「インディーゲームを盗んで商売する」会社にどう立ち向かうべきか。『Donut County』作者が『Hole.io』を作ったVoodooに警鐘を鳴らす
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- 2018年06月26日
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PS4 や iOS 向けに『Donut County』というゲームを開発するBen Espositoさんが、自らのゲームのアイデアを盗んだ『Hole.io』を指し、パブリッシャーVoodooに対して「インディーゲームのアイデアを盗み、質の低いゲームで儲けている」ことを指摘し、それに対するいら立ちを語って話題になっている。
彼の言っていることは理解できる。しかし、それに対してメディア・プレイヤーは何ができるのだろうか?
事件はVoodooから『Hole.io』というゲームが出たことに始まる。
『Hole.io』は、なんでも吸い込むブラックホールを操作し、物を吸収してブラックホールを成長させ、最終的に街を飲み込んで、他のAIキャラクターの操作するブラックホールより大きく成長することを目指す競争ゲームだ。多くの国の App Store で1位を獲得し、人気を博している。
一方、告発を行った Ben さんの『Donut County』は物を吸い込んで大きくなるブラックホールを操作し、ステージをクリアするステージクリア型のパズルゲームとされている。
基本システムは『Hole.io』と同じだが、こちらはすでに5年間制作しており、発表からは4年近く経過している。つまり、アイデアは先行した作品だが『Hole.io』にコアのアイデアを盗まれ、先に発表されてしまった形になる。
では『Hole.io』が完全に許されないコピー品かというと、それは異なる。
『Hole.io』のステージは1つだけで、その中で他のAIと競争するゲームだ。音楽もついていない。ただ、どんどんブラックホールが成長して世界を壊していける仕組みは面白く、中毒性がある。一方で『Donuts County』にはキャラクターがいて、手作りのステージが多くあり、物語ベースにゲームが進んでいく。実際、Benさんの発言では両者が異なるゲームであることを明言している。
しかし、BenさんはVoodooに苦言を呈した。その理由は、Voodooが2億ドルの出資をゴールドマンサックスから受けて事業を拡大するからだという。
インディーゲームの多くは制作に時間がかかる。コンセプトを示してパブリッシャーや資金提供元を探すこともあれば、リリース前から展示会に出して宣伝することもある。お金に余裕のあるパブリッシャーは、宣伝を見てゲームからコアとなる発明のアイデアを盗み、先に時間のかからないつくり方の(しかし元ネタのゲームと異なる内容で)ゲームを提供してしまえる。
自らのゲームは明確に異なるし、市場において両者がともに栄える余地はあるだろうとしつつも、Voodooのようなパブリッシャーはコピーを推奨するし、資金をバックにより多くアイデア盗用ゲームを作ることに関して懸念を示しているわけだ。
私の印象を言えば、『Hole.io』が『Donut County』に影響を受けている可能性は高いと思う。そして、アイデアを盗まれたインディーゲームは新規性を失って被害を受けるし、物によっては致命傷を受けるだろう。
素晴らしいアイデアを形にするのは時間がかかるのに、それを見て盗むことは容易で、コピーはたやすく行われてしまう。
こういったVoodooのようなショートゲームを作らせようとするパブリッシャーに出会ったことはあるが、彼らはクリエイターではなく広告業者であることが多く、ゲームよりビジネスを重視するタイプの人間だった。
他のゲームを参考にすることにためらいはないだろうし、そこに対して警鐘を鳴らしておきたかった……というのは理解できる。
ただ、『Hole.io』と『Donut County』は違うゲームとして処理されるだろう。また、同一性から弾劾されるべきではない(それをしてしまうと、多くの模倣・変化形のゲームが許されなくなってしまう)。だから、Ben さんの告発も冷静に不快であることを示したのみだ。
付け加えるなら、Voodooなどがアイデアを足すことで劇的に面白くなったゲームだって存在するので、必ずしも単なるコピー業者とも言いがたく、Ben さんのように確固としたオリジナリティを持ったゲーム以外でこの主張は通りづらいだろう。
この問題は今に始まったことではなく、Ketchappという同系統のパブリッシャーが成功したときも同じように「Ketchappはゲームを盗んでいるのか?」いう議論が発生していて、実は恒常的に行われている議論の1つだ。
私の意見としてはゲーム内容が明確に違うものを弾くべきではないと考えていて、できることはと言えば本家がリリースされたときに「これが本家だからみんな遊ぼうよ」と言ったり、インディーゲームをもとにした面白い無料ゲームが出たときに「元のゲームを遊んでね」と言うことだろうと思っている。
読者の皆さんは、これについてどう思われるだろうか?
