AIとロボットの再会が開く
それぞれの新章
人工知能(AI)とロボット工学は長らく、近いようで遠い独立した分野として発達してきた。だが、AIとロボット工学を結びつけることで、AIを次の段階へ進め、ロボットによる自動化の新たな扉を開くことになるかもしれない。 by Will Knight2018.06.28
ロボット・アームが一風変わった、果てしなく続く作業に取り組んでいる。黄金色に輝く山盛りの鳥の唐揚げの上を動き回って降下したアームは、唐揚げを1つだけ拾い上げた。アームはその後すぐにぐるっと回り、ベルトコンベアに乗って移動する弁当箱の中に唐揚げをそっと、優しく置く。
サンフランシスコに拠点を置く企業オサロ(Osaro)が開発したこのロボットは、これまでよりもはるかに賢いロボットだ。ロボットを制御するソフトウェアは、およそ5秒以内に唐揚げを拾い上げて弁当箱の中に配置するよう、ロボットに教え込んだ。平均的な食品加工作業員よりも速いスピードだ。このロボットは年内にも日本の食品工場に導入される見込みだという。
「ロボットの反乱」を懸念する人でも、近代的な工場の中に足を踏み入れるだけで、そんな反乱が起こる日はまだ遠いことが分かるはずだ。ほとんどのロボットは力強く、正確に動作するが、綿密にプログラミングされない限り何もできない。通常のロボット・アームは、所定の位置からわずかにずれた状態の物体を拾い上げるのに必要な知性を持っていない。ロボット・アームにとってなじみのないものを掴む作業はまったくの不得手であり、マシュマロと鉛の塊の違いだって分からない。ばらばらに積まれた山の中から不揃いな形の唐揚げを拾い上げるのは、ロボットから見れば天才のなせる業なのだ。
さらに、ロボットは最近まで、人工知能(AI)の進歩とはほとんど無縁だった。ここ5年ほどの間に、AIソフトウェアは画像を認識し、ボードゲームに勝ち、ほぼ人間の介在なしに人の声に反応できるようになった。訓練するための十分な時間が与えられれば、AIは新しい能力を独習することさえできる。一方、「AIの親類」とも言えるハードウェアのロボットのほうは、ドアを開けたりリンゴを拾い上げるのに悪戦苦闘している。
だが、その状況も変わろうとしている。オサロのロボットを制御するAIソフトウェアによって、ロボットは目の前の物体を認識し、つついたり押したり掴んだりしたときに物体がどう反応を示すかを観察し、その扱い方を決定できる。他のAIアルゴリズムと同様、このロボットは経験から学んでいく。市販のカメラと、近くに設置された高性能のコンピューター上の機械学習ソフトウェアを組み合わせて使うことで、ロボットは物体を掴む方法を効率的に見つけ出す。十分な試行錯誤を重ねることで、ロボット・アームは出くわす可能性のあるほとんどあらゆるものを掴む方法を学ぶことができるのだ。
AIが搭載された作業用ロボットによって、より多くの分野の仕事に自動化の影響が及ぶことになるだろう。AIロボットは、商品の仕分けや解梱、梱包といった作業で人間の代わりを果たすことができる。雑然とした工場内を動き回ることができれば、AIロボットはさらに多くの製造業の仕事を奪うかもしれない。それは反乱ではないとしても、革命と言えるのかもしれないのだ。「現在、数多くの実験がされており、人々は多種多様なことをロボットにさせようと試みています」と、ハーバード・ビジネス・スクールで製造業の動向を研究するウィリー・シーは述べる。「反復作業を自動化できる大きな可能性があります」。
AIロボットは、ロボットにとってだけでなく、AIにとっての革命でもある。AIソフトウェアを物理的な筐体に備え付けることで、AIは現実世界で視覚認識や発話を使い、案内できるようになる。AIはより多くのデータを取り入れることで、より賢く …
人工知能(AI)とロボット工学は長らく、近いようで遠い独立した分野として発達してきた。だが、AIとロボット工学を結びつけることで、AIを次の段階へ進め、ロボットによる自動化の新たな扉を開くことになるかもしれない。