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 契約書の作成から内容や規約のチェック、文書やデータの管理、さらに裁判そのものまで、これまで多くが紙ベースだった裁判に関わる作業のペーパーレス化が急ピッチで進んでいる。この特集では「裁判のペーパーレス化」の最前線を追う。

 前回は相次ぎ生まれたリーガルベンチャーを取り上げた。今回はITを活用した新たなリーガルサービスの動きを見ていく。法令をデジタルデータとして扱い、異なる法令の関連性を機械的に分析したり法令案の作成を自動化したりする取り組みが既に始まっている。

 法務担当者にとって、紙でのやり取りが必要だった様々な手続きを電子化して効率化できる。それだけにとどまらない。コンピュータによる法令の自動執行といったこれまでにない取り組みに発展する可能性も出てきた。

エンジニアの発想で法令を可視化

 ソフトウエア開発に携わるエンジニアは複雑なソースコードやシステム設計図を分かりやすくために、可視化ツールを活用する場合がある。可視化ツールを使えば、ソースコードを整理して開発プロセスを効率化できる。

 法令もデータとして処理できれば、ソースコードと同様に多数の法令の関連度合いを可視化できる。法令データを可視化する取り組みが始めたのが、ゲーム会社でデータ分析を担当するソフトウエアエンジニアの芝尾幸一郎氏だ。

 芝尾氏は総務省行政管理局が運営する旧法令データ提供システム(現在のe-Gov法令検索)を使って、多数の法令の参照構造を抜き出してグラフ理論と呼ぶ手法でオープンソースのGephi(ゲヒ)というソフトウエアを使って関連性を可視化した。「可視化法学」と名付けてWebサイトで公開している。

芝尾幸一郎氏のWebサイト「可視化法学」はこちら
図 刑法を中心とした図
(出所:可視化法学)
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 可視化法学では1つの丸が法律や規則を表す。ある丸から別の丸を結ぶ線は、法令が別の法令の内容を引用していることを示す。多数の法令が引用している法令は大きく表示する仕組みだ。

 法令の分野ごとに色分けしている。「参照回数が多かったり、似たような内容があったりするほど近くに表示する」(芝尾氏)。他の法律が多く参照している刑法は巨大な渦ができ上がる。例えば、ある法律Aが他の複数の法律Bを多数引用している場合、法律AとBは近い位置に表示する。機械的に配置しているので参照する法令が自然と集まり、ある分野で中心的に位置する法令は何かが分かる。

電気通信分野でよく参照される法令は?

 電気通信の分野では、意外にも電子署名法を参照する法令が多く、大きなグループを形作っている。電気通信事業法や放送法、電波法もどのような法令を通じて関連し合っているかが分かる。意外と近い関係にある法令も一目瞭然だ。

図 電気通信分野では電子署名法が中心に
(出所:可視化法学)
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図 電気通信事業法などの相関関係
(出所:可視化法学)
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