びになると思います。
上司とやるというより同僚とやる感じかもしれませんね!
だるまさんがころんだってあんまりやったことなかったけど、楽しいんですね!次は子どもとやろう!!
総評:
だるまさんがころんだはどちらかと言えばなしだ。「上下関係なくみんなで楽しめる」となるとやはりゲーム性が少ない球技に落ち着くのかもしれない。 あと気づいた人もいるかもしれないが、安藤さんは全部の競技に対して「楽しい」というメガポジティブなことしか言っていない。この記事の編集ミスやバグで「これ楽しいですね!」と毎回言っているわけではない。本当に楽しそうだった。
この狭い屋上のどこに隠れるか予想してみてほしい。絶対に予想が外れると思う。
橋田さんは室外機の裏に隠れた
僕は電気設備の下に隠れた。OLの服がどちゃくそに汚れた。
……
…………(もう言葉がでてこない)
かくれんぼは一応やってみたのだが、完全に「なし」だ。隠れる場所も少ないし、洋服も汚れるし、いいところがない。一度きりの遊びとしてはおもしろいかもしれない。しかし一回目で鞄を盾にして隠れる人もいるので、三回もやったら頭がおかしくなって飛び降りる人もいるかもしれないのでやらない方が良い。
最後はみんなでOLっぽく輪を作ってお弁当を食べた。
「これコンビニの新作のお菓子なの~?」「ウケる??」「インスタ映える??」 OLっぽい会話をしようとすると、なぜか語尾がIKKOさんみたいになるということもわかった。
屋上でバレーボールをするという夢が叶ってよかった!これだからインターネットは最高なんだ。他の競技もいろいろとやってみてわかったのは、「疲れない」「汚れない」「ゲーム性が少ない」「会話ができる」「誰でもできる」「上下関係を意識しない」とこれらの6要素が揃うと、屋上でお昼休みにやるにはちょうどいいということがわかった。
あとバレーボールってテレビ的にも「女性が楽しそうにやる」って雰囲気が伝わりやすいんだろうなーとも思った。ドラマの屋上のシーンのときにエキストラが卓球やっていたり、だるまさんがころんだをやっていたら内容が頭に入ってこない。アクが強すぎるのだ。さらに僕と安藤さんのようなOLの格好をしている男がいたら、それはもはやアクではなく毒だ。 同じ日に古賀さんが「外科医のドラマごっこ」という記事の撮影をやっていた。最後に情報過多で胃もたれしそうな写真が撮れた。
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