かっぱ寿司「不自然な黒字」後の赤字転落
■一時的な黒字か、継続できる黒字か
会社経営は健康管理に例えることができます。健康診断で、必ず受けるのが血液検査です。血液を調べれば病気の兆候が見つかるでしょう。同じように、決算書で企業活動のお金の流れを確認すれば、企業が健全であるかどうかがわかるものです。
売上高と利益が伸びているということは、企業がそれだけ営業努力をしているということにほかなりません。それが2期、3期と継続していけば増収増益。このような場合、売上高よりも利益の伸び率が高くなります。なぜなら売上高ほど人件費などの固定費は増えませんから、利益の伸びのほうが大きくなるのです。
そのため、決算書を読むときには利益の増え方に注意してください。売上高は減っているのに利益が伸びているというのは不自然であり、原因は何かを探る必要があります。
1皿100円を中心とした低価格が売りものの「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトの決算書を例に見てみましょう。
■営業利益4.6億→25.5億→赤字5.2億円のカラクリ
有価証券報告書を確認すると、2015年3月期と16年3月期では、売上高は、約876.4億円から約803.2億円に減っていますが、営業利益は、約4億6000万円から25億5000万円に跳ね上がっています。何をしたかは損益計算書に表れています。人件費(給料および手当)を29.9億円(=227.4憶円-197.5億円)減らしており、リストラをしたと考えられます。
しかし、利益は出たものの、経営の危機的状況を業界関係者は敏感に嗅ぎ分けたのかもしれません。キャッシュフローを見ると、仕入れ債務が減っており、取引先が支払い条件を厳しくした可能性があります。
17年3月期も売上高の減少を食い止めることができず、営業利益、純利益ともに赤字に転落してしまいました。
16年秋には、ロゴマークを一新するなどブランド戦略の見直しを実施。これからの改革に期待したいところです。
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公認会計士
『決算書はここだけ読もう』(弘文堂)の著者。外資系大手会計事務所などを経て、公認会計士・経理職の転職紹介・派遣・教育を柱とする会社を設立。15年間経営し、事業譲渡。
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(公認会計士 矢島 雅己 構成=岡村繁雄 撮影=原 貴彦)