私は福島県の病院に勤務する医師だ。地元・福島で、ある異変が起きていることに気づいたのは少し前のことだった。性感染症の一つである「梅毒」が急増しているのだ。
昨年1年間で報告された梅毒患者は26名だったが、今年は6月10日の時点ですでに45名が感染したと報告されている。
もっとも、この異変が始まったのは今年からではない。もともと福島は、全国40位以下と梅毒の患者数は少ない県だった。それが、2015年から患者数が急増し、2016年には人口10万人当たり3.63人と、全国平均の3.56人を上回り、東京、大阪に次いで3番目に梅毒患者が多い県となったのだ。
初めてその数字を見たときは目を見張ったものだ。
さらに調べていくと、こうした「梅毒増加」の傾向は全国に共通していることがわかった。
厚生労働省の性感染症報告数によると、梅毒の新規発症報告数は2003年には509件だったのが、2015年には2690件に、そして2016年には4575 件にまで増加した。2015年から2016年にかけてだけでも、約1.7倍の増加だ。
ちなみに、2017年は暫定値ではあるが、5820人、とさらなる増加が見込まれている。
特に妊娠可能な15歳から24歳までの若年女性において増加傾向が見られているというから恐ろしい。後述する通り、性感染症は不妊のリスクを高めるからだ。
福島で、そして日本で何が起きているのか――私は独自の調査を開始した。