「見つけた」と楽しいのも、おいしさの理由
魚の王様・タイは、体に9つの道具を詰め込んでいる。道具といっても骨のこと。胸鰭(ビレ)の付け根に潜む、タイの姿に似た「鯛中鯛(タイのタイ)」が有名だが、ほかに大龍、小龍、鯛石、三つ道具、鍬形、竹馬、鳴門骨、鯛の福玉で9つ。江戸のころから、「すべてを揃えると、物に不自由なし」の言い伝えがある。だが、特に後の2つはすべてのタイにあるわけでもなく、一尾ですべてを揃えるのは難しい。
それでも、9つの道具を探しながら大勢でワイワイと食べる楽しさは格別なもの。見つけた時の興奮は、大人も子供も関係なく、ただただうれしい。見落としがちになる骨もあるからこそ、アラに付いた肉をしゃぶるように食べれば、骨まわりのおいしさが再発見できる機会にもなる。正月に家族が揃った時、春の旬を迎えるころなど、タイをゆっくり楽しく、まるごと食べ尽くす一案に、本号を活用いただきタイ。
?鯛中鯛
鯛中鯛(たいちゅうたい)=姿形がタイに似る胸鰭の骨。神経の通る穴が目のように見え、全体の姿が魚っぽく映る。
?大龍
大龍(だいりゅう)=頭の骨の一部で、結合する他の骨からはがし取る。眼にあたる孔やたてがみなど、勇ましさも感じる。
?三ツ道具
三ツ道具(みつどうぐ)=頭と背ビレの間にある3本の骨。左から「鍬(くわ)」「鎌(かま)」「熊手(くまで)」。
?鳴門骨
鳴門骨(なるとぼね)=尻ビレ近くの血管棘が肥大したもの。鳴門の急潮を泳ぐタイにあるといわれるが、地域性はないらしい。
?鯛石
鯛石(たいせき)=平衡感覚や聴覚に関係する扁平の骨。「耳石」と言われると、ピンとくる人も多いのでは。
?竹馬
竹馬(ちくば)=馬の頭に似た骨。口と耳、たてがみのようであり、乗馬を模した子供の遊具「ちくば」が名前の由来。
?鯛の福玉
鯛の福玉(たいのふくだま)=口腔部に潜むダンゴムシのような形の寄生虫。すべてのタイにいるわけではない。
?鍬形
鍬形(くわがた)=戦国武将や五月人形の兜(かぶと)の正面に据えられた、一双の角状の飾り「鍬形」に似る。
?小龍
小龍(しょうりゅう)=尾骨の下部にあり、関節を丁寧に外すと、龍の角に似た細い骨が抜き取れる。