私がアニメーターを辞めた理由
- 2018.06.25
- アニメ業界
私は10年間アニメーターをやっていましたが、今年(2018年)で辞めました。
その経緯を書く事で今アニメーターを辞めようか悩んでいる人や、
アニメーターになりたい人の参考になればと思ったので書いていきます。
2008年(当時22歳)、小さな下請会社に入社し4年働く。
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2012年、次に大きめの元受け会社で1年働く。
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2013年、フリーランスとなり、自宅作業で5年働く。
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2018年(32歳)、アニメの仕事を辞める。
アニメーターになってから辞めるまでの経緯はこのようになっています。
何故辞める決心をしたのかというと、
「報われない」
という感情が強くなっていき、努力したり気を使ったり
頑張れば頑張るほど損をするというアニメ業界の仕組みに心が耐えきれなくなってしまったのです。
ちなみにアニメの作品ごとの単価は基本的に1律で、私の場合は
1原2000円前後、2原2000円前後の合わせて
1カット4000円前後の仕事が多かったです。
つまりどんなに簡単で早く描ける内容の1カットも、
難しく時間のかかる内容の1カットも等しく4000円となります。
お金にとスケジュールに余裕があればじっくり時間をかけて描けるのでしょうが、
基本的にどんな仕事も単価は低くスケジュールは短いです。
にもかかわらず求められるクオリティは上がっていくという矛盾に、
まずは体がついていけなくなり、次第に心もすり減っていきました。
そんな中、決定的な出来事がありました。
とても絵の上手い作画監督がいて、その画力に感動したのですが
テレビで完成した映像を見ると上手い人が描いたようには全然見えなかったのです。
これはアニメ業界内の人なら「よくあることだ」と思うでしょう。
しかし、わたしはこれはアニメ作りの致命的な欠陥だと思っています。
なぜこんなことが起こるかというと、
作画監督の絵を原画マンがトレスして劣化
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原画マンのトレスを動画マンがトレスして劣化
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線の濃淡や強弱は無くなり、ベタ塗りで着彩され平面的に見えやすくなってしまう。
これらが重なり、最初に描いた絵は見る影もなくなる。
これはアニメ作りが分業制だからこそ起こることなのですが、
本来アニメ作りは職人的な作業なのに、分業化により職人技が100%活かされない。
私は絵があまり上手くなかったので、むしろ他人の技術を劣化させて世に出している事にこそ罪悪感を感じていましたが、
職人の能力が分業のせいで劣化し、正しい能力が世に伝わらず、適切なスケジュールと報酬が与えられない上に、絵のクオリティを上げようとすればするほど作業時間がかかり報酬は減る。
この「報われなさ」に私は耐えきれなくなり、
アニメーターを辞めることを決心しました。
以上が私がアニメーターを辞めた理由です。
私はこの業務体系に合いませんでしたが、
それでもアニメーターになりたいという方の参考になればと思い、
アニメ業界の悪い部分のシステムを紹介しました。
悪い部分だけでなく、その他の現場に入らないと気づけない事を
これからもブログで書いていこうと思うので是非読んでみてください。