採用面接を隠し録り、行き過ぎた「面接の達人」

そんな就活でほんとにいいの?

2018年6月26日(火)

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就職活動の面接はいったい何のために行うのだろうか

 先週、「就活面接の無断録音『公開すれば法的問題も』」というタイトルの記事が、SNSで話題になった。

 面接を録音? 誰が??
 企業。そう、私はてっきり企業側が録音し、

「う~ん、ハキハキ答えてるわりには、内容がないな~」

「こっちの学生は……味のあること言ってるなぁ」

「素直な感じはするけど、営業でやってけますかね?」

「キミだって入社当時、ひどかったぞ。こんなしゃべり方してたら、お客さんは途中で寝ると思ったもんな」

「(冷汗)あの頃はウブでした」

「そういうのはウブとは言わない(笑)」

「でも、あれだよな。ペラペラ上手くしゃべるより、こういうぼくとつな方がお客さん受けするんじゃないかな」

「よし! じゃあ、ハキハキ学生を落として、味のある方にしますか?」

「(全員)意義なし!」

 なんて具合に、面接官がその場で決める通常のスタイルではない、新手の採用方法が問題になっているのだと、タイトルをみて勝手に理解していた。

 これまで散々、「面接官がA採用した新人が、全く使えないただの“就活エリート”だった」というぼやきをフィールド・インタビューで聞かされていたので、余計に納得していたのだ。

 ところが、である。

 なんと「学生」。

 そうなのだ。

 記事をきちんと読んでみると、就職活動で、学生が面接官とのやり取りをスマートフォンで無断録音するケースが増えている、というではないか!

 知っていた人には「何を今さら。そんなことも知らんのか!」と怒られてしまうかもしれないけど、知らんものは知らんのです。

 学生から「録音していいですか?」なんて聞かれたことも、面接官を務めた「お父さんたち」から「録音されちゃって」と相談されたことも一切なく、不覚にも全く知らなかったのである(すみませんです)。

 いったい何のための録音なのか?
 記事によれば、

 「聞き直して改善点を見つける」ことが目的で、「マナー違反だ」として、やめるよう指導する大学もあり、専門家からは「公開した場合、法的問題になるおそれもある」と指摘する声が出ているという。

 ……改善??? ふむ。模擬試験ならまだしも、本番の面接を録音して、改善もなにもないだろう? と思うのだが、記事では実際に就活での「無断録音」を活用した大学生を次のように紹介していた(抜粋し要約)。

 学生はネットに「録音の体験談」が掲載されているのをみて、「皆がやってるなら」と7社のうち、3社の1次面接を録音したが、後ろめたさもあり会社には言わなかった。

 「(録音を聞き)自分の話は要点がわかりにくいと気づいた。その後の面接では、結論を最初に述べ、話す時間も短くした」(学生談)

 結局、録音したうちの1社から内定を得て、就活を終えた。

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「採用面接を隠し録り、行き過ぎた「面接の達人」」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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