(上編から読む)
順風満帆に見える時こそ、危機感を持て
先日、日本航空(以下、JAL)は、帝京大学ラグビー部の岩出雅之監督を講師に招いて「リーダー勉強会」を開催されました。会の冒頭、人財本部長の小田卓也さんから、「基盤ができた一方で、新たな危機感を持っています」という植木会長の社長としての最後のメッセージが紹介された。さらに、依存型の人間、コントロール型の組織を脱し、「自律型」の人間と組織にならないとJALのさらなる発展はない、役員会でもそれを決議したとのアナウンスがありました。植木会長はいまのJALにどんな危機感をもっているのですか?
植木:2010年に経営破綻してどん底にある会社を建て直すために、私たちがやってきたのは意識改革と構造改革です。経営破綻した直接的な原因は、利益が出なくなり、誰もお金を貸してくれなくなり、キャッシュが回らなくなったから潰れた。だから、構造改革をして利益がしっかり出る仕組みをつくらなければならない。経営再建では、構造改革と同時に意識改革も実行し、これらは一定程度、成功を収めました。だから、破綻して8年たっても、しっかりと業績がついてきている。でも、これで僕は満足していないということなんですよ。それだけでは、おそらく何年かしたらこの会社は潰れるんですね。なぜなら、メンバーチェンジしたわけじゃないですから。人数は減りましたが、同じメンバーでこれからも経営していくわけですから。
確かによくなっているように見えるかもしれないが、このまま放っておいたらまた潰れる。だから、本当の意味での第二の意識改革をやってもらいたいということで「OODA(ウーダ)*」という手法を取り入れようと決めました。
植木:僕は社員に、「君たちはいつまで組織人間をやっているんだ。そんなのはやめて、この会社で人生の夢を実現しよう。楽しんでくれ」とよく言っているんですよ。いまは60歳定年で、何年かしたら間違いなく65歳になる。20歳そこそこから65歳まで40数年間、人生の一番良いところをこの会社で過ごす。夢を持って会社に入り、その夢を実現できる人間と、会社はただ給料をもらうところと割り切って生きていく人間と、どちらの人生が有意義かは、考えるまでもない。社員は「僕らは会社のために身を粉にして働けと教わってきた。そうしなくていいんですか」と言うかもしれない。でも僕は、自分の夢をこの会社で実現してくれるほうが、会社にプラスとなると信じている。社員が幸せを得るには会社の経営がよくなければならないが、それも考えたうえでベストなやり方だと思う。夢の実現のため、社員が自律的に考え、自分の決断で動き出せるようにサポートできる仕組みを、社長として最後に遺したい思ったわけです。
岩出:それで、声をかけていただけたのですね。
植木:人財本部長の小田がいろんな文献を見ている中に、岩出監督の『常勝集団のプリンシプル』があった。実は、僕は本を読むのが大嫌いで、ほとんど読まない。だから、久々に1冊、読みました(笑)。そうしたら、「何だ、僕らがいままでやってきたこと、もしくはこれからやろうとしていたことを、スポーツの世界のチームづくりで、すでにやっているところがある」と気付いたわけです。すでに9年連続大学日本一というすばらしい実績も出されている。スポーツの連勝記録を見ると、ボクシングなどの個人競技では何十連勝もした人がいるけれど、チーム戦で年間チャンピオンを9年続けたのは、読売巨人軍のV9と帝京大学さんくらいですよね。まさしく常勝集団です。しかも、OODAもすでに活用されている。実際苦労されてきた方だから、失敗談を含めて経験を語ってもらうのが一番ためになるということで、監督にお話をいただいたわけです。
いただいたコメント
コメントを書く