「外国人労働者受け入れ」は人手不足解消の解じゃない:「シンギュラリティには一生行きつかない」 安川電機・津田会長に聞く「ロボット産業の未来」 (1/5)

» 2018年06月28日 09時00分 公開
[中西享ITmedia]

 ロボットの応用範囲が広がる中、ロボットメーカー大手の安川電機会長で、2017年12月に国際ロボット連盟(IFR)の会長に就任した津田純嗣氏にロボットの果たすべき役割について聞いた。

phot 4台のロボット自身が、中央の水色の産業用ロボットを自動的に組み立てている(安川電機ロボット第1工場にて。写真は同社提供)

 AI(人工知能)を内蔵したロボットが、人間の能力を上回る「シンギュラリティ」の可能性については、「一生かかってもそこまでは行きつかない」と指摘。人間の仕事を奪うのではないかという懸念についても「マスコミの論調的に言われているだけで、科学、技術系の人でそう言っている人はいない。囲碁や将棋などの狭い分野では人間の能力を上回ることはあっても、ロボットに人間の代わりをさせようと思って取り組んでいる人はいない」と述べ、ロボットの果たす役割はあくまで人間を補助するものとの認識を示した。

「シンギュラリティ」とは

 米国の有名な発明家レイ・カーツワイル氏が、2029年ごろにコンピュータが人間の知性レベルに到達し、もしくは凌駕(りょうが)すると予測。45年には全人類の知能をAIが超えると主張し、「シンギュラリティ」は「2045年問題」とも言われている。

 三菱総合研究所が17年1月に発表した報告書では、AI技術が普及する2030年には、日本の国内総生産(GDP)は50兆円ほど増える一方、雇用は240万人減ると予測した。また、13年にオックスフォード大学のオズボーン氏らが発表した「雇用の未来」によると、今後10~20年程度で米国の雇用の約半分はAIやコンピュータによって代替されるリスクが高いと予測している。

中国は脅威

phot つだ・じゅんじ 東京工業大学工学部卒。1976年に安川電機入社。2005年に同社取締役、10年に社長、13年に会長兼社長、16年3月から会長。17年12月に国際ロボット連盟の副会長から会長に就任した。福岡市出身。67歳。 

――ロボットの市場規模はどのくらいか。

 ロボットのうち8~9割は産業用で、自動車の部品製造や組み立て、半導体・液晶の製造工程などで使われているものが圧倒的に多い。金額でみると、日本ではロボット単体で19年が約1兆円、周辺部分を含めるとその4~5倍になるだろう。台数では世界で200万台強が動いている。海外で一番旺盛なのが中国だ。順調にいけば、毎年15%ほど出荷台数を伸ばしていくだろう。

phot ロボット販売台数では中国が世界を圧倒している(国際ロボット連盟の資料より)
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