体重が約270キログラムにもなるモリイノシシ(学名:Hylochoerus meinertzhageni)は、世界最大級のイノシシで、最も謎めいた存在でもある。
出っ張った頬と鋭い牙を持つこの動物は、めったに人目に触れずに暮らしていると、野生生物生態学者のラファエル・レイナ=フルタード氏は語る。ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもある同氏は、ほとんど研究されていないこの種をウガンダで追い続けている。
モリイノシシは、西、中央、および東アフリカに3亜種が生息していると考えられている。レイナ=フルタード氏は主に東アフリカで調査を行っており、今回カメラトラップ(自動撮影装置)で撮影された動画では、家族集団同士の交流の様子や、好んで多くの時間を過ごす場所などが明らかになった。また、モリイノシシは社会的な動物であり、3~4頭のおとなのメス、その子どもたち、優位のオス1頭、そして時には劣位のオス数頭を含む群れで移動することもわかった。(参考記事:「イノシシが牛と暮らすことにしたかわいい理由」)
「比較的大きな動物であるにもかかわらず、モリイノシシを見た人はほとんどいません」と同氏。それでも、食肉を得るため、モリイノシシを狙った狩猟がかつてないほど増えており、東アフリカにいる個体数は「驚くべき速度で減少している」という。
現存するほかの十数種のイノシシも同様の運命をたどっており、その多くがあまり知られぬまま減少しつつある。(参考記事:「世界初の希少イノシシ動画、もみあげが立派」)
レイナ=フルタード氏が親しみをこめて森の「不細工たち」と呼ぶ動物を救うため、どのような活動をしているのか話を聞いた。
――研究の最新状況について教えていただけますか?
私は2010年から毎年、ウガンダのキバレ国立公園に通っています。モリイノシシがどのように移動しているのかを研究し、群れが必要とする土地の広さや好んで食べる植物を知ることが目的です。直近の2シーズンは、カメラトラップの利用を増やすことで多くのデータを得ることができました。熟練したトラッカー(案内役)の協力を得て、徒歩による追跡もしています。
キバレ国立公園に隣接するトロ=セムリキ野生生物保護区では、25頭の群れを見つけました。キバレではいつも10~11頭だったので驚きました。これは良いニュースで、おそらく野生生物保護区の方がキバレより生息数が多いことを示していると考えられます。
モリイノシシは現在、密猟の危機にさらされています。2カ月前にキバレで罠にかかった大きなオスを救出しましたが、2日後に死んでしまいました。このオスは私たちが5年間観察していた群れのボスでした。(参考記事:「【動画】夜の密猟対策に画期的な秘密兵器が登場」)
――その罠はイノシシを狙ったものだったのですか?
そうです。まさに主にモリイノシシが生息している区域に仕掛けられていましたから。この動物の肉が好まれ、狙われているということです。密猟者はどこにでもいます。それが一番の問題です。パトロールを強化するなどの方法で、密猟と闘う必要があります。地域の人間の要求を満たすことができれば、密猟をやめさせられるでしょう。
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