申請をちゃんと忘れずにする刺激を受けるためにはどこの国に行ったらいいのだろうか。
会社に休暇申請するの忘れてインドに来ました
先日、インドのデリーに行ってきた。初めて行った海外旅行がデリーで、それ以来やっぱりまた行きたいと思っていたのだ。
今回はインドの雰囲気を楽しむのが目的の、基本的に予定を決めないきままな旅行だ。ついでにやりたい撮影もできてとても楽しかった。 だが、一つ怖いことがあった。会社に休暇申請を出していなかったのだ。 ※この記事はとくべつ企画「怖いはなし」のうちの1本です。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。
前の記事:「テレビをあまり見ない人へ、今テレビはこうなっている! ~ヒロエトオルのテレビ報告~」 人気記事:「かっこいい剣にはパースがついている」 > 個人サイト Twitter ランドセルなので不安だったインドは汚いとか治安が悪いと言われるが、きちんと心構えをしていけば決して怖いことはない。説明は難しいが「インドとはそういうものだ」と思えばいい。インド人はそこで生きているのだ。
しかし今回インドに行くにあたって懸念事項がひとつあった。ランドセルを背負って行動しなければならないことである。 これまで何度かやった「眼鏡がないと家に帰るのがコンナン」という動画を撮るために、小学生みたいな格好をする必要があったのだ。 日本から持ち込んだランドセルと通学帽
今回撮ったコンナンくん
これはやがてサイトで公開される予定ではあるが、べつに誰に頼まれてやったわけではなく自分からやりだしたことだ。もちろんインドも自費で行くし、完全に余計なことである。
余計なことをしてトラブルになるのは避けたい。余計なことをしてトラブルになる者は馬鹿だ。 具体的にどういうトラブルになるのかはわからないものの(なぜならインドにランドセルで行った人間の情報がない)、不安である。動画撮影もいろいろなシーンを撮る必要があり、これもまた不安だ。 三脚ふたつ、予備のカメラ、バッテリー、着替え、飲み物など十分にアイテムが入るサイズだった。しかし物が入れば入るほど大事なものになってくるので不安は増す。
と、不安を書いておいてなんだが、結論から言ってなにも問題はなかった。ランドセルも撮影も不安は的中しなかった。
ランドセルに関してはチャックの締め忘れなどがないぶん、バッグよりむしろ安心だったかもしれない。イレギュラーがあるとすれば物乞いの子供に棒でふたをバンバン叩かれたくらいだ。いい音がした。 デリーでランドセルを背負うことは、怖いことではない。本当に怖いことはなにか。 このころインドは雨季直前で、世界に自慢できる暑さ
ふつうの写真に見えるが、みんなが座っているこの花壇の石はアツアツで、尻はホカホカである。
こんな写真を撮りながらぼくは気がついていないのだが、会社に休暇申請を出さずにインドに来ている。一応チームの人達には連絡していても、会社の仕組み的には伝えていないので一歩間違えたら無断欠勤になりかねない状況だ。
本当に怖いのは休暇申請を出さずにインドに行くことである。今回は問題なかったが、しっかりしろ自分という気持ちでいっぱいだ。 反省の意を込めてインド旅行を振り返っていきたい。 変なお寺に行った休暇申請をせず、ランドセルを背負ってやってきたのは、ハヌマーン寺院。ヒンドゥー教の猿の神様ハヌマーンをまつったお寺だ。
メトロのブルーラインJhandewalan駅からすぐ近く、というか見えてる
近寄って正面から見るとこんなポーズをしている
20mくらいあるハヌマーンが建物と一体化している。立派だ。Instagramでデリー関係のハッシュタグを見ていて発見したインスタばえ寺院である。
日本の大仏は青銅色だったりコンクリートの色をしてるのでお寺にしては珍しく見えるが、しばらく見てるとこういうカラフルな大仏もあってもいいんじゃないかなという気がしてきた。 近所にこれがあったらどうだろうなあ。 入り口が猿(?)の口である。左右のオレンジのはハヌマーンの足。どういうことだ。
さてInstagramによる外観の情報しかないので実は不安(入り口が猿の口だし)なのだが、中がどうなってるのか気になるので入ってみよう。
入ったら普通の建物で、お経を唱えながら水をふりかけてくれる人がいた。いきなり水がかかったのでびっくりした。
その横では等身大ハヌマーンと、高速テンポの宗教音楽を演奏するおじさん
中はあまり広くないふつうの建物であった。広くない代わりに変わった構造の4階建てくらいになっている。上の階に進むといろいろな神様の像が小部屋に祀られていて博物館のようになっていた。
どんな神様なのかは書かれた文字がヒンディー語なのでよくわからず残念。 上の階にいた神様のひとつ。
文字は読めないが、小部屋の周りには英語で説明してくれる人がいた。これはお金の神様と言っていた気がする。
ただ、だまって話を聞いてるといつのまにか手首にお守りの糸を巻かれたり、ご利益のある火を「ぱわー ぱわー」と言われながらかざされたりして、最終的に「はい、200ルピー(320円くらい)」と言われる。「パタヤビーチへようこそ」のコントを思い出させる仕上がりであった。 そういう人が各階に待ち構えているので心しておいてほしい。 上の階にはハヌマーンのお尻もある