何かできること、するべきことがあると思えば、ぜひコメント欄で意見をいただきたい。
コメント一覧
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- 2018年06月26日 23:06
- 今回の件に限って言えば、「コアのアイデア」となる要素が「穴を操作して物を落とし大きくなる」というのがあまりにも直感的すぎる。
仮にBen Esposito氏のアイディアが優れたものであっても、そのアイディアをよりコンパクトなゲームの形に落としこんで世に出した者が称賛されて自然に思う。
アイディアの鉱山から掘り出した宝石を盗まれたと叫ぶより、もっとドライに市場の競争原理を見つめるべきに思う。
盗まれる事によって、自身が作ったゲームの体験が脅かされる程度の作り込みに、強固な独自性があるとは思えない。
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- 2018年06月26日 23:22
- アイディアは特許で保護することができます。
特許を取得しパクリ対策していなかったのが悪いと思います。
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- 2018年06月26日 23:24
- 拙速が巧遅に優るのは、プロアマ関係ないし大手インディ関係ないと思います。
こういうのが嫌なら、作る側がゲームになってない一発ネタの段階でさっさとリリースして、プレイヤーコミュもそれを受け止めて、二人三脚で育てていくような流れを目指すべきだと思います。
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- 2018年06月26日 23:28
- 漫☆画太郎タワーバトルのときと違う論に行ってるのはなぜです??
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- 2018年06月26日 23:29
- ▼mさん
特許で保護されるのは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」なので、ゲームアイデアは難しいんですよね……。
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- 2018年06月26日 23:32
- ▼にゃーさん
画太郎タワーバトルはゲームがかなり近くて「タワーバトル」を使っていたIPただ乗り系。
hole.ioはそもそもとして出ていないゲームのアイデアだし(仮に10年完成しなかったら、そのアイデアが10年保護されるのか?それは害の方が大きい)、ゲーム内容としてもおそらくかなり異なるし、IPに乗ったわけではない。
だいぶ違うと思いますね。
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- 2018年06月26日 23:39
- 相手のほうがビジネスの仕方が巧かったとしか言えませんが
物語として展開する『Donut County』のほうが飽きにくく継続して遊べる可能性が高いと思うので期待しています。
前にあったDTB問題で知名度を上げておけばトラブルが起こった際に善処されやすいと学んだので
ユーザーに出来ることは何かしら情報が出たらガンガンRTして応援するくらいですかね
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- 2018年06月26日 23:54
- Hole.ioのゲームデザインはDonuts Countyなんか比べ物にならないくらい酷似しているゲーム…その名も「slither.io」というのが存在している。
(このゲームもたどっていくと.io系という定番のシリーズではあるのだけど…)
Benさんは異なるゲームだと言っているけどそこに対して資金を集めたVoodooに対して苦言を呈するのはなんか違わない?っていうかVoodooがひたすらゲームをリリースしているのを金があるから簡単に盗作できるみたいに言うのは失礼極まりないんじゃない?
資金があり開発力がある会社がパクる(中国とかだととても多く見られた手法だとおもうが)のは難しい問題だ。
それはThrees!2048の問題なども現実にある。
資金があると確かに開発の規模を大きくできるし個人開発者とは比べ物にならないと思うけどそれでもゲーム内容が大きく異なる…というか明らかに源流が違うゲームを出している会社にスクリーンショットが似ているだけで苦言を呈するのはどうだろう?
実際にVoodooがDonuts Countyに対してどうだったかは定かではないけれどゲームデザインが違うゲームに対してインディー開発者のアイディアを盗んだ悪者みたいに書くのはちょっと疑問だった。
長くなったしまとまりが無いと思うけど一読していただけたら幸いです。
ビジネスなので、お金をかけて儲かる見込みがあれば参入してくるプレイヤーがいます。
インディーゲームは資金や人手が少ないので、その点を独自性で補いきる必要があります。
とはいえ、個人開発でおもしろいゲームが出なくなってしまうのは嫌なので、説教的にそういったゲームへは課金しています。