ソニーが6月19日に発表した決算資料が、経済界に波紋を広げている。
同資料には、今年3月末までソニー社長兼CEO(最高経営責任者)を務めていた現会長の平井一夫氏に対して、約27億円という巨額の役員報酬が支払われていたことが記載されていたからだ。
その内訳は、基本報酬が2億4400万円。業績連動報酬が6億4700万円、社長退任にともなう株式退職金が11億8200万円、そこにストックオプションなどを加えて総額約27億円ナリ……。
これがいかに高額であるかは、ほかの会社と比較すれば一目瞭然。
たとえば、日産自動車のカルロス・ゴーン氏が17年3月期に受け取った役員報酬は10億9800万円。セブン&アイHDの鈴木敏文氏が役員退任時に受け取った退職慰労金は10億9000万円。日本を代表する経営者であるゴーン、鈴木両氏の報酬を合わせた以上の額を、平井氏はたった1人で受け取ったわけだ。
平井氏と言えば、12年に社長就任した当初こそ業績があがらず、社内外から批判を浴びたのは記憶に新しい。一部のソニーOBのあいだで「平井降ろし」を画策する動きもあったほどだが、じつはいまその評価は一変している。
ソニー幹部の一人は言う。
「一時は『オワコン』とまで揶揄されたソニーを復活に導いたのはまぎれもなく平井氏の功績です。なにより赤字を垂れ流す元凶であり、一時は完全徹底するとまで言われたエレキ(エレクトロニクス)事業を復活させたことへの評価は高い。
たとえば10年以上赤字を垂れ流し続けてきたテレビ事業について、平井氏が『規模を追わない』という方針を打ち立てて、高付加価値路線に舵を切って黒字化させた手腕は目を見張る。あまり注目されていないが、オーディオ事業も20年ぶりに前年度比で増収を達成した。この間、ほかの日本企業が続々とエレキ事業から撤退したり、事業売却を繰り返しているのと比べれば、その復調ぶりは突出している」
数値を見てもそれは明らかで、テレビ事業などを抱える「ホームエンタテインメント&サウンド分野」の営業利益(18年3月期)は858億円の大幅黒字のうえ、前期比で273億円もの増益を達成。
カメラ事業などを抱える「イメージング・プロダクツ&ソリューション分野」にしても、前期比で277億円もの大幅増益。いまや749億円もの営業黒字を稼ぐ重要な収益部門となっているのだ。