なんというか改めて外観もそうだが内観もふつうのお寺ではない。
これは半地下階。改修作業中の部分もあった。
登ったあとは降りよう。入り口から降りる方に進むと、地下階に続く階段が岩の洞窟のように待ち構えている。
地下階は岩窟がモチーフになっているようだ。その先に見えたのがこれ。 THE 死
でもなんかたのしそう
地下階にはなんだか地獄のような景色が広がっていた。でもなんだかたのしそうだ。
見た目がすごすぎていろいろ聞いた説明は忘れてしまった。しかし説明なんているかというインパクトである。ただただ楽しんでしまった。 踏まれてる人がいた
一周して笑顔より幸せそうな表情である。
一通り見て回って、とにかく楽しませようという意欲を感じる寺院だなと感じた。
現地としてもイロモノ寺院なのかなとも思ったが、街の人が寺院の前を通り過ぎるときに手を合わせてお辞儀をしていったりするのも見たので、完全にそういうことではないのかもしれない。 さて、こうして満喫しているが、この男、休暇申請をしていないのだった。状況によっては上の写真の人々のようになっていたかもしれないことを思い起こしておきたい。 出口はライオン
謎のバイク集団もう一つ印象的なことがあったので紹介したい。
メインバザールにやってきた。せっかくデリーに観光に来たら一度行ってみたほうがいい場所だ。いろいろな店が立ち並んで活気がある。観光客も多い。 ストリートファイターのステージになってもいいくらいインドっぽい写真が撮れる
ここでちょうどいい店を見つけたので昼ごはんにでもしようかな、などと考えていたときのことだ。
突然である。バイクの大群がやってきた。あっという間に道がふさがった。 急にバイクが集団で来た
なんだなんだ
なんかマッドマックスみたいなの来たぞ
え、ピース?
そして去っていった
何が起こったのか。あの男は誰だったのか。謎だけが残った(ほんとに謎)。
この間およそ10分。ほんとうにこの画像の並びの勢いで過ぎ去っていた。なにかのボーナスステージか。 思ってもみなかったできごとに遭遇し、ホクホクした気分だ。 そしてそのホクホクした男は会社に休暇申請を出していない。ホクホクしながらうかうかしていると言える。 インドと言えば牛休暇といえば申請だが、インドといえば牛である。デリーにいた牛はこんな形をしていた。
なんだか肩のところがぼっこりしている。最新モデルの牛か?
違うところで見た牛も。あそこに引っ掛けてる? そんなに便利になっていいのか。
牛自身がそう望んでなったのが、何かがそうさせたのかはわからない
インドで牛のこぶを見て楽しむ僕であるが、この写真を撮っているころ、日本では上司が「藤原くんは最近会社に来ていないがどうしたんだ?」と同僚に尋ねていたそうだ。「インドにいってます」と答えたらしい。
たぶん答えになってないと思う。 そのほか気になった景色景色を楽しむ余裕があるならその余裕で休暇申請をすればよかったところだが、すっかり忘れていたので引き続きぼくはインドの景色を楽しんでいた。
パーツを合わせることで死体がひとつ増えるトリックみたいな駅の注意書き。
じゃんけんで負けた小学生みたいになってる人
街の中にあった酒屋。この近くの路上で、コーラの入ったペットボトルに買ったばかりのリキュールを注いでる人がいた。インドにはストロングゼロがない。
電線のごちゃごちゃ具合もすごかった。絶対につながってない線あるだろう。
これを整理しろって言われても、何からはじめていいかわからない
電線を引っ張って屋根にしている売店があった
一方そのころ上司から「書いてほしい書類があるのですが次に会社に来るのはいつですか?」というメールが僕あてに来ている。
しかしインドの暑さのせいかスマホはアッツアツ、動作はモッサモサになっておりメールは見ていない。 ごちゃごちゃの電線に「これ、絶対つながってないのあるでしょ」などとつっこんでる場合ではない。つながってないのはおれだ。 誕生日だった事前に会社の仕組みを使って休暇の申請はしなかったが、それは別として、インドに行っているあいだに誕生日がきた。32歳だ。
街にあったお祝い用のケーキ屋さん
誕生日グッズが売られていた
帽子と飾りを買った。ケーキはホテルからサービスで頂いたもの。うれしい。
休暇は申請しないといろいろと迷惑をかけることになるが、誕生日は申請しないでもやってくるので、いい。
インドの人のエネルギッシュな姿に刺激を受けて帰国したあと、会社で「休暇の申請はしないとだめだよ」と注意をされた。猛省しなければならない。受けるべき刺激はインドの人のエネルギッシュな姿ではなかったのだ。
申請をちゃんと忘れずにする刺激を受けるためにはどこの国に行ったらいいのだろうか。 このような記事を書くと反省してないみたいだが、ちゃんと反省している。
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