異次元緩和の副作用は累積的、注意深く見ていく:雨宮日銀副総裁

  • 今は副作用が効果を上回るに至っていると思ってない-インタビュー
  • 出口に向けた動きは早過ぎてもいけないし遅過ぎてもいけない

日本銀行の雨宮正佳副総裁(62)は、現時点では異次元緩和の効果が副作用を上回るとしながらも、金融機関への影響など中長期の副作用を注視する意向を示した。3月の副総裁就任後、初のインタビューに25日応じた。

  雨宮副総裁は「今は副作用が効果を上回るに至っているとは思ってないが、だんだん累積的にたまっていくものなので注意深く見ていく」と説明。2%の物価安定目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されており、政策調整が必要かどうか「毎回の金融政策決定会合できちんと議論して判断していく」と述べた。「必要な政策の調整は排除すべきではない」としている。

日本銀行の雨宮正佳副総裁

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  具体的な副作用としては、金融仲介機能に対する影響を挙げ、金融機関が過度なリスクを取ったり、逆に収益が圧迫され貸し出しなど適正なリスクが取れなくなったりしないか「よく点検する必要がある」と語った。金融資本市場の「価格発見機能に齟齬(そご)が発生しているかどうかも大事だ」とも述べた。

  異次元緩和が始まって5年たった今も目標達成への道筋は見えない。5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比0.7%上昇と目標の半分にも満たない水準にとどまった。

  日銀は7月に金融政策決定会合を開き、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で2020年度までの物価見通しを見直すとともに、物価の低迷が続いている背景について点検を行う。16年9月には、異次元緩和の政策効果と副作用を点検する「総括的な検証」を行って長短金利操作付き量的・質的金融緩和を導入したが、今回は「総括的な検証」は行わない見通し。

  雨宮副総裁は現在はコアCPIがプラス圏にあり、長短金利操作付き量的・質的金融緩和も円滑に機能しているとして、7月の会合で「総括的な検証」が必要ない理由を説明した。ただ「物価の上がりにくさは明らか」だとした上で、会合では円高の影響や企業の価格設定行動などを分析する考えを示した。

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  海外では金融政策の正常化の動きが進み、緩和の出口が見えない日本との距離は広がっている。米連邦公開市場委員会(FOMC)は今年2度目の利上げを決定し、欧州中央銀行(ECB)は資産購入の年内終了を決めた。日銀の資産は国内総生産(GDP)に匹敵する500兆円を超える規模に膨らんでおり、出口戦略の早期着手を求める声も根強い。

  雨宮副総裁は、市場には政策対応余地を作るため早めに出口戦略に取りかかるべきだとの声と、時期尚早だと主張する相反する二つの考えがあると指摘。出口に向けた動きは「早過ぎてもいけないし遅過ぎてもいけない」と述べた。

  現時点では出口まで「まだかなり距離がある」とし、将来的には「経済や物価の好転が続いて出口に向けた環境が少しずつ整っていく」とみており、出口へ向かう際は「詳しく情報発信していくことになる」と語った。

■ 雨宮正佳 1979年に日銀に入行し、金融政策の企画・立案を行う企画局長や理事を歴任。黒田東彦総裁の下で量的・質的金融緩和やマイナス金利、長短金利操作の導入を指揮した。クラシックに関する知識は玄人はだしで、就任前はピアノの練習時間を週に2、3回確保できたが、就任後は時間が取れないという。

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