名護市辺野古の新基地建設に伴い設定される米国基準の建造物の「高さ制限」について、「オール沖縄会議」は辺野古、豊原両区で制限を超える住宅が67戸に上ると発表した。店舗7戸、マンション4棟も制限を超えた。民間の建造物の制限超えの実態が明らかになるのは初めてである。
公共施設では国立沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)や久辺小、中学校などが制限を超えていたが、調査でさらに増えた。
本来なら政府が調査し、住民に説明するのが筋である。
日米両政府は新基地周辺の建造物を制限の例外扱いとする方向で協議しているという。安全性の根拠を示さないままである。
住民の不安を置き去りにした一方的な例外扱いを認めるわけにはいかない。
米国防総省の「統一施設基準書」では、滑走路の周囲2286メートルの範囲内で高さ45・72メートルを超える建造物を制限している。
新基地の滑走路は標高8・8メートルとなるため、54・52メートルを超える建造物は認められないことになる。
政府は米軍機の離着陸は基本的に海上を飛行ルートとすることで日米合意していると説明する。しかし実際は「気象条件や管制官の指示、運用上の所要などで場周経路から外れることがある」というのが共通認識である。
集落や、児童・生徒、学生らが学ぶ学校の上空をオスプレイなど軍用機が飛行する可能性があるということだ。
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建造物の「高さ制限」について政府は住民や学校などに説明をすることはなかった。報道によって明るみに出なければそのまま隠蔽(いんぺい)していたとみられても仕方がない。
建造物を例外扱いする一方で、沖縄電力には新基地着工後の2015年に、供用開始までに送電鉄塔と電線を移設するよう要請している。
政府は送電鉄塔について「航空機の運航の障害になる可能性がある」と説明しながら、高専などを含めた住宅などは基本的に海上が飛行ルートであることを強調して「高さを超過していることだけで危ないという判断はしていない」という。「二重基準」というほかない。
納得できないのは、新基地より先にできていたのは住宅や学校などである点だ。例外扱いすることでしか新基地を建設することができないということは、いかに立地が不適であるかを示している。
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政府の隠蔽体質はいまに始まったことではない。米側はオスプレイ配備を1996年には日本側に通告していたが、政府は環境影響評価の最終段階で初めて明示した。
普天間飛行場も米国の基準に反する。墜落の危険性を避けるため、滑走路の両端にクリアゾーン(土地利用禁止区域)を設定しなければならない。しかし普天間ではクリアゾーン内に学校や病院などの施設が存在する。「世界一危険な飛行場」なのである。
新基地は「高さ制限」だけを取ってみても、米国の基準に反する「欠陥」基地である。沖縄の「負担軽減」とはまやかしである。