米国で「ダイソンキラー」と呼ばれる家電メーカーが日本に進出する。米シャークニンジャ(マサチューセッツ州)は26日、高級掃除機を日本の家電量販店で8月に発売すると発表した。市場が拡大するコードレスのスティック型掃除機を展開。米国では割安感を武器に英ダイソンからトップシェアを奪った。シャークニンジャ参入で国内市場の競争激化は必至だ。
「日本市場は20年前と大きく変わった。海外勢も成功している」。ダイソンの日本法人に在籍し、シャークニンジャ日本法人の社長に就いたゴードン・トム氏は26日、日本市場をこう分析。日本向け新商品「エヴォフレックス」を発表した。
高さを1メートル程度と米国商品に比べ約10センチ低くし、動かしやすいよう重さも15%程度軽くした。ヘッドも米商品に比べひとまわり小さく、足が短い日本の家具の下にも回り込めるようにした。モーターも改良し、日本人が気になる金属音などを抑制している。
ヤマダ電機など家電量販店や総合スーパー(GMS)などを通じて展開する。先行して予約を受け付け8月に発売する。価格は上位機種で7万円、中位機種で6万円程度。ネット通販でも展開する。テレビ通販会社を通じた一部商品の提供にとどまっていたが、法人設立で本格展開する。
シャークニンジャの売上高は約2000億円。米国で約95%を売り上げ、英国や中国など販売地域を広げている。掃除機を「シャーク」、調理家電を「ニンジャ」ブランドで展開している。日本に合わせ小型化した調理家電の投入も検討する。
シャークニンジャの米国市場での掃除機シェアは約10年前、1%程度だった。吸引効率を高めるなどして高付加価値品にシフトさせ、同時に400ドル以上と100ドル程度に二極化していた米市場に「高品質だが300ドル程度」という値付けで挑んだ。結果、高級掃除機で先を走っていたダイソンの8割の価格という割安感でシェアを奪った。製造は中国に委託し開発と販売に特化して効率的な経営を目指している。
日本のスティック型掃除機市場は拡大傾向にある。市場調査会社のGfKジャパン(東京・中野)によると、国内の2017年の掃除機市場は16年比横ばいの830万台。従来一般的だったキャニスター型が減少する一方、充電式のコードレスなどがけん引するスティック型が販売を伸ばし、掃除機市場全体で38%を占めるまで成長した。
平均単価は掃除機全体で横ばいだが、スティック型の構成比向上で他の単価下落を補った。日本の掃除機の平均単価は2万円を超え、米市場に比べ約2倍とみられている。高級掃除機を展開するシャークは販売機会が大きいとみる。
日本の掃除機市場では海外メーカーの攻勢が強まっている。ダイソンが20年までに金額ベースでシェア50%を目指すと明言し、ロボット掃除機「ルンバ」の米アイロボットも存在感を示す。シャークニンジャは数値目標を明らかにしていないが、米でダイソンを打ち破った実績は強力だ。
国内市場ではパナソニックがロボット掃除機を展開。東芝ライフスタイルや日立アプライアンスがコードレスのスティック型を強化するなど、従来主力だったキャニスター以外の商品に注力する動きが続く。日本勢が依然過半のシェアを握っている模様だが、さらなる外資の参入で戦略転換を迫られるかもしれない